9.濃ゆい1日の終わり
「忙しくてお昼食べ損ねたからすごく嬉しいお誘いなんだけど・・俺けっこう食べるんだよね。ホントにいいの?」
もちろん想定内ですよ~。
満足いくまで食べてってくださいませ。
足りないより残るほうがいいと思って4人前くらい作りましたから。
大食いチャレンジするような人でない限りは心配ご無用です。
「そう思ってたくさん作ったので大丈夫ですよ。これ食べてってくれないほうが困っちゃいます。」
そう言っていたずらっぽく笑うとエリスさんが笑いだした。
「この量をユミちゃん1人で食べきろうとしたら明日3食とも同じメニューになっちゃうね。遠慮なくご相伴に預かるよ。」
そんなこんなでエリスさんと一緒に少し早めのディナータイム。
ダメもとでお誘いしてみたんだけど"一般市民の家でごはんを食べちゃいけない"というルールはなかったみたいで良かったわ。
それにしても気持ちいいくらいの食べっぷりね~。
あたしの食べる分を気にしてたので自分用にワンプレートカフェごはん風に取り分けたらさらにスピードアップ。
4人前の料理が盛られたお皿が次々と空っぽになっていく。
忙しくてお昼を食べ損ねたと言ってたけど朝も食べてないんじゃ?疑惑が浮上。
多めに作っといてよかったよ。
線が細くて中性的な感じの人だけどやっぱり男の人なのねぇ。
食べ方がとっても綺麗だからこの人もお貴族様なのかも。
「ごちそうさま。すっごく美味しかったよ!また食べに来てもいいかな?」
旺盛な食欲をみせたエリスさん。
しっかり社交辞令を忘れずに帰っていきました。
お皿も洗ってってくれたんだよ。
ほんと紳士だよね~。
エリスさんをお見送りしたあとドアにきちんと鍵をかけて。
ダイニングの椅子にドサリと座り込む。
ふーー。
なんか気が抜けたらどっと疲れがきた。
まだ異世界1日目だよね?
ようやく落ち着いたところでそんな当たり前の事実を思い出す。
なんだかいろいろありすぎて1週間くらい居るような錯覚におちいりかけていた。
異世界定番のギルドとか市場とか騎士とかイケメンとか。
めっちゃ盛り沢山だったなぁ。
1日に詰め込みすぎでしょ。
もう今日は寝よう。
お風呂にゆっくり入ってさっさと寝よう。
そして明日こそギルドに登録しよう。
うん。そうしよう。
今日はもう動きたくない。
なんとか動けるうちにお風呂に入ろうと立ち上がりかけて。
重要なことを思い出した。
ギルドのお店に行かないとお風呂に入れないじゃん!
タオルも石鹸も替えの下着も何もないんだった。
草原に寝転んでた&1日活動して汗をかいている状態でベッドにはいるのはちょっとムリ。
汚れをおとして湯船につかって温まってから寝たい。
市場では本気で食材関係しか目に入らなかったからなぁ。
雑貨類ひとつも買ってないや。
女子としてどうなの自分。
エリスさんに笑われるのも当たり前だわ。
とりあえず必要最低限だけ買って明日また市場に行こう。
予定外でけっこう使ったから食材も買い足したいし。
ギルドで手続きしてから市場でランチ&買物して。
2時間とか3時間くらいでやれそうな依頼があればそれもやってみたい。
そうと決まったら動きますかー。
いま動かないと何もやらずに寝ちゃう可能性大だからねー。
ダラダラしたい気持ちを叱咤して部屋を出る。
そしてこの後。
ギルドショップの予想外な品揃えと質の良さに今度は雑貨熱に火がつくことになり。
濃ゆい1日はもう少し続くことになるのであった。




