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禁断の果実

幼少期からそうだった。

憧れていたのは魔女の塔からお姫様を救う王子様になる事だった。

母親に作ってもらった剣で架空のモンスターと戦っていた。


思春期に入ると、横に並ぶ少女達の香る髪や濡れた唇に夢中だった。

何冊も本を読み漁り、この病の名を探した。

誰かに、本の向こう側でもいい、これは病気で治るんだよと言ってほしかった。


僕は女性が好きなんだ。

諦めてからは、それでは男になりたいのか?とさらに悩みの種は広がっていった。


悩んだ僕は鏡を前にして、生まれたままの自分の全身を見る。

一片の濁りなく鏡の中の僕は僕を見つめる。

肌に触れて、一箇所づつ確かめていく。

鏡の中の僕は顔をしかめず、その触診を受け入れていく。

ああ、全てを映す鏡は、僕がこの体を受け入れている事を晒していく。


男としてではなく

僕が僕のまま

誰かを 女性を愛したいんだ


僕は僕の中の答えに辿り着き涙した。

僕の普通は、きっと何度も汚され引き裂かれ裏切られるんだろう。


「誰か愛してください」


この病名もない複雑な感情を洗い流し忘れ去る為に、涙が流れ続ける。

母親に揺り起こされ、悪い夢だったんだよと優しい言葉を待っていた。

忘れたい消えてしまいたい正常に戻りたい、だけど、だけど…


「誰かを抱きしめたい」

鏡に映る青白い肌はぬくもりを求めた。

細い自らの体を抱きしめ、擬似的な愛を味わう。


「ごめんなさい…愛してしまってごめんなさい…」

それは父親や母親にか、裏切り続けた友人達にか、いつか愛してしまう女性にか。


「怖い…この気持ちが怖いよ…」

何十年と続く人生を恐れ、震える唇を噛む。



「人を愛する事さえ、上手くできない僕はおかしいんだ」



自分を貶す事でしか、気を確かにもつ事ができなかった…

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