禁忌
どうやら、あれから随分と寝てしまったようだ。
口元についた食べカスとよだれを手で拭う。
いけない。いつも通りに過ごさなければ。
スッキリとした体はハキハキとルーティンをこなす。
冷蔵庫からウイスキーを取り出し、その場で立ったまま体に流し込む。
さらに缶チューハイをテーブルに運ぶ。
あとは薬袋を用意すればいつもの光景だ。
腰を下ろし、薬のシートを手に取り慣れた手つきで一錠二錠三錠…機械的に取り出していく。
掌に山を作った薬達。大小、色も様々なグラデーションを楽しみながら明日の平穏の為にその全てを酒と共に流し込む。水道の蛇口が何か言いたげに、ぽちゃんぽちゃんと雫を垂らす。
そのまま効き目がでて、視界がぼやけるのを酒を飲みながら待つ。
「ああ…やめられないんだよな」
二本目の缶チューハイに手を出しながら呟く。
「酒で流し込む……やってはいけない事なら、これが原因で死なないかな」
うなだれながら、缶をクルクルと回す。
「つまみ……これでいっか。」
もう一つマドレーヌを齧る。
そのままベッドの縁にもたれながら夢に落ちた。
おぼろげだが、夢を見ていた気がする。
柔らかな手を掴んで、風を感じていた。
横で誰かが何かを呟く。僕はその言葉に頷く。
どんな夢かと聞かれたら、答えに悩むが……確かにそんな夢を見たんだ。