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気まずさに負けて

ふらつきながらコンビニに入る。

これはタバコ以外にも何か買った方がいい。

栄養補助食品とたまにはお弁当、スイーツもあった方がいいかな…


「黒崎さん!こんにちは!」

桐谷さんの言葉が頭に響く。

なんで…?ああ今日は休日だったのか…

曜日の確認不足に苛立ったのと、泳いだ目を見られない為に下を向く。

彼女そっくりの女と異常な夢を見たり、彼女の幻聴を聞いたりした後で冷静に彼女を見られなかった。


「この時間帯にお会いするのは初めてですね。黒崎さんも今日はお休みですか?」

「ええ…桐谷さんもお休みだったんですね」

ぎこちなくニヤリと笑いながら答えたが、それを桐谷さんはジロジロと顔を覗き込む。

まずい…言い方や表情がおかしかったか?


「黒崎さん…顔色が悪いように思われますが…体調はどうですか?」

言えない。酒と精神安定剤のせいでフラフラだなんて…

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「ですが、少々ふらつきもあるような…土曜の午後も診察してくれる内科をご紹介しましょうか?」

断るのもまずいかと思い頷く。

「それでは今メモに…そうだ仕事の鞄でないからメモを持っていません…」

彼女は下を向いて落ち込んでいたが、すぐさま

「そうだ!地図や乗り換えの案内も送れるから、黒崎さんがよければラインを教えてください!」

息が止まるかと思った。何故そうなる…

「ご迷惑なら病院に行った後ブロックしていただいても大丈夫なので…それで十分なので…」

彼女の発言にいつも驚かされながら、冷静に答える。

「よろしいんですか?赤の他人に個人情報を教えてしまって…」

彼女は子供のように頭をふるふる横に振りながら答えた。

「黒崎さんは初めてのひとり暮らしの中に、生活の中に人間味を与えてくれた優しい人なんです!」

彼女はウンウンと頷きながら立て続けに言った。

「黒崎さんがご迷惑でなければ、お願いします!」

名刺を渡すような…いや、バレンタインのチョコを渡すかのように僕の方に携帯を向けた。動作も交えてだから幻聴ではないようだ。


僕は悩んだ。

日々異常性が増しているこんな人間には関わってはいけない。

夢の中とはいえ、そっくりとはいえ彼女を跪かせ懇願させた僕は異常者なのだ。

正直に言えば今日だって彼女に会いたくなかった。

なのに…なのに…ラインまでなんて…

だけど…


「こちらこそお願いします」

そう答えてしまった…

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