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触れる感覚

ふと唇をなぞられ、その感覚で目覚めた。

だが、すぐに目を閉じた。これは夢だとわかったからだ。簡素な椅子の固い感覚まであったが。


「真白、起きて?」


目の前の女は…僕の唇、両頬、瞼、再度唇に優しく触れた。

最後に優しく触れたものは、女の唇だろう。しっとりと濡れた皮膚と皮膚が触れ合った。


「真白、聞こえているんでしょ?」


目の前の女は、僕の大好きな声で語りかけてくる。

だが、イントネーションや感情の込め方が明らかに違うのだ。


「ねえ…もう一度私を見て…」


艶かしく乞う女の声にたまらず目を見開く。

これは夢だ。桐谷さん…いや桐谷さんそっくりの女が跪いて潤んだ瞳で僕を見ていた。


「嬉しい…」


女は僕の手をとり口づける。

手の甲、親指、人差し指、中指、薬指、小指…丹念に優しく女は口付けていった。

僕はぞくりとした。服従するような女の行動に、興奮と同じくらいに吐き気を覚えたからだ。


「いつも、私にこうしてほしかったんでしょ?」

再度、女はしっとりと唇を重ねる。

「やめろ…!彼女はそんな事はしない…お前はただの幻像だ!」

「いいのよ。あの子がしない事も…どんな事でも私はしてあげるわ、本当よ」

目の前の女はイタズラに微笑む。

「わかってる。これは夢だ!だからといって僕を惑わすのはやめてくれ!」


「いいわ。今は受け入れられなくても…長い付き合いになるでしょうから…よろしくね?」


女がコツンと僕のおでこをつくと、僕は再び深い眠りに落ちていった…

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