帰宅
思考をシャットダウンしたまま、待合室で俯いていた。
名前を呼ばれ、パンパンに膨らんだ薬の袋を受け取る。
この薬達が僕の異常を認めてくれているようで安心する。
主治医の言葉なんかよりも的確で信頼できる物だった…
「僕は異常なはずだ…」
声に出して呟いてしまうほど、今回の診察には不満を抱いていた…
帰りの駅のトイレで、頓服の安定剤と酒を流し込んでいた。
お気に入りのロックやᏙ系の曲を口ずさみながら一錠ずつ舌の上で味わい、苦味を感じ、痺れを感じたら飲み込んでいく。
いい感じに憂鬱やパニックじみた感情が落ち着いたらトイレの扉を開ける。
幸いにも人気はいなかった。
ふらつきながら電車に乗り込み、大音量でイヤホンで音楽を聴く。
周りなんて関係ない。僕が今聴きたいんだ。
そうだ何もかも関係ない。主治医が大丈夫だって言ったんだ!
僕がいいと言えば全てが正しいんだ!
笑いがこみ上げたが、咄嗟に手で押さえる。
完全には傍若無人にはなれないようだ。
目的地まで、自問自答を繰り広げ、時折込み上げる笑みを手で押さえていた。
家に着き玄関で崩れ落ちる。
何かに縋るように冷蔵庫を開け、ウイスキーボトルを手にし飲み干していく。
天井を見上げ、再度アルコールが染み渡る感覚を味わう。
家に、雑音ともいえる病院で感じた思考を持ち込みたくなかった。
ひたすらウイスキーを飲み込んでいく…
しばらくすると、冷たく固い床と誰かの足音で目が覚めた。
どうやら、玄関で安定剤とアルコールで少々眠っていたようだ。
まどろんだ思考と裏腹に足音はきびきびと隣の玄関に進む。
桐谷さんか…
鍵を取り出す音と開ける音が隣から響く。
おかえり…
扉を開け、声をかけるほど気力と異常性はなかったのを少しおかしく感じながら僕は再度眠りに落ちた…




