告白
何も変わらぬまま診察の日になり、腫れた目でフラフラと電車に乗り込む。
両手を広げて、電車の前に飛び込むほどの気力はなかった。
ガタンガタンと揺れる電車が連日の二日酔いの吐き気を誘ったが、それどころではなかった。
終わりの始まり
きっと主治医は入院を進めるだろう
そうなったら僕は終わりだ
今の僕では もう出られないだろう
軽快なメロディと共に目的地に着く。
『助けて』
その言葉を無視して重い腰をあげる。
『死にたい』
携帯で時刻を確認する
『知られたくない…恥ずかしい…嫌だ…』
心の中の僕がやたらと煩い。
駅の階段の方を睨み、足を無機質に動かした。
それからはスムーズだった。
待合室でうつむきながら診察の時間を待ち、主治医に思いをぶつけた。
何も変わらない日々、変化を与えた隣人、聴こえてくる異常に…
「一過性のストレスでしょうね」
主治医はその一言で片付けた。
「ストレスから…それなら誰でも起こる事なんですか?」
語尾に力を込め言い返す。
「黒崎さんの場合、軽度の鬱状態もあるからね…でも大丈夫でしょう」
「何が大丈夫なんですか?」
「だって貴女は幻聴が異常だと自覚されているからです。なので大丈夫ですよ」
「正直とても不安なんですが…」
「また様子を聞かせてください」
主治医はカルテに目を落とし記入し始める。
それ以上を言う度胸が無く、一言声をかけてから診察室を出る。
「ありがとうございました…」
機嫌をとる子供のように、静かに唱え静かに扉を閉めた。




