ふらつき
ふらつく体で、外に出る意味がなくなり、時間を持て余した体の渇きをアルコールで潤す。
アルコールが脳を麻痺させたが、胃が耐えきれずに全てを吐き出す。
「僕は何をやっているんだ…」
ひりつく胃が意識をハッキリとさせる。
だが、次第に僅かにアルコールを吸収した体が、痛みと思考を麻痺させていく。
何もおかしな事は無いのにクスクスと笑った。
「きっとアレは彼女が言った事なんだ…彼氏だとかいいんだよだとか…」
大きめのペットボトルワインボトルを手にしながら呟く。
「気のある素振りで近づいて、声をかけてきて、僕を惑わしたいんだ」
なげやりにボトルそのままを体に流し込む。
「そうだ。この僕に魅力を感じて、あんな…」
言いかけて、あまりにもおかしくて腹の底から笑った。
百万円いや一億円でも積まれなければ、僕を魅力的だなんて思わないだろう。
何もない空っぽな人間だ、何も持っていない、何も与えられない…
だけど…だけど…
投げかけてくれた微笑みや言葉の数々は、良き隣人として僕に投げかけてくれたモノ達なはず…
「きっと…幻聴なんだ。良き隣人でいる為に…治療しなければ…」
だらしなく緩んだ口がマトモな言葉を紡ぐ。
カレンダーを確認すると明後日が診察日だった。
ほんの少しの安堵と共にワインを飲み干していく。
日が落ちる前に、無機質な夢を見る為に。




