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CSO3―初めてのキャラ作成!

 髪色は、陽の光を浴びたような色素薄めの緑髪。綺麗な二重と長い睫毛の奥の目は琥珀色。初期の服は、幾つかの決められたものがあり、若干、胸が出過ぎでは? と思うのばかりだったが、この容姿から自然な自信がついたため特には気にならなかった。また、後から他の服やアクセサリーなど装備を手に入れられるそうだが、それでオシャレも出来るらしい。ちなみに、今の初期服は、白をベースにした清楚感あるものだ。絹のようなスベスベとした優しい手触りが心地よい。


「うん、これでバッチリ!」


 身長は少し伸ばしたため、歩いてみると景色に若干の違和感を覚えるがヒールを履くのと変わらないと思えた。むしろ、身長アップ+踵のちょっと厚いブーツなのだが、ヒールのような不安定さもなく、足の一部と思えるほどにしっくりくる。蒸れも基本は無い仕様で何ともありがたい。


「以上で『始まりの草原』への最初のステップは終了になります! カリンさん、お疲れさまでした!」

「いいえこちらこそ、ありがとね。えっと、トコル······くん?」

「多くの皆さまは僕の敬称は“くん“で呼んでくださいます! でも、その辺りは“カリン“さんの呼びやすいようにお呼びくださいませっ! 僕はどんなものでも嬉しいですから!」


 最初の手引きを終えた祝福とでもいうように、ラッパのような、パフパフ、という可愛いらしい音を、走るミニバイクから出していた彼は私の前で停止。バイクを入れても、私の顔より少し大きい程度の彼の顔は相変わらず愛くるしい。


「ふふっ。じゃあトコル“くん“で呼ぼうかな。――ありがと、トコルくん」


 そして彼の鼻? 辺りを、ツン、と触る。すると、ミニバイクに乗る彼は、興奮して縦横無尽に宙を爆走。この機能は、私の瞳を琥珀色に変えている最中に気付いたのだが、相変わらず何度見ても可愛い。“グッズが出たら絶対買おう“と思ったほど。


 そうして、一頻ひとしきり走り回った彼は、元の様子で再び私の前へ。


「それでは、これで僕は失礼します! またお困りの際は“念じる“と現れるメニュー画面、そちらのヘルプより駆け付けますので、いつでもお申し付けください!」


 今回だけは自動でメニュー画面が開き、“これだよ“というようにそのヘルプボタンが揺れた。赤い枠でも教えてくれる辺り親切である。


「またこれより、カリンさんが数秒ほど目を瞑りますと『始まりの草原』へワープ致しますので、お気持ちが整い次第先へお進みください! ここからは、皆さまで作り上げる自由な世界になります! どうぞ、気の向くままにお過ごしください! ――これからもCSOはバージョンアップしていきますが、今、存在するこの世界を楽しん頂けたら幸いです! では、引き続き、CSOの世界をお楽しみくださいませっ!」


 そうして、お辞儀をして手を振ったトコルくんはブゥーンと空を駆けて行き、その途中で光の粒子となって消えた。


「なるほど、あぁして最初も現れたのかー······」


 恐らくヘルプで呼び寄せた時も、そんな粒子から形となって何処へでも現れてくれるのだろう。ゲームならではのヘルプと言える。


「さ······て······」


 こうして、キャラクリことキャラ作成クリエイトも無事終わったわけだが、私はこのゲームの特色でもある“魔法を叫ぶ“という前から、傷心を忘れるほどにルンルンでハッピーである。その理由はもちろん『なりたい自分になれている』から。


 この姿を、学校では高飛車の“杉原鈴華“と思う者は誰もおらず、たとえやがて知るとしても、ゲーマーで、おっとりとした口調の親友――冬子ぐらいだろう。ほとんどの人と“初めまして“なのだから、気を張る必要もなく楽である。


「あー、こんな伸び伸び出来るの久しぶりーっ!」


 ちなみに、話が飛ぶようだが念のため述べておくと『カリン』というのはCSO内での私の名前だ。本名が『鈴華リンカ』のため単純に逆にしただけなのだが、現実のほうは『背伸びした自分』、この中は『開放的な自分』という感じで、今の私にはピッタリと言える。まさか、そんなアナグラムだけで私に繋がるとは思えないし······大丈夫だろう。


「にしても、だいぶ遅くなっちゃったなー。冬子待ってるかな?」


 彼女の存在をすっかり忘れてしまうほど、私はキャラクリに夢中になっていた。思いのほか、何にでもなれる“この世界“の――“VR世界“のキャラクター作成は楽しい。なんせ、ゲームをプレイする機材さえ揃えれば、金を浪費することなくこんな願望が叶ってしまうのだから。服や容姿に、金も時間も費やしがちな私にはもってこいである。


「そういえば、ここで“スペル“も試せるってトコルくん言ってたけど······」


 武器や服、装備などがどこで手に入るのか――など、疑問なことはまだまだ沢山あるが、他に分からないことは冬子に聞くつもりだ。なんせ、彼女は大抵のゲームに関してはヘルプマスターと言えるほど、精通していることが多いのだから。やり込み度が違う。


「ってことだから、今の所はこれでいっか。よし。······えーっと、たしか目を瞑るだっけ······? 本当にそんなのでワープするのかな······?」


 疑心暗鬼になっても仕方ないが、とにかく、恐らく先に待っているかもしれない私の親友をこれ以上待たせるわけにもいかない。キャラクリに時間を掛けてしまったように、“好き“に突き進むのはいいが『夢中になり過ぎてしまう』のは私の悪い所だと、親友の彼女から何度も呆れたように言われている。そこは反省しないといけないだろう。反省反省······。


「あっちも見たいけど······」


 実は、この延々と続く草原の果てに何があるのか()()気になってはいたが······今回はそれともおさらば。反省したばかりだ。キャラクリとそんな探索に時間を掛けたら、流石の冬子も『現実』まで呼びに来るかもしれない(······そうそう。今は親友のほう、親友のほうだぞ、私ー)。


 すうぅ、と短く目を瞑って一呼吸。

 もう一度、この景色を目に焼き付けてから気持ちを入れ直す。


「ふぅ······よし、行こうっ!」


 そうして、ここへ来るまでに以上のドキドキを持って、私は、“自分“を嬉しむように目を瞑った。

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