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イアースの地にて  作者: 涼原 一生
帝国騒動編
5/22

帝国の観光

少し久しぶりの投稿です

5話


 宿を出てスティアを待つ。


「待たせたわね」


 従業員用の扉を開けて出てきたスティア。黄色いキャミソールに黒いジャケットを羽織り、こげ茶色のチノパンツを穿いている。宿内で纏めていた髪の毛は下に向き、肩まで伸びている。フラットシューズを穿いてこちらに向かってくる。


「本当にいいのですか?」


「私の良心を無下にするの?それと歳は近いから、外で固い口調はやめて」


 強く言い放つスティア。宿の時とは人が違うみたいだ。


「わかった、言葉に甘えるとするよ」


「こっちよ」


 軽く微笑んだスティアが進む、バハラムもついていく。通りの所々に立札がある。


《国王の捜索:協力求む》


「王の捜索?」


 スティアに尋ねる。


「そうね、丁度一ヶ月くらい前に王が行方不明になったわ」


----------


「ここよ」


 スティアについていき、辿り着いたのは小さな洋服屋だ。


「…」


「入るわよ」


 スティアが先に入店する。少し遅れてバハラムも入店する。

 

 床は閃緑岩で、天井の光源を鈍く反射している。天井まである木製の棚に、服が畳まれて重なっている。


「いらっしゃいませ」


 私服だろう。ネームプレートを下げた従業員が挨拶してくる。


「どうも」


「律儀ね」


 バハラムが従業員に言葉を返したことにツッコむスティア。


「礼儀かなと思い」


「まぁ、良いことね」


 いつの間にか洋服を二着持っているスティア。


「とりあえず、これでいいかな」


 気づけばパンツも持っている。


「じゃあ、そこで着替えてきて。リュックは持っておくわ」


「わかった」


 個室に視線を向け、バハラムに衣類を渡すスティア。


 少しして個室から出る。


「着替えたね」


 Tシャツにチノパンツ。とても一般的だ。


「悪くないな」


「当然、私が選んだのよ?」


 少し上から目線で、ドヤ顔で返事をするスティア。


「ここは私が払うから、あとで昼ご飯奢ってね」


「助かる」


「いいのよ」


 スティアはレジに向かい、会計をする。


----------


 次に向かったのはギルド。国の中央にあり、縦長い建造物だ。王宮を除けば国一番大きな建物だ。ここに冒険者が集い、仕事場として利用する。


「何階まであるんだ…」


 バハラムはその頂上を見つめて呆然としている。


「入るわよ」


「ああ」


 スティアの声で視界を地上に戻す。


「一階は…何をするんだ?」


 壁には松明が無造作に。中央には柱に巻き付くように螺旋状の階段が伸びている。他には木製のベンチが無造作に設置されているだけで何もない。


「何もない、ギルドの機関があるのは二階から」


 二人は階段に向かう。


----------


「おお?」


 階段を登りきる前に視界に広がる人の数に驚くバハラム。いくつもの受付に、依頼板を見つめる冒険者。


 しかし、スティアはバハラムの視界とは逆方向に歩き始める。その先には男が構える受付がある。右も左も分からないので、その後を追う。


 その受付には素材換金、素材加工と表記された看板がある。男は細身で眼鏡をしており、落ち着いていて気さくな雰囲気だ。ネームプレートにクルエガと名が書かれている。


「本日はどのようなご用件で?」


「素材の換金で、ほら」


 スティアがバハラムに視線を向ける。


「この中の素材をお願いします」


 リュックを受付の上に置く。


「かしこまりました。鑑定しますので、そちらでおかけになってお待ちください」


 クルエガはベンチに手を向ける。


----------


 クルエガは素材を鑑定している。ベンチに座っているバハラムは壁に貼られている紙が視界に入り、ベンチを立ちあがりそれを見る。


《国王捜索依頼》


 大きく書かれたその文字。その下の長い文の意味を完全には理解できなかった。


「また、王の事だ…これは?」


 と、スティアの方を向く。


「ああ、それは国王の妹が要請しているのよ」


「…教えてほしい」


「わかったわ」


 スティアもベンチから離れ、バハラムの隣に立つ。


「虹の月の二十日、国王のアヴル・ラグが失踪。協力いただける者は城まで。短く言うとこういうことね。…妹であるリンナ殿下は酷く心を痛めたと聞いているわ」


「…アヴル・ラグ」


 特に意味は無いが、嫌な感じだ。


「何か思い当たることでもあるの?」


 スティアが顔を覗き込んでくる。


「いや、何でもない」


 あとで城に行ってみるか…。


「君君」


 タイミングを見て、クルエガが声をかけてくる。


「どうかしました?」


 受付の方に歩きながら尋ねる。


「いやね、この爪のことで」


 土色の爪を取り出してバハラムに視線を向ける。


「どこかで拾ったのですか?」


「いえ、魔物を倒して、剥ぎ取りました」


「ガイーツを一人で?君中々やりますね」


 その声を聞いて何人かの冒険者がバハラムの方を向く。


「…ガイーツというのですか?」


 バハラムはその名に心当たりが無いのでクルエガに尋ねる。


「名前はご存じではなかったですか?近年発見された浜辺に多く生息するモグラ型のモンスターです」


「ええ、モンスターの知識には疎いもので」


「そうでしたか…それと、このリュック。こちらも換金してよろしいですか?」


「…」


 助けを求め、無言でスティアの方を向く。仕方なさそうにため息をつき、口を開く。


「そういった店はいくつかあるから、大丈夫よ」


 どこか誇らしげに返される。


「ありがとう。大丈夫です、換金お願いします」


「かしこまりました」


 笑顔で返すクルエガ。二人はベンチで暫く待つことにする。


----------


 少ししてまた呼ばれた、クルエガの元に向かう。


「鑑定が終わりました。合計で11050ニアのお渡しになります。よろしいでしょうか?」


「10000!?」


 スティアがギルド中に響くほど大きな声を出す。


「どうかしたのかお嬢さん?」


 がたいの良い。革の鎧の冒険者がスティアに話しかける。 


「いえ、少し驚いただけです…」


「そうかい?」


 そういって立ち去る。


「この金額じゃ足りないのか?」


 スティアがなぜあんな声を出したのか、理由を知りたいので問う。


「…いや、多すぎるくらいよ。一人が一度の食事で使うニアは少なくても350ニア。高級なのでも1000ニア。この国の売り物が安いわけでは無いけど、一度でこの金額は…」


 そういって口に手を当てる。未だに信じられないようで、独り言をブツブツと言いながらベンチの方に行ってしまう。


 先程の洋服屋で払ってもらったお金を返さなくてはいけない。スティアがベンチに行ったから、クルエガさんに聞くには丁度いい。


「えっと…衣類とかって、どれくらいの値段ですかね?」


 クルエガさんに尋ねる。


「そうですね、この国でなら、一着が安くて250から300ニア、高くても700で済むでしょう」


 と、ハキハキと答えてくれる。


「あ、ニア貰っていいですか?」


「はい、どうぞ」


 革の袋を受け取る。以外と重い…。中を見ると銀の銭が11枚、銀の銭より小さく、中央にひし形の穴がある胴の銭が1枚入っている。


 計算すれば、銀貨が1000ニア。ひし形の穴がある銅貨は50ニアというのが分かる。


 よく見ると、数字も刻まれている。


「衣類よりも、食事の方が高いのですね」


「はい、この国での衣類生産は資源も人手も余る程ですから。それよりも食材が貴重なのです」


 良いことを聞いた、食料になるものがあったら売るとしよう


「なるほど…ここでは食料とかも換金していますか?」


「食料でしたら、三階で承っております」


「重ねてありがとうございます。またお世話になります」


 お辞儀をしてスティアの方に向かう。


「またのご利用お待ちしております」


 クルエガもお辞儀をし、笑顔で見送る。


「10000ニアを超えるのね…」


「そんなに大金とは思えないけど…」


 革袋を持ち上げながら答える。


「気を付けなよ、スリとかされるかもだから…」


「そうだよね…」


 お宝を初めて持ったような挙動をするスティアは階段に向かう。後ろをついていき、階段を降りる。


 ギルドを出て道を歩く。


「と、とりあえず、み、店に入りましょう」


 上擦った声で提案するスティア。


「お、おう」


 さっきまでとは全然違うからか、調子狂うな…。


「ここでいいか?」


 そういって指さすのはカフェだ。


「え、ええ」


 入店し、適当な席に案内される。


「ごめん、なかなか落ち着けなくて」


「気にしないで」


 木の板に掘られたメニュー表を渡す。スティアはそれを受け取って目を泳がせる。


「はい、さっきの分」


 衣類やギルドの案内分の値段として銀貨を1つ渡す。


「え!?こんなに悪いよ!」


「こう言うのはだけど、付き合ってくれたお礼として渡すよ」


「う、うーん、じゃあ、ありがたくいただくわ…」


 懐に銀貨を入れ、メニューに向き直るスティア。


 メニューが決まったので注文する。


「このあと、城に行ってみようと思っているんだけど」


「い、良いと思う、ガイーツを一人でた、倒せる実力者なら、リンナ殿下も助かると思う」


 片言が混じったり、吃ったりしながら返してくれる。


「随分評価するね」


 まぁ、悪い気はしないが。なんだかなぁ…。


「以外と優しいし…あんたのこと気に入ったわ」


 少し小声で問われる。これに対してはどう答えるのがいいのだろうか…。論点をずらせば、少しわかるかもしれない。


「だいぶ落ち着いたね」


「ええ、ありがとう」


 まぶしい程の笑顔で返される。わざとなのか、スティアの注文した料理は値が高く感じた。


----------


 日が傾き、国は暗くなってきていた。宿屋に戻ってきたバハラムは、スティアと別れる。


「じゃあ、私はこれで」


「ああ、今日はありがとう」


「いいのよ、またね」


 スティアは手を振りながら従業員用の入り口に入っていく。


「さて、剣を持ってから城に行くか」


 宿屋に入り、部屋に向かう。塵払剣を持って部屋を後にする。

お読みいただきありがとうございました


スティア・ロザ…立場をわきまえて行動する一方、プライベートでの口調は強め。仲良くなれば良い友人になれそう。


(冒険者)ギルド…冒険者を歓迎する施設。また、冒険者の登録もここで行う。作中でもあったように、冒険者の支援が手厚く、業界に入った者への報酬や成績に管理を行っている。


冒険者…冒険者にはランク付けがあり、上からR,S,A,B,C,D,Eとなっている。DとEは初級者。BとCは中級者。SとAは上級者。Rはレジェンドとなる。それぞれの戦闘分野によって技術が異なるためにランクごとに役職が与えられる。


アヴル・ラグ…帝国の現国王。行方をくらましている。


ガイーツ…近年、地中から確認されたばかりで割と獰猛なモグラの型魔物。そのため分類分けされず、ギルドの1仕事として登録されている。


ニア…エスティール大陸で流通する金貨の単位。語源は鉱石豊富でトワン村より西の山にあるフィスニア大金国。


また投稿します

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