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イアースの地にて  作者: 涼原 一生
帝国騒動編
4/22

きっかけ

前回の続きです。


4話


 帝国へ向かう途中、いくつかの魔物と出会う。

 

 砂丘にて縄張り意識の高い銀色の甲殻を持つ蠍、ギロムオン2匹と遭遇。堅い甲殻をものともせずに剣はその身を断絶。銀の毒尾を2つ入手。


 同じく砂丘、楽器のような羽と尾で音を奏でる黒鳥、オラポーネーの群れに遭遇。剣の宝玉に反応して攻撃されるもすべて撃墜し、羽と嘴を大量に獲得。リュックの底に羽を詰めて補強。


 アヴル帝国が見える平原にて肉食の魔物、クロウベアという熊と遭遇。爪で頬や腹部を怪我するが討伐。皮と体毛、欠けたにも関わらず巨大な爪、剣を噛まれた時に抜けた牙を獲得。爪と牙、共に鋭利だが、オラポーネーの強固な羽によってリュックは傷つかず、穴一つ開けずにいた。


----------


「着いた…」


 息を切らしながらも着いたアヴル帝国。領土を現す赤い壁はとても巨大で、20メートルはあるだろう。


「ようこそ!アヴル帝国へ!」


 門番の兵が2人、同時に挨拶をする。


「ど、どうも」


 初めての感覚にどう返せばよいのか詰まってしまうバハラム。


 門が開き、歩を進める。街並みはとてもきれいで、空がいつもこの景色を見ていることに嫉妬してしまう程だろう。赤や黒の屋根。白い壁に木の柱。土台の石灰が見えるのがまたお洒落で、魅力的だ。


 これがアヴル帝国の一般的な家庭ということにも嫉妬してしまうだろう。


 しかし、バハラムは違った。未知の世界、嫉妬よりも好奇心が勝り、開いた口は閉じることなくそのまま道を進む。


 少し進むと時計台が見えてくる。住宅の三倍以上の高さ、他より一段と白い壁に巨大な時計が飾られている。

 

 一般的にこの城下町のシンボルとなるのはこれだと思うが、ここはイアースの世界、時計台よりは低いが、石造りの護龍柱がシンボルとなっている。


 門を通って真っすぐ、1分も歩けば目の当たりにすることだろう。丁度、バハラムの目の前にある。


「帝国の護龍柱…」


 広場の中央にある柱には白いプレートが埋められており、文字が掘られている。


《定めを受けた者は、我の姿を見て真実を知ろうとした》


「これは…」


 頭が痛む。しかし慣れてきたので、頭を押さえるだけだ。


―――それは他の護龍に聞くといい―――


「そういうことか、トワイライト」


 一人頷く。


「当てはないが、リーサを元に戻す方法もあるかもしれない」


 城下町の景色に魅了されていた自分に喝を入れるように、小声でぼやく。


「リンナ様に言う必要はない、私の責任だからな」


「はっ」


 町の西側、バハラムの視界の左側の道から、青い髪で長身の鎧を着けた女性兵を先頭に、同じように鎧を着けた兵隊が向かってくる。


 よく見ると道の脇にいる国民は膝をついて彼らに忠誠の姿勢を示している。


「なんかあったのかな?」


 宝玉の中、リーサの声が響く。


「…」


 バハラムはその姿を見て、様子を伺っている。青い髪の女性はバハラムに気づき、近づいてくる。


「はじめまして、見かけない顔ですが、この国は初めてですか?」


 丁寧に話しかけてくる。緑色の眼と相まって、優しい印象を受ける。


「ええ、バハラムといいます」


「私はコーレル・フィーリア。ここアヴル帝国の兵長を務めております。以後お見知りおきを」


 と、右手を出して握手を勧めてくる。バハラムも手を出し、握手に応じる。


「ここは良い国です、どうぞゆっくりしていって下さい」


 そう言い残してコーレルは兵を率いて正門へ向かう。


 彼女の言葉と、周囲の状況を鑑みて思う。良い国とは何か、国民が兵や王に頭を垂れて権力を表現することなのだろうか?


「コーレル…」


「何、バハラム?ああいう人が好きなの?」


 リーサが嫉妬しているような口調で話しかけてくる。


「いや、ただ、気になっただけだ」


 ただ、コーレルとは何か、ありそうな予感がする…。


 護龍柱を越えて、道を進む。


----------


「とりあえず、寝泊まりする場所の確保だな」


 道の端を見ながら、暇そうな、話しかけやすそうな人を探す。


 桃色の髪、本を読んでいる女の子を見つける。


「年も近そうだし話しやすそう」と心の中で呟き、女の子に近づく。すると、女の子もバハラムに気が付く。しかし、女の子は本を閉じて逃げ出す。


「あっ…」


「ナンパでもしようとしたのか?」


 それを見ていた小綺麗な男がバハラムに話しかけてくる。


「…ナンパ?」


 バハラムは、聞きなれない言葉に戸惑う。


「まぁ、さっきの子はかわいい。だが、まだ女性の魅力を出しきれていない!」


「はぁ…」


 男は興奮して話し出す。バハラムは距離を取る。


「可憐な花のように、か弱い存在の健気な少女…。摘むにはまだ早い花だからこそ!見守るだけに徹していたというのに!君が!……あれ?」


 男がバハラムに当たろうと指を向けた時、バハラムはそこにいない。代わりに同じような身なりの男達が彼を囲って、ぱちぱちと拍手している。


「貴方は素晴らしい心を持っている!」

「同士よ!」

「我らの誇りだ!」


 道の端、小さな半円が出来て、男達が騒いでいる。道行く人たちはその様子を気味悪がりながら歩く。


「なんだこれ」


 バハラムは脇道からその様子を見て一言、そう零し脇道を進む。


----------


 脇道を抜けると広場に出た。中央に噴水があり、屋根とベッドのマークがある看板、宿屋もあるのがわかる。


「宿屋か?」


 バハラムはその表記を見たことが無いので、疑心になりながらも、その建物の入り口に向かう。ドアには“オープン“と書かれた札がかかっている。


「いらっしゃいませ!」


 ドアを開けると受付から声が聞こえる。声を放ったのは、先ほどの桃色の髪の女の子だった。


「あっ」


「あっ」


 バハラムが先に気が付く。


「ん?スティア、知り合いかい?」


 スティアと呼ばれる女の子。


「ローズさん!そういう訳では…」


 受付の裏から現れた女性、ローズに焦って返すスティア。


「ローズ?」


 小声で呟く。


「折角だ、あんたが対応しな」


「んんー…わ、わかりました」


 吃りながら返事をしたスティアはスイングドアから出る。


「お待たせしました」


 バハラムの前に立ちお辞儀をする。その姿は先ほどまで感じた同い年の少女というよりは、可憐で、大人らしい雰囲気だった。


「まず、こちらにお名前の記入をお願いします」


 と、手帳とペンを差し出すスティア。バハラムはそこに名を綴る。


「バハラム・レザリオさんですね、今回は何泊ご宿泊の予定でしょうか?」


「特には決めてなくて、今日から何日かお願いします」


 スティアは手帳にメモする。


「でしたら、1泊から3泊までが一番安いコースになりますが、こちらでよろしいですか?」


 スティアは宿泊ごとに費用が記されたボードを向け、一番上のコースに指を添える。


「150ニア…あっ」


 ここで、お金が無いことに気が付く。そうだった、素材を売ってくればよかった…しかしスティアさんにその事を話すのは気が引ける。


 心の中で方針を決める。


「すいません、ニアが足りなくて…後でまた来ます!」


 足早に宿を出ていこうとする。


「あ、お待ちください!」


 バハラムを止めるスティア。


「後払いで大丈夫です、見た感じ、冒険者ですよね?」


「え?ええ、まぁ」


 嘘をついて場を凌ぐ。


「魔物を狩ったりするのですよね?この街にもギルドがあるので、そこでお金に換算してきてからでも大丈夫です」


「じゃあ…そうします」


 スティアの提案を受け入れてそう答える。


「かしこまりました。それではお部屋にご案内いたします」


 スティアは笑顔で返しながら、右手を階段の方に向ける。


----------


 階段を上がり、スティアを先頭に二階の通路を進む。


「さっき、俺を見て逃げるような素振りに見えたのですが」


「休憩中で、バハラムさんを見て時間を思い出しまして…申し訳ないです」


 そうだったのか。と口には出さず、話を替える。


「いえ。あと、先程の女性、ローズさんのことで尋ねたいことが」


「はい、なんでしょうか」


 スティアは廊下の端に寄り、バハラムの方を向く。


「ここに来る途中、ローズという女性に会ったんです、もしかしたらご姉妹かなと」


「はい、確かにご姉妹です。この宿のデチラ・ローズは姉で、帝国途中の民家には彼女の妹、リフィ・ローズさんが嫁いでます」


 スティアはその質問が来ることがわかっていたように、簡潔に説明する。


「そうだったのですね、ありがとうございます」


「いえ」


 2人は歩をすすめる。やがて宿泊部屋に着く。


「こちらになります」


 スティアはドアを開けて部屋の中に手を向ける。手の向きに従って部屋に入るバハラム。


「…」


 豪華とは言えないが綺麗でおしゃれな部屋。


 茶色の落ち着いた絨毯。右壁には、1人で寝るサイズのベッドが2つ並び、白いシーツがかかっている。小さな椅子と机が、入り口側左角に佇んでいる。窓の脇には薔薇を活けた花瓶が鎮座している。

 

 装飾に見とれていたバハラムだが、スティアがドアを閉める音で意識が戻る。


「荷物の収納は、ベッドの下の引き出しをご利用ください」


 言われた通りに引き戸に塵払剣をしまう。


「リーサ、少しの間ここで待っていてくれ」


「……」


 寝ているのか、返事は無かった。

 

 引き戸にはペンダント型の鍵が刺さっており、鍵をかける。


「その鍵はこの部屋の鍵にもなります。首にかけると楽ですよ」


「わかりました」


 鍵を首にかける。


「バハラムさんはこの国は初めてですよね?」


「はい」


「私で良ければ観光案内いたしますが、いかがでしょうか?」


「宿の仕事はいいのですか?」


 逆に問いかけるバハラム。


「はい、この宿の従業員は観光案内も仕事にしておりますので」


 ならば、遠慮はしなくていいな。


「では、お願いします」


「はい。私は着替えてきますので、外でお待ちください」


 そう言ってスティアは部屋から出ていく。


「…外で待つか」


 リュックを背負い直し、部屋を出る。

お読みいただきありがとうございました。

今回は魔物の情報が多いです。


ギロムオン…昆虫目挟角上科鋭爪科の小型個体。長として、一回り大きなチェロムオンがいる。名前の由来は、死刑囚に用いる命を絶つ断罪兵器のギロチンのような爪を持つことから。同じように、チェーンソーが由来である。


オラポーネー…鳥目(族)竜盤目兎竜上科嘴科の魔物。兎とあるように、特徴的な大耳を持つ。すべてを現すオラと、音であるポーネーが名前の由来。琴鳥とも呼ばれ、尾羽や尾、また弦爪と呼ばれる爪であらゆる音を奏でることでこの名がついた。同族でヤッガクスという、世界各地で目撃される個体も存在する。


クロウベア…名の通り通目が発達した、獣目暴獣上科熊科の魔物。それぞれ別部位が発達、また別の特徴であるウルフベアとドラッベアがエスティール大陸で確認されている。


スティア・ロザ…バハラムと近い年の少女。


デチラ・ローズ…3話にて、民家にいた女性の姉。下名が苗字の珍しい家系。


また定期的に更新します。

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