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イアースの地にて  作者: 涼原 一生
旅立ち編
1/22

失われたもの

初めまして、涼原一生といいます。

作品の投稿は初めてになります。

適度に投稿していきます。

1話


 ここはトワン村、山の上、高原にある小さな田舎村である。資源は村の内部だけで回っており、生活に困ることはない。他の領地とは交流が無いが豊かな文明を築いている。

 畑や牧畜、自然と関わって生きている人が多く、そういったことを教授する学堂も複数ある。


 日が照らし、良い昼寝日和だ。

 少年は丘の上で日向ぼっこしており、ひと眠りしようと眼を閉じる。


「レザリオ!お待たせ!」


 というわけにはいかないようだ。


「リーサ」


 金髪を揺らしながら俺の方へ走ってくる彼女は幼馴染のリーサ、俺と同じく14歳だ。


「ほら!学堂行くよ!」


 俺の手を掴んで起こそうとする。


「ひと眠りしてから…」


 再度瞼を閉じ始める


「そう言っていつも遅刻するからダメ!」


「わかったよー」


 面倒だが起き上がる。そのままリーサと手を繋いで学堂へ向かう。


----------


 学堂が見えてきた。リーサが手を放し、走り出す。


「先生!おはようございます!」


 リーサが声をかけたのは担任のゴルガさんだ、黒髪で目つきが鋭いので、怖がられている女性の先生だ。


「おはようございます、相変わらずね、バハラム君」


 年相応の声を放ちながら、リーサの後ろにいる俺を睨む。


「いや、そういうつもりじゃ…」

「朝から熱いねーお二人さん!」

「リーサちゃん!結婚式はいつなの?」


 他の生徒がからかってくる。


「……」


 リーサは言い返さず、手で顔を隠している。


「ほら、行こう」


 この状態のリーサは動けなくなる。仕方ないので手を掴んでひっぱる。


「バハラム君…自覚が無いのかしら」


 ゴルガは溜息をつき、他の生徒に挨拶をする。


----------


 ドアを開けて教室に入る。リーサは冷静を取り戻していた。


「おはようバハラム!」


 彼はベドル。学堂でずっと同じクラスだ。銀髪で、眼が赤く、女子からの人気がある。


「おはよう」


 対して俺は余り冴えない。全体的には黒く少し赤い髪が珍しいくらいで、ゴルガ先生に負けず劣らず目つきが悪い。リーサはなぜ俺と仲良くしてくれるのか…。

 窓際一番前の自席に座り、後ろの席にリーサが座る。


「いいよなー、俺も後ろから女子に起こしてもらいたいよ」


 右隣りの友人、ベドルが言う。彼は人気こそあるが、女子の友達は居ない。集団で群れるのが嫌だと、前に言っていた。それ故に、俺のことを羨ましがっている。


「気持ちよく寝ているのに起こされる方が嫌だけどね」


「またまたー」


 と、にやけ顔で俺の方を見るベドル。こんな感じでいつも調子を狂わされる。嫌な気分ではないが、なんだかな…。


「おはようございます、授業を始めますよ」


 ゴルガ先生が入ってくる。大量の紙を魔法で浮かせながら教壇に向かっている。


「先生!それはどんな魔法を使っているのですか?」


 リーサは魔法が好きで、魔法と思うものごとには目がない。ゴルガ先生は魔法の担当でもあるので仲が良いらしい。


「これは風魔法、一番下級のレベルで、風向きを調整して浮かしていたのよ」


と、教卓の上に大量の紙を置く。


「へぇー!名前は無いんですか?」


 目を輝かせながら、食い気味に質問するリーサ。


「そうね、今のところ、名前をつけられたことはないわね」


 リーサへの回答を口に出すしてから思い出したように再び口を開くゴルガ。


「では、1限目は魔法について授業をしましょう」


 ゴルガ先生が指を鳴らし、教室にチャイムが鳴り響く。リーサは笑顔で黒板に向く。


----------


 黒板に魔法のことを書いたゴルガは生徒の方へ向き直る。


「では魔法の歴史、起源から話しましょう」


 ゴルガは少し呼吸をし、語り出す。


「魔法はおよそ300年前に発見された超常能力です。見つけた人物はレイガ・メスダという女性。魔法は17種類が一般的に取得できるもので、私が先ほど使った風をはじめ、火や水、雷や氷が取得しやすいものとして知られています」


 レイガ・メスダ、大昔の大戦争を終わらせた英雄と言われている。彼女が屠った剣はここ、トワン村にある。


「先生質問です!」


 リーサが立ち上がり、手を挙げる。


「はい、どうぞ」


「なんで、土は無いのですか?」


 確かに、と他の生徒も言い出す。


「そういった魔法は未確認ですね、どうしてそのような質問をしたのですか?」


 子供なら少し怖がってしまいそうな威圧的な声で返すゴルガ。リーサは慣れているからか、気にも留めず返す。


「土があれば、自分の立つ場所、作物を育てることもできるし便利だと思って。一番ほしい…私が使ってみたい魔法なので!」


 ゴルガは少し呆気に取られていたが、少しして口を開く。


「見つかってないだけであるのかもしれませんね、がんばって取得してください」


「はい!」


 リーサは元気に返事をして座る。


「話を戻します。…おやおや」


 ゴルガの目線の先には机に突っ伏しているバハラム。


「(リーサは魔法の会得をしたいのか…)」


 半分寝ているが、頭の中にはリーサの思いが過ぎった。


「まぁいいでしょう。続けます」


 ゴルガ先生の言葉を最後に、俺の意識は深い眠りに落ちた。


----------


「リオ…レザリオ!」


「んぁ?」


 涎を垂らして寝ているバハラムが起きる。


「お昼だよ!ご飯食べよう!」


「偉く興奮しているね…どうしたの?」


 目を擦ってリーサの机の方を向きながら、カバンから弁当を出す。


「ゴルガ先生の授業!新しいこと教わったの!」


「んー」


 特に興味がないので、聞き流す。


「あー!興味ないでしょ!」


「バレたか…」


 弁当を机に置く。


「でも聞いて!」


「ですよね、リーサらしい」


 いつも通り、リーサは俺に話をするのが好きみたいだ。他の人の方が相槌を打つし、会話になると思うが…。弁当を食べながら聞くか。


「魔法のこと、話していたでしょ?」


「んー」


 弁当の中身は雨泣草のレシピだけだ。家に庭、畑があるからだ。


「魔法はね、武器に力を宿せるんだって!力を宿した武器は魔器って呼ばれるらしいの!」


「ふーん…」


 雨泣草の実を食べる。口の中で弾けて、辛みが広がる。


「でねでね!その魔器は約200年前から存在するらしいの!魔法が見つかったのが300年前だから、100年で魔法が武器に宿せるようになったの!」


「へぇー」


 雨泣草のふりかけのご飯を食べる。甘味があって美味しい。


「で!魔器の中でもすごいのが勇器っていうらしいの!」


「ほーん」


 雨泣草の綿を食べる。果物のような甘味でとても美味しい。好物だ。


「勇器は、村や国を救った魔器らしいの!で!その地に収められるらしいの!」


「へぇー…えっ?」


 魔器の説明に心当たりがあり箸が止まる。箸からはデザートである雨泣草が床に落ちる。


「あっ」


 思わず声が漏れ、教室内にそれなりに響く。


「どうしたバハラム?…あ」


ベドルがこちらに振り向く。が、しかし落ちている物を見て席に戻る。


「…えーっと、バハラム…レザリオ…さん?」


 リーサがおどおどしながら語り掛けてくる。


「うん、帰ったらやることがあるね」


 笑顔で返す。


「あっ…あっ…」


 リーサは涙ぐんで俺を見つめる。


----------


 帰宅する。リーサも一緒だ。


「ただいま」


 靴を履いたまま家に入る。床は石造りで、他は木造になっている。


「あら、おかえりなさい。って、リーサちゃんも一緒なの?」


「おばさんお邪魔します」


「元気ないじゃない、レザリオに何かされた?」


 と、リーサに近づく。


「いえ!むしろ私が悪いことしちゃって…」


 小声になりながら俯くリーサ。


「あー…じゃあお願いするわね?」


 察したようにリビングに向かう母。


「…はい」


 小さな声で返事をして、外に出るリーサ。


「あっ、待ってよ」


 リーサを追いかける。


----------


 リーサを追いかけると庭に出た。かつて世界を救った英雄レイガ・メスダが悪魔を屠ったとされる剣、その切っ先が地に刺さっている。今の世では《塵払剣》と伝えられており、トワン村では英雄の墓標と言われている。

 鍔の中心に赤い宝玉があり、鍔の両端に持ち手に見える輪がある。当然、手が入るくらいの枠だ。

しかし柄があるので、そこは掴む部分でないのがわかる。草が絡まっており、土埃で汚れている。


「まさか、これが勇器、魔法を宿しているとは…」


 塵払剣を見つめる。鍔のある片面から見える宝玉。そこから延びる赤と黒の線は、互いに絡みながら切っ先まで伸びている。毎朝この墓標にお参りしているので、親父の顔よりも見ている。


「じゃあ、掃除するね」


 掃除道具を整えたリーサ、塵払剣を雑巾などで綺麗にしていく。


「久しぶりに見たなー、相変わらずかっこいい剣だよね」


「抜いたら駄目だぞ」


「わかってるよー、禁忌だもんね」


 少し沈黙が流れる。


「私ね」


 リーサが掃除をしながら語り掛けてくる。リーサの方を向く。


「レザリオと一緒にいられること、嬉しいの、私の話聞いてくれるし」


 リーサは塵払剣の土埃を払いながら語る。


「ずっと一緒にいたいな」


 何故だ?何故、か細い声でそんなことを言う。


「突然変なことを言うな、これからも一緒だ」


 何故だ、俺も不思議な感情になってしまう。


「そうだよね…そうだよね!」


 言い直して俺の方を向く。


「ああ…」


 そう返す事しかできなかった。


----------


「じゃあ、また明日ね!」


「ああ」


「リーサちゃんありがとうね」


 母と共にリーサを見送る。

 空が暗い、夕方ではあるが、何か不吉な、嫌な予感がする。


「待って」


「どうしたの?」


「送っていく」


 朝のように手を繋いで、リーサの家へ向かおうとする。


「…レザリオ、しっかりね」


「うん」


 母の言葉を少し重く、不吉な予感を強く感じた。


----------


「あ、護龍がいるよ!」


 村の中央、護龍柱と呼ばれる巨大な柱。その土地のシンボルとなるその頂に村を護る龍が止まっている。


「また珍しい…挨拶しようか」


 護龍は生態系のグループに組み込まれない生物でもある。龍に容姿が似ているから龍と言われているだけで、実際は不明な点が多い。村の守り神のようなもので、月に数日しか姿を見せない。


 道を外れて、護龍柱に向かう。


「これはこれは、バハラム家にフェルダリーカ家の子か」


 柱の上から見下ろしてくるトワイライト。白い甲殻の先は橙色になっており、甲殻の隙間から鈍い灯りを放っている。

 その眼は青く、全てを見据えているようだ。四肢を犬のようにして座っているが、翼を広げて空を仰いでるからか神々しさを感じる。光を吸収する力に、夜明けに誕生したことから《鈍灯龍トワイライト》の名前を冠する。と、伝わっている。身長は4メートルより少しあるくらいだ。


「こんばんは」


 護龍はその土地の神と言える存在。決して粗相のないように接するのが基本。彼らは気にするなと言うが、こちらの文化でもあるので、仕方がないと受け入れてくれている。


「ふむ、前に見たのは5年前ほどか、随分成長したな」


「ありがとうございます」


 何か言われたら感謝の言葉を言うのも基本。会話の返し方として適切でないと言われるかもしれないが、これは文化。昔、自分もそういった疑問を抱えた。


「バハラム、気になっているのだが、あの雲は何かね?」


 と、トワイライトが見つめる先には、家の方でも見た暗雲。紫がかっていて、雲から雲へ雷も走っている。


「存じないです、私も先程確認したばかりで」


 俺の口調にリーサが腹と口を抑える。それもそうだ、普段は使わない言葉だからな。


「今日は何故こちらに?」


「何、ただの気まぐれだ。あの雲のこともあるがね」


 護龍は基本的に気まぐれ。自由奔放で世界を旅している。一度行った土地には魔法で移動できるらしいが、護るべき村に今日来たのは偶然だろうか?


「そうだったのですね、ではこれで」


 リーサと共にお辞儀をして護龍柱を後にする。


----------


「笑いすぎだ」


 リーサの家への途中、護龍柱から離れてからずっとリーサは笑っている。


「だって!こんにちに…なにゆえって!いつも殆ど喋らないレザリオが!」


 お腹を抱えながら指を指してくる。

 

 クソ、少し腹が立つ。


「また掃除したいのか?」


 ゴルガ先生の真似をするように、少し高圧的に言ってみる。


「はぁっ…掃除でレザリオのあの口調が聞けるなら…」


 笑いの合間に返してくる。器用だ。


「やれやれ…」


 これ以上は言っても無駄か。


「2人とも!屈め!」


 と、トワイライトが後ろから滑空してくる。


 俺たちは腹の下に隠れる形になる。


「わぷ」


 リーサを押し倒す。同時に、トワイライトの背中から紫色の霧が広がる。


 霧から離れたところで立ち上がる。


「待ってよー!」


 リーサが後から立ち上がる。


「一体…」


 空を見る。紫色の暗雲が一つ…?纏まりとしては一つだけが空にある。他の雲は夕焼けで煌めいている。


「皆!家に隠れろ!」


 トワイライトの声は村全体に広がる。近くにいる俺の耳にはその声が大きすぎるので、両手で耳をふさぐ。


「何?何なの?」


 リーサは驚いて動けずにいる。俺が守らなくては!


「こっちだ!」


 リーサの手を掴んで走り出す。手が震えているのが分かる。


 村人が家々に姿を隠したと同時に、トワイライトは霧を睨む。


「これはこれは…ネメシスというやつか?」


 霧から姿を現したのは魔物。それを捉えたトワイライトは物珍しい反応をする。


 しかしただの魔物ではない。白く長い尾に、琥珀色の牙と黄土色のたてがみが目立つ頭部。蹄を持つ後ろ足で立ち、体を支えている。人のように五本指だが獅子のような爪を持つ前脚。太刀を持ち、黒い鎧と篭手で全身を覆う姿は、まるで剣士のような風貌。赤い双眸はトワイライトを捉えているだろう。身長は2メートルくらいだ。


「察しがいい。鈍灯龍トワイライト…だな」


「まさか、今日仕掛けてくるとはな」


 苦虫を噛み殺したような表情をするトワイライト。心の中で“不味いな“と呟く。


「我と一騎打ちで勝算があると?」


「狙いは違う」


「だろうな…明日か」


「察しがいいな」


「だが、そこまで言うということは分かっているはずだ、護龍は戦闘しなければ良いということを」


「無論、だが俺でも人間くらい殺せる」


 と、キマイラ似のネメシス族は剣を振る。


「仕方ないか」


 トワイライトはネメシス族に襲い掛かる。


----------


 リーサの家に着いた。玄関前でリーサが言う。


「大丈夫?帰れる?」


「大丈夫だ、護龍が何とかしてくれる」


 震えるリーサの肩を掴む。


 俺が震えるのは心だけで良い。口も体も震えさせない。


「レザリオ…?」


「また、明日」


 リーサの家を後にする。帰る前に護龍の元へもう一度向かうべきだな。


----------


「…来たか」


 トワイライトはネメシス族の死体を浄化し終え、バハラムを待っていた。


「はい、なんとなく、来るべきと思い」


 トワイライトの方へ歩み寄る。



「二つ、話がある」


「二つ…」


 トワイライトは少し考えてから口を開く。


「一つ、我々護龍は二日連続で力を振るうこと、即ち戦闘することはできず、護るべき村に入ることも出来ない」


「学堂で教わりました」


 トワイライトは頷き、再び口を開く。


「二つ、先程の雲が、魔物が明日もこの村を攻めてくる」


「なっ」


 思わず口が開く。


「なぜ、そのことを私に…?」


「その前に…なんだ」


 トワイライトは頭を掻いて言う。


「二人だし、硬い口調は要らん。それに、お前はそうする必要はない」


「?わかりました」


 トワイライトはバハラムを睨む。


「…分かった」


 満足そうに頷くトワイライト。


 その晩、バハラムは護龍からの忠告を受け続けるのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


後書きには、その回で出て来た生物や土地での、世界での設定などを記載していこうと思います。


護龍…その土地を護る存在で、村を脅かす存在の侵入を防ぐ存在。その止まり木となる護龍柱はその土地のシンボルで、生誕祭に村人が祭る標でもある。


トワン村…世界には三つの大陸がある。南大陸エスティールの東部であるスアム地方の南の山脈地帯。その一角の高原にある田舎村。


学堂…一般的に、人類の住まう土地に存在する学業施設。生徒の年齢幅は7歳~16歳、バハラムは13歳。


魔法…全生物共通で体内に存在するイガシロンという成分を使用し発現する超常現象。多くの種族が存在する子の世界だが、人類と魔族は飛びぬけてイガシロンを多く持つ。


ネメシス族…突如現れた異形な魔物。詳細は不明。

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