第62話 俺は誕生祭で芋を揚げる
今年の誕生祭は新しく屋台を出し、そこでは俺達によって開発されたフライヤーが大活躍だった。
屋台の店名は、ニコル先生のフライドポテト。
火事対策に直接火を使わないフライヤーを用意し、ニコルさんを店主に雇った。
店名には異議を申し立てられたが、ニコルさんの知名度を利用しないなんてもったいない。
王都の母親や子供には良い先生として知られているからね。
ニコルさんは条件付きで引き受けてくれた。
1つはニコルさんの診療所近くで屋台を開くこと。祭りの間でも直ぐ患者に対応出来るように、とのことだ。
診療所は大通りから少し奥まったところにあるため、集客力が落ちるけど仕方ない。
逆に客足をそっちに向けようと、フリーグアイスとエマさんの家に両隣へ出店するようお願いした。ありがたくも快く引き受けてくれた。
断られたら姉さんのパフォーマンスと枝豆を人質に交渉しようと思っていたのは父さんにも内緒だ。
そしてもう1店、ジャム屋さんもついて来てくれた。ジャム屋さんも今や人気店だ。ジャムだけじゃなくシロップやソースなど、旬な果物を使って色々販売している。もはやかき氷とコラボしなくても売り上げは維持出来そうだが、俺達がやる新しい屋台が気になるからと言ってついて来てくれた。
2つ目の条件は、揚げ物に使った廃油で石鹸を作ること。それを住民に無料で配るそうだ。
廃油の処理は安全な場所で燃やすくらいしか考えていなかったから、リサイクル出来るなら断る必要は無い。
でも揚げ物に使った油って大丈夫なの?
綺麗に濾過してハーブを配合したら大丈夫だそうだ。普段から家で石鹸を自作し、診療所で使っているらしい。
効率の良い濾過機の製造をソゾンさんにお願いし、魚人族の親方に海藻を沢山仕入れて来てもらった。石鹸には海藻を燃やした灰を利用するらしい。ニコルさんの前世の知識なのかな。
他の細々とした条件は有ったが全てクリアし、誕生祭初日から屋台を開店出来た。
揚げる芋はキュステ産とヴルツェル産の物を使用。2種類用意したのは切り方を変えて、産地による芋の違いを楽しむためだ。
キュステ産の芋は細切りにして揚げるとカリッとした食感に。
ヴルツェル産の方は皮付きのまま厚めのくし切りにしてホクホク感を楽しむ。
どっちも売れたが、俺はカリッとした方が好きだな。
芋も美味しかったが、屋台を始める前からフライドポテト本体よりも評価を受けていた物がある。
それがニコルさんお手製のトマトケチャップ。クロエさんが育てたトマトを使った、甘味のある濃厚なケチャップが子供達に大人気だった。
普段自分用に作るよりスパイスを抑えて甘味を際立たせたらしい。
スパイス有りの方も作ってもらったらこっちも美味しい。他の人達も絶賛し、直ぐにレシピを教えてもらっていた。いずれ酒場やジャム屋にもトマトケチャップが置かれるんだろうな。
どうしてもと頭を下げてきた第一王子にも2種類の瓶詰したケチャップを売ってあげた。毎年屋台に来てくれるが、ここまで粘られたのは初めてだ。よっぽど気に入ったんだろうな。
来年は販売用のケチャップも用意しておこうかな。
例年通り神さまの所へも行った。
何を持って行こうか迷ったが、新作ということで揚げたてのフライドポテト2種とケチャップ2種の詰め合わせだ。
今年は初日、王様の挨拶が終わってすぐに芋を揚げてもらい教会へ向かった。狙い通りマギー様の教会も空いていてお祈りの順番はスムーズに回ってきた。
だけどマギー様にお供えを回収された後、枝豆とボソッと言われた。しまった、枝豆とビールの方が良かったか。そんなに枝豆が気に入っていたとは気付かなかったな。
しょうがないから最終日に枝豆とビールを持って行った。去年より多く収穫で来て余裕があったから、お供えする量も去年より多く持って来たぞ。
マギー様には喜ばれたが、シュバルト様には謝られた。
どっちの神様の反応が正しいんだろう。まあいっか、これからはお供え物を考えずにすむからな。
「今年はあんまり活躍出来なかったなぁ」
誕生祭が終わった後、姉さんがぼやいている。
1年間俺が依頼した剣の事ばかりやっていたから、新たに魔法を研究する暇が無かったからね。
まあ活躍出来なかったと言うのは姉さんの主観だ。客観的に見たら大活躍だった。
カキ氷のパフォーマンスも盛り上がってたし、美味しそうにフライドポテトを頬張る姿がいい客寄せになった。
怪我や体調不良で診療所に運ばれてきた子供の面倒も見ていた。第一王子も姉さんを評価していたよ。
「ダメダメだよ。ゲオルグが新しい魔導具を用意してきたのに、私は新しい事をやってないんだから。来年は負けないよ」
姉さんと競い合ってるつもりは無いんだけど。
姉さんがそういうつもりなら、俺も応えよう。来年はどんな屋台を用意しようかな。




