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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第59話 俺は新たな村に立ち寄る

 ヴルツェルから王都への帰り道。高地にあるヴルツェルから続く下り坂をゆっくりと進んでいる。

 もうすぐ俺達は誘拐事件が有った街、ギースバッハに差し掛かる。


 進行方向右前方に街を囲う壁が見える。次の丁字路を右折すると街に着き、まっすぐ進むと王都方面だ。


 街道の北側、俺達の進行方向左手にはヴルツェルからずっと並走しているシュテンゲル川がある。

 ヴルツェルから此処まで、ところどころ小さな滝が連続していて、流れが安定しない川だ。


 ギースバッハを越えると、いくつかの支流と合流しながら穏やかな流れとなって王都に向かって行く。


 川の流れが穏やかになると言うことは土地が平坦になるということ。当然街道も傾斜が無くなり、進みやすい道となる。


 逆に王都側から来ると、ギースバッハを境に上り坂となる。

 馬を休ませる拠点でもあるため、ヴルツェル方面に進む旅人や商人にとってギースバッハは大切な宿場街だった。


 俺達はその街を通過する。


 ヴルツェルのフリーグ家まで来た人達の意見は当然通らず、今後フリーグ家はギースバッハに立ち寄らないと正式に宣言した。


 あんな態度で来たんだ。誰も納得するはずはない。


 丁字路をまっすぐ進む。街へと続く道を見ると、馬車が何台も立往生をしている。

 俺達同様他の宿場町から移動してきた人達が街に着く時間帯。おそらく街に入るための検問を強化しているんだろう。

 事件が起こったことはもう世間に広まっている。爺さんがすぐさまルバーブと共に事件を公表したからな。ギースバッハを治める領主は、街の安全性を証明するために検問を強化しているんだろう。

 危険な街には誰も寄りたくないし、住みたくもないはずだ。


 ギースバッハを過ぎてしばらくすると川を渡ることになる。丈夫そうな橋が架かっている川だ。

 街道を右から左に流れていく小川で、シュテンゲル川に合流する。もちろん往路でも渡っている。


 この街道を横切る川を境に領主が変わる。ギースバッハ側が侯爵領、王都側が公爵領。

 公爵は現王の父方の伯父であるリューベ・ストラオス。街道をギースバッハから王都方面に出発して次に到着する宿場街が、公爵領の領都であるボーデンだ。

 爵位は家名か領地名に付けられるが公爵の家名は国名と同じだから、ボーデン公爵と呼ばれている。父さんは領地名が無名だから、家名を取ってフリーグ男爵と呼ばれる事が多い。統一感が無くて覚えるのが大変だ。


 往路でボーデン内を散策したが、活気のあるいい街だった。ギースバッハは街道から少し離れているが、ボーデンは街の中を東西に街道が走っている。王都同様街の中心で南北に走る街道と交差しているが、王都と違う所は川が街の北側を流れているという所だ。

 川から引いた水路を街に引き込むと共に、市街の外を一周させて水堀を作っている。


 日が沈みかけた所で橋を渡り、ボーゼン公爵領に入る。

 橋を渡って1時間程進んだところで、今日宿泊する予定の村についた。

 もう完全に日は沈んでしまっている。もっと早く出発するべきだったな。


 しかし、これは村というより砦だ。

 おそらく土魔法で作られた土壁を外壁としている。川岸から延びた土壁が街道を取り込みながら南進し、途中で90度左折。しばらく直進したところでまた左折。もう一度街道を跨いだところにある川岸を終点とする。コの字型に壁が作られ、開いているスペースに川が接続している状況だ。

 街道上には大きな門が作られ、村への出入りは厳重に管理されている。土壁や門の上には松明が焚かれ、見張りが行き来している。

 村に入らない人は土壁に沿って作られた新道を通って迂回できるようだ。


 これが往路には無かったものだから驚きだ。いつでも簡単に戦場の最前線に砦を建てられる。魔法って凄いなと改めて思う。


 今回はヴルツェルから爺さんも帯同している。見送るついでに村の出来を視察し、王都まで行って水運の関係者に話をするそうだ。船着場の親方とも会うんだろうか。


 爺さんのお蔭で、門での手続きもスムーズだ。村に入り宿へと案内される。

 松明の灯りに照らされた宿は、立派なお屋敷だった。宿屋という感じじゃないな。


「ここは儂の家族が泊まるように建てた屋敷だ。使用人に名前と顔を覚えさせるから、これからいつでも使ってくれ」


 うーん、お金持ち。ここにしばらく常駐する伯父さん家族の家は他にあるらしい。爺さんの長男がヴルツェルで温室を、次男がこの村で開拓を担当するんだ。


「まだ建設途中だが、いずれこの村から王都へ荷を運ぶ水運業を始めるつもりだ。この辺りから川幅が広がり流れも緩やかになるからな」


「よくこんな広い土地を確保出来ましたね」


「水運が上手く行けばリューベの領地も発展するからな。格安で土地を貸してもらったんだ」


 爺さんはボーデン公爵と名前で呼び合うほどの仲らしい。古くからの繋がりって大事だよね。それを蔑ろにした宿屋の主人といったら。


「船着き場の他に、馬を休ませるための厩舎や牧場も欲しいですね」


「そうだな。これからここは水運と陸運を切り替える拠点となる。ここで働く人達が使う宿舎や倉庫は完成した。船着き場を作り終わったら次は陸運。そして村を広げて働く人の家族を呼び寄せ、生活拠点を作る。ああ、魚人族も呼ばないとな。楽しみはこれからだぞ」


 何もない所を一から発展させるなんて。


 俺もいつか、そういう大きな仕事をしてみたい。

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