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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第55話 俺は爺さんに謝罪される

 事件が起きた街からヴルツェルまで残り2日。


 次の宿場町に着く前に、ヴルツェルの爺さんが護衛部隊を引き連れて俺達に合流した。

 父さんから連絡を受けて直ぐに準備し、出迎えに来てくれたようだ。


「すまなかった。儂のせいで嫌な思いをさせてしまった。どうか許してくれ」


 出会って早々に頭を下げられた。ほぼ初対面の祖父に謝罪から入られるのはこっちも辛い。


「もう大丈夫ですから頭をあげて下さい」


 俺からは特に何の感情もない。隣で一緒に謝罪を受けているヤーナさんも困った顔をしている。

 悪いのは犯罪を計画した奴らだ。少しは父さんにも責任があると思うけど。

 それよりも母さんに謝った方がいいよ、鬼の形相で怒ってたから。


 母さんをちらっと見たら、普通の顔だった。

 皆にも謝罪している爺さんを眺める表情は、寧ろ笑顔に近いかもしれい。


「もう怒ってないの?」


 こっそり近づいて確認する。


「ゲオルグが謝罪を受け入れたんですもの、私が怒る理由は無くなったわ。もしゲオルグに頭を下げずに、私や他の人に先に謝罪をするようなら八つ裂きにしてやると思ってたけど」


 じょ、冗談だよね?

 どういう感情でその表情なのか分からないけど、爺さんが命拾いしたようでよかった。


 今は母さんより、爺さんの方が怒っている。皆に謝罪を済ませた後、込み上げてきた怒りを抑えきれないようだ。


「昔から利用していた宿屋に裏切られた。あの宿の主人、宿泊がキャンセルになったことに何も疑問を持たなかったとと言っているらしい。もうあの宿屋は使わない。それどこか今後輸送隊をあの街に宿泊させることもない」


 興奮しすぎて血管が切れそうで怖い。

 あの宿って、爺さんが予約してくれて俺達が宿泊するはずだった方の宿屋か。

 誘拐犯は宿の都合で宿泊出来なくなったと言っていたが、実際は誘拐犯が爺さんの名を使ってキャンセルしたらしい。


 お得意様本人の宿泊じゃないから急なキャンセルも気にしなかったのかな。そこを責めるのも可哀想だとは思うけど、庇う義理もないからそのままにしておこう。


「これからあの街の近くに新たな宿場を造らせる。この街道沿いの村を利用するか、新たな道を作って村を興すかはまだ決まってないが、帰る時には安心して泊まれる村を用意するぞ」


 どんどん大事になっていくぞ。爺さんの目は本気だけど、俺達はそんなに長くヴルツェルに滞在しないよ。


「他の街にも儂が経営する宿を新しく建てるつもりだ。ヴルツェルから王都までの道のりで儂に刃向ったことを後悔させてやる」


 豪商って怖い。これが金の力か。他の街はとばっちりだけどごめんなさい。


「で、親父。誰が主犯なのか分かったのか?」


 目が血走っている爺さんを落ち着かせながら、父さんが話を変える。


「いや、まだ分かってないがおそらく西側の領主の誰かだろう。ここまで本格的に攻撃してきたのは初めてだが、小さな嫌がらせは以前からあった。これまでは多少の我慢をしてきたが、家族が危険に晒されたんだ、これからは儂も本気で反撃するぞ」


 一瞬落ち着いたと思ったら、喋りながらどんどんヒートアップしてくる。父さんの質問は燃料にしかなってない。


「お義父様。ゲオルグを筆頭に皆疲れています。せめて話は街に着いて宿を取ってからにしませんか?」


 母さんが穏やかに話しかけて気を落ち着かせる。父さんこれだよ、こうやらないと。


「ん、そうだな。リリーさんすまなかった。今日はその街の商業ギルドに用意して貰った宿に泊まる予定だ。宿は貸切で、儂が連れてきた護衛も泊まるし、冒険者ギルドに宿の警護を依頼した。事件の後で眠れないとは思うが、今出来る最大限の安全を確保したから、許してほしい」


 あ、はい。ありがとうございます。やり過ぎてる気もするが、もう何も言うまい。爺さんの気が済むようにやってもらおう。


「ところでゲオルグ。誘拐犯に話した情報について詳しく聞きたいんだが」


「お義父様。私達の馬車に乗っていいので、話はその中で」


「そうだな。すまん」


 母さんの合図でみんな馬車に乗り、爺さんの護衛と共に移動を開始した。


「誘拐犯は何も話してないんですか?」


 動き出した馬車の中で先ほどの話を聞き返す。


「未だ無言を貫いているらしい。フリーグ家から得られた情報がどんなものなのか、冒険者ギルドも商業ギルドも他の領主も気にしている。新たな商売の種になるかもしれない話だからな」


 そんなに大した情報ではないけど。

 俺は自分の持っている情報をすべて教えた。マチューさんに教わった事も、クロエさんに育てて貰うつもりだった事も。


「なるほど。ではこの情報を世間に公開しよう。盗まれた情報だと広く伝えれば、盗んだ犯人はルバーブを育てることはしないだろう。毒性があることも一緒に伝えないとな」


「しばらく黙っていてルバーブを大々的に育て始める人が出たら、その人が犯人だと分かると思うんですが」


「いや、とりあえずルバーブの事を調べて、山岳地帯に自生している物を探すだろう。ルバーブを手に入れて食べてみたら、毒性にも気付く可能性がある。そうなったら大々的に栽培はしないだろう。毒として使う分だけをこっそりと育てるかもしれない。だから事件として公開し、毒性もきちんと伝えておかないといけない」


「なるほど、そうなったら犯人は手を出さないでしょうね。毒として使えば怪しまれますし」


「うむ。そして国民に広く周知された時に、儂がルバーブを販売する。犯人だと思われたくなくて、誰も育てないだろう。一人勝ちだな」


 そう言って爺さんは悪い顔を見せた。

 父さんがたまに見せる顔とそっくりだし、姉さんが悪戯を思いついた時に見せる顔ともよく似ている。


 なんとなく爺さんが犯人なんじゃないのかと思ってしまった。

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