表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第13章
883/907

第48話 俺は黙認した事を後悔する

「ななな、なん、なんで」


 突然現れたルトガーさんに腕を掴まれて、アレックスは激しく動揺していた。


「申し訳ありません、倉庫から尾行致しました。アレックスさん、これは倉庫の片付けの一環ですか?」


「えっ、いや、これは……」


「ふむ。マギー様の像にこのような仕掛けが「アレックス、どうしましたか?」」


 ルトガーさんの言葉を遮る大きな声が、礼拝堂内に広がった。


「礼拝堂で騒ぎを起こすのは関心しませんよ」


 コツコツと靴の音を鳴らしながら、声の発生源が礼拝堂に入って来る。


 司祭服を纏った男性。彼は、グレーテさんの行方を探すザシャさんが最初に話しかけた司祭だった。


「アレックス。マギー様が見ていますよ」


「ご、ごめんない司祭様」


 司祭の鋭い目つきに怯えたアレックスが深々と頭を下げる。


「あなた方も、礼拝堂ではお静かに」


「ええ、もちろんです。司祭様よりは小声で話していたつもりです」


 笑顔のルトガーさんは言葉にたっぷりと、皮肉を込めた。


「ところで司祭様。マギー様の像に隠し扉が有るのはどういうことでしょうか?マギー様に対して、不敬では有りませんか?」


 ルトガーさんの意見を受けて、司祭服の男性は左側の眉をピクピクっと痙攣させた。


「申し訳ないと毎日祈りを捧げる事で、マギー様の赦しは頂いています」


「なるほど。つまりこの隠し扉は、教会公認というわけですね。アレックスさんが勝手に作ったのか、との疑いが晴れて良かったです」


 微笑むルトガーさんを睨む司祭服の男性。ザシャさんと話していた時の印象とは、ガラリと変わってしまった。


「なぜマギー様の像にこのような仕掛けを?」


「さあ。それは最初にこの像を建てた人に聞いて頂きたいですね。もうずっと昔の人ですが」


「流石にそれは無理ですね。この中はどうなっているのでしょうか?」


「……」


 司祭服の男性は答えなかった。


「そうですか。では、中に入ってもいいですか?」


「駄目です。今すぐ立ち去りなさい」


 司祭服の男性がルトガーさんと隠し扉の間に身体をねじ込んで立ち塞がった。


「この中はマギー様から特別に許可を得られた者だけが入れる神聖な場所です。許可の無い者が入ると天罰を受けますよ」


 天罰って、ほんとかな?


 心の中でマギー様に問いかけてみたけど、それに返事は無かった。マギー様はこの状況を見ていないのかな。


「アレックスさんは中に入ろうとしていましたが、マギー様の特別な許可を得ていると?」


「毎日きちんと祈りを捧げているアレックスなら、大丈夫でしょう」


「それならば、礼拝堂で多少騒いでもマギー様の叱責は無さそうですね。像の内部に入る以上の不敬行為では無いでしょう」


「それとこれとは話が別です」


「なるほど」


 こんなに楽しそうに話すルトガーさんも珍しい。


 司祭服の男性は、迷惑そうな表情を浮かべて対応している。随分と苛立っているようにも見える。


「では質問を変えて。毎日仕事終わりに教会で祈りを捧げている人ならば、この中に入っても天罰を受けないのですね?」


 ルトガーさんの質問にピクリと身体を揺らせたのは、アレックスだった。


「さあ、どうでしょう。その女性が、どれくらい熱心に祈っているかにもよると思いますよ」


 司祭服の男性が投げやりに放った答えを聞いて、ルトガーさんは更にニンマリと口角を釣り上げた。


「私は『仕事終わりに祈りを捧げている人』と言っただけで、一言も女性とは言っていませんが、どうして司祭様は『その女性』だと?」


「そ、それは……それは!あなた方が先程、その女性を探しに此処に来ていたからで」


 言い訳を思いついてホッとしたのか、司祭服の男性は険しかった表情を僅かに緩めた。


「なるほど、それで女性を連想したと。私はてっきり、アレックスさんがこの中に入ろうとしたから、その女性を連想したのだと思いましたよ」


「グレーテはここには居ないと言っている!もう帰りなさい!」


司祭服の男性の苛立ちは、頂点を迎えたらしい。


「私はその女性の名が『グレーテ』だと一言も言っていませんが、司祭様は色々と知っているようですね」


「いい加減にしないと、警備隊を呼びますよ!」


「それは好都合。警備隊員にこの中を調べてもらいましょう。天罰が下るかもしれませんが、王都の治安を維持する為には必要な犠牲ですよね。軽い罰で済むよう、今からマギー様に祈っておきましょうか」


 ルトガーさんが無茶苦茶な事を口走っている。その笑顔が、狂気の笑みにも見えて来る。


 まあ俺も、天罰なんて無いだろって思ってるけど。


 無いですよね?マギー様?


 やっぱり返事は無かった。


「司祭様……もう観念して中に入れましょう。この人達なら多分、黙っていてくれますよ……」


 これ以上黙っていられないと思ったのか、ルトガーさんと言い合いを続ける男性の司祭服をチョンチョンと引っ張りながら、アレックスが訴えた。


「黙りなさいアレックス!一体誰のせいでこんな事に!」


 激昂した男性はアレックスの手を振り払い、その勢いのまま、アレックスの横っ面を力任せに叩いた。まさか叩くとは思えなくて、アレックスを庇う事が出来なかった。


 俺よりも小さなアレックスは叩かれた勢いで横に飛ばされ、ゴンッと鈍い音を立ててマギー様の像に頭をぶつけてしまった。


「おい、大丈夫か!」


 司祭服の男性を取り押さえるのはルトガーさんに任せて、俺はアレックスの介抱に向かう。


 礼拝堂の床に倒れて動かなくなったアレックスの側頭部からは血が滲み出している。マギー様のロングスカートにも赤い染みが残っている。


「すぐに治してやるからな」


 俺は、ルトガーさんを野放しにして司祭服の男性を追い詰めてしまった事を後悔しつつ、倒れたアレックスに回復魔法の魔導具を使用した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ