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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第13章
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第35話 俺は倉庫までの流れを聞く

「じゃあな、ゲラルト」


 私達に仲間をけしかけたホラーツは、抵抗する女の子に一撃を加えて気を失わせた後、女の子を連れて立ち去りました。


「ちっ!数が多いぞ!」


 四方八方から飛来する魔法を迎撃しながらゲラルトさんが不満を口にしましたが、なんとなく笑っているような気がしたのは私の気の所為でしょうか?


 しかしこうも相手が多いと、雲を作っている余裕が有りません。今日は槍を持って来ていなかったのも失敗でした。今度アリーさんかゲオルグ君に相談して、対大勢用の策を考えましょう。


 そんな事を考えながら数分間防衛戦を繰り広げていると、


「お前ら!何やってるんだ!」


 遠くからこの場所に怒声が届きました。


「ふん、ようやくやって来たか」


 ゲラルトさんの視線の方向から、警備管理部のゲルトさんが男女混合の同僚3名を引き連れてやって来ました。その後ろには、3人組の1人が居ます。ゲラルトさんに反論した子では無い、別の男の子でした。


「全員捕まえろ!」


 獣人族のゲルトさんが、ゲラルトさんにも負けない大声で吼え、同僚と共にこちらに向かって走り出しました。


 私達を取り囲んでいた連中はそれに戸惑う事無く、蜘蛛の子を散らすように逃げ出します。おそらく最初から、警備管理部が来たら逃げ出す算段だったのでしょう。


「ちっ、多少は抵抗しろよな」


 逃げ足の速い連中を追いかけるのは早々に諦めたゲルトさんが、走るのを止めてこちらに歩み寄ります。


「事情は、聞かせてくれるんだよな?」


 睨みつけて来るゲルトさんに、ゲラルトさんは笑みを返して、


「俺も、そっちの坊主から話を聞きたかったんだ」


 と口にしながら後ろの少年を指差しました。


「なんで先に逃げたお前が、警備の連中と一緒に戻って来たんだ?」


「隠れて様子を窺っていたので……もう1人も近くに潜んでいたはずですが……」


「君が警備管理部を呼んでくれたんですか?ありがとうございます」


 私が感謝を伝えると、少年はキョロキョロと周囲を見渡して、


「あの、僕達と一緒に居た女の子は何処へ?」


 と眉尻を下げて聞いて来ました。


「残念ながらさっきの連中に連れて行かれた。お前ら、ラウレンツの一派に狙われてるのか?」


 私の代わりにゲラルトさんが答えると、少年はがっくりと肩を落としまして項垂れました。


「そうですか……でも、恐らくもう1人がこっそり跡を付けているでしょう。今近くに居るなら、姿を見せるでしょうし……」


 もう1人の男の子は屋上で見て以来会っていない。


「それで、狙われてるのは僕達じゃなく、ヘルミーナという女の子です。家の方が、ゴタゴタしているみたいで。僕達は、色々有って、その子の護衛の補助役というか、そんな感じで手助けしてまして」


「ヘルミーナさんの家というと、エルツのアムレット商会でしたよね?」


 以前ヘルミーナさんと雑談した時、実家の話を聞いた覚えが有ります。


「はあ?……アムレット商会は南方伯派閥の商会だろ……なんで西のラウレンツが首を突っ込んで来る?」


 ゲラルトさんが疑問を口にしました。


「詳しくは知りませんが、アムレット商会の副商会長が西の方と何かしているようです」


「ふむ……」


 ゲラルトさんが腕を組んで考え込んでいます。真面目な顔は似合わない、とちょっとだけ思ったのは絶対に内緒です。


「おいおい、俺達にも分かるように説明しろ!」


 静観していたゲルトさんが、痺れを切らしたようです。


「あの娘は、ヘルミーナの居場所を知ってると言って連れて行かれたんだが、場所の心当たりは?」


「有ります。学外ですが」


「よし、そこに案内しろ」


「おい!無視するな!」


「分かった分かった。歩きながら話すぞ」


 私達は少年に先導されて、警備管理部の4人と共に学外へ出る事になりました。




「なるほど、それでラウレンツ派の連中に襲われたのか」


 ゲルトさんが納得したように頷いています。


「クラーラ。お前達は学校に戻って本部に報告してくれ。そっちで学内に残っているラウレンツ派への対処を頼む」


 警備管理部の女性が、ゲルトさんの指示を受けて踵を返しました。


「で、これから行くアムレット商会の倉庫に、そいつらが居るんだな?」


「おそらくは」


「ふっふ。腕が鳴るな」


 興奮したゲルトさんが腕を振り回しました。風を切る音がブンブンと聞こえて来ます。


 ゲラルトさんも豪快に笑っています。争い事が楽しいんでしょうか。この2人は名前だけでなく、気性も良く似ていますね。


「3つ先の角を曲がると、例の倉庫です」


 何度か通りを曲がって道を進んだ頃、先導している少年が少し声量を落として、目的地が近づいている事を知らせて来ました。

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