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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第13章
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第15話 俺は食品管理部の仕事を始める

 警備隊詰所から帰宅した俺達は慌ただしく風呂と朝食を済ませ、大会初日と同様に、普段の登校よりも早い時間に家を出た。


 朝のマラソンよりは短い距離を走破して、校門の守衛さんと挨拶を交わす。そのまま足を止めずに、食品管理部が拠点として利用している校門近くの教室へ向かい、少し息を整えて、開けっ放しになっていた教室に足を踏み入れた。


 おはようございます。今日もよろしくお願いします。


「みんなおはよー!今日も頑張ろうー!」


「おはようございます」


 既に教室内に居た数人の先輩達に向かって挨拶をする。俺の隣に進み出た姉さんが元気良く声を上げ、同じ食品管理部員のクロエさんは落ち着いた口調で姉さんの斜め後ろに控えている。マリーは校門で俺達と分かれ、俺の屋台の準備手伝いに向かってもらった。


「おはよう、ゲオルグ君、クロエさん。それと、アリーさんも、おはようございます」


 部長のマルセスさんを含めた先輩方が、運営委員会会長である姉さんに向けて一礼した。


「私の事は気にせず!」


 にぱっと晴れやかな笑顔を見せた姉さんは後ろに数歩下がり、俺の体に隠れるようにして身を潜めた。


 会長自らやって来るなんて何か問題でも起こったのか、とマルセスさん達はさぞかし驚いた事だろう。しかし今の姉さんは会長として動いているのではなく、頼りになる姉として、俺の護衛役を務めているのだ。


 警備隊詰所でダミアンさんから話を聞いた姉さんは、まだエーデの仲間が居る可能性は大いに有ると判断し、今日一日俺の護衛をすると決めたらしい。


 しかし、血の繋がった姉とはいえ、終始ぴったりとくっついて行動されるのは煩わしいし、気恥ずかしい。そのような不満を姉さんに伝えたが、「父様が解決してくれるから、今日1日は我慢して!」と頑なに護衛をすると言い張った。仕方なく護衛を認めたが、本当に今日1日で護衛が不要になるかどうかは、疑わしいところだ。


「話は分かりました。何も起こらないといいですね」


「うん、お邪魔しちゃってごめんね。仕事の邪魔は決してしないから!」


 俺の背後に向かってマルセスさんが微笑んでいる。きっと姉さんが何かしら素晴らしい表情を見せているんだろう。


「ではゲオルグ君、まずは小麦粉の仕分けをお願いしたいのですが、昨晩の会議でも話した通り販売量を増やしたいと言って来た屋台が……」


 マルセスさんと朝の仕事内容を再確認し、3年生のカトリンさんと共に、事前に届けられていた小麦粉の仕分けを開始した。




 俺達から遅れてやって来た食品管理部員の面々が、姉さんを見つけて挨拶を交わす。


 姉さんと同級生のゲラルトさんは当然としても、俺と同級生で姉さんとはそれ程面識が無いであろうヘルミーナさんまでもが、姉さんと短い言葉を交わしていた。


 本日屋台で使われる野菜や鮮肉等の食材を運んで来た商会の面々が、そちらの邪魔にならないようにと教室の片隅で作業を続けている俺の影に隠れていた姉さんに気付いて、挨拶を交わす。


 荷物を運んで来たのは商会長やその跡取り等では無く雇い人達であろうが、そんな人達でさえも姉さんの顔を正確に見極めていた。


 屋台で使う食材を受け取りに来た屋台責任者の面々も、やっぱり姉さんに気付いてそれぞれ挨拶を交わした。


「教室の入口に立って警護していた方が、みんなの邪魔にならなかったかもね」


 食材の搬入搬出を行うバタバタとした時間帯を終えたところで、姉さんが珍しく気弱な発言を口にした。


 まあ商会の人も屋台の人も、姉さんに気付いた瞬間に作業の手を止めて挨拶を始めてしまっていたから、多少は邪魔にはなったかもね。


「ねー。変装でもしとけば良かったなー」


 俺はそれでも見つかっていたのではないかと思っている。姉さんだって教室内で堂々と姿を晒していたわけじゃなく、俺とカトリンさんを盾にしてしっかりと顔を隠していたんだ。


 それでも教室に来た皆さんは的確に姉さんを見つけるのだ。弟には感知出来ないフェロモンでも姉さんが発しているのか、それとも誰かが姉さんの存在を耳打ちしているのか、原因は分からないが姉さんはこの教室に居る限り、必ず見つかる運命に有るのだ。であるならば、隠れずに教室の入口に立っていた方がまだマシであろう。


「アリーさんは人気者ですからね。目立つのは仕方ありません」


 一緒に作業していたカトリンさんが尊敬の眼差しを姉さんに向けている。


 東方伯領内に実家が有り、東方伯の資金援助で学校に通えているカトリンさんは、東方伯の孫である姉さんに人一倍心酔している気があるのだ。


 同じ孫である俺に対しては……そこまでではないかな。別に羨ましくは無いんだけど。


「ゲオルグ君は、今日はグッズ販売店の売り子担当でしたよね。ご一緒出来なくて残念です」


 そう仰るカトリンさんの目は、俺ではなく姉さんに向けられている。


「クロエは広場の見回りね、ふむふむ。よし、いっぱい売ってやろうねゲオルグ。じゃあねカトリン、そっちの仕事も頑張ってね」


「はい、ありがとうございます。アリーさんもゲオルグ君も、お気をつけて」


 朝の仕分けを終えてカトリンさんと別れた俺は、なぜかやる気を見せる姉さんに連れられて次の仕事場へ移動した。

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