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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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閑話 アマちゃんのご褒美

 最近マギーが良く笑っています。

 笑えるというのはとてもいい事です。

 暗く落ち込んでいる暇があったら笑うべきです。


 ですが。


「笑うのとニヤニヤするのは違いますよ」


「なんだよ急に。にやけてなんかいないだろ」


 そんなに頬をヒクヒクさせてたら説得力無いですね。

 そんなマギーに収穫されたばかりの枝豆がいっぱい詰まった段ボール箱を見せてみましょう。


「おおっ」


 そこまで興奮する食べ物でしょうか。私もずんだ餅は好きですけどね。

 段ボール箱をさっと隠してみましょう。


「ああっ」


 眉毛がへの字になってますね。そんなに顔芸が得意だとは知りませんでした。

 出して、引っ込めて。出して、引っ込めて。

 ぷぷぷ、こっちも笑顔になってしまいますね。


「ちょっとアマちゃん、ニヤニヤして子供みたいな意地悪するなよ」


 にやけてませんよ、満面の笑顔です。


「前は食べ物を欲しがったりしなかったのに、どうしてそんなに枝豆を気に入ったんですか?」


「それがさあ、桃馬が持って来てくれた枝豆が美味しくてな。枝豆って夏から秋にかけての収穫だろ。冬の間は我慢できたけど、もう待てなくなっちゃって」


「桃馬さんも余計なことしてくれますね。まあこっちはハウス栽培でほぼ年中収穫できますからね」


「こっちも温室で育ててるんだけど、収穫数がまだ少なくてお供えされないんだよ」


「さっさと工業化させないからそうなるんですよ。マキナの所から腕の良い技師を転生させたらどうですか」


「何人か来てもらったけど、地球みたいに定着しなかったんだよ。みんな魔導具研究に興味を持っちゃったからな。最近来た子はまだ子供だし」


「異世界人の興味を引くものが地球に無くてすみませんね」


「そんなこと言ってないだろ。地球には美味しい食べ物が沢山あるよ」


 沢山作れるようになったのは工業化したお蔭ですけどね。工業化が始まったのは私の担当区域外ですから、大ぴらには自慢しにくいんですが。


 ま、地球にも魔法的な物は有るんですけどね。ふふふ、私が隠しているだけですよ。


「じゃあこれを持ってさっさと帰って下さい。ちゃんとシュバルトにも分けてくださいよ」


「おう、ありがとう」


 そんなに段ボール箱を大事そうに抱える人もいないでしょうね。




「この前枝豆を渡してから1週間も経ってないんですけど」


 マギーがまたやってきました。今度はシュバルトも一緒です。


「ごめん、食べ過ぎた」


 マギーが謝り、シュバルトが少し怒ってますね。はあ、状況は理解出来ました。


「最初から二つに分けておくべきでした。シュバルト、すみませんね」


「いや、こちらも何度も頼みごとをして申し訳ない」


「しかし、何度も無償で渡すわけには行きません。私とゲームで勝負して勝ったら枝豆を用意しましょう」


 丁度暇をしていたところなので、付き合って貰いましょうか。


「なんでもいいぞ。じゃあシュバルトは見学しててくれ」


「どうしてシュバルトを除け者にするんですか。これからマキナを呼ぶので、2対2で対戦しましょう」


「な、シュバルトはゲーム初心者だぞ。わかった、そう言って枝豆を渡さないつもりなんだろ」


 全然分かってないですね。


「何を言ってるんですか。シュバルトの分は直ぐに用意しますよ。勝利のご褒美は、あなた、の枝豆です。初心者と協力して勝利を目指してください」


「なっ」


 なっ、じゃないですよまったく。食べ過ぎたのはマギーでしょうに。


 あ、マキナ。いま暇ですか?

 うん、そう。これからゲームしようと思って。

 2対2だからスポーツ系かな。

 そう、マギーとシュバルト。

 あ、そうなの。ちょうどよかったね。

 うん、わかった。待ってる。


 さすがに初見で勝負させるのは可愛そうですから、マキナが来るまで練習させておきましょうかね。


 ちょっと二人とも。言い争ってないでこっち来て。

 はいシュバルト、コントローラ持って。ゲームはマギーが選んでいいですよ。

 テニスですね、いいでしょう私も得意です。

 ちょっとお茶を準備して来るので、シュバルトにルールと操作を教えて練習しててください。


 私に悪態をつくこともせず、直ぐに教え始めましたね。

 マギーの態度次第ですが、最初は強く当たって、後は流れで負けてあげましょうか。


 緑茶と、お茶請けにはずんだ餅を用意しましょうかね。

 折角ですからマキナにも枝豆を布教しましょう。




「やったー、勝ったあああ」


 あのシュバルトが子供の様な雄叫びを上げています。やったー、何て言うキャラじゃないでしょ。


 はあ、疲れました。いったい何試合やったんでしょうか。

 多少手を抜こうが何をしようが、シュバルトさんが下手すぎて簡単には負けられませんでした。

 サーブもまともに打てないくせに、こっちが明らかに手を抜くと怒るんですから。負けず嫌いですね。

 もし次やることがあったら別のゲームにしましょう。


「アマちゃん、このお餅、もう無いの?」


 3皿目のずんだ餅を食べ終わったマキナが、更なる要求をして来ました。


 まだありますけど、お腹大丈夫ですか?

 気に入ってくれたことは嬉しいですが、餅は食べ過ぎると太りますよ。


「よしよし、感覚は掴んだ。次はもっと上手くやれる。もう一戦やろう」


 こっちにも気に入ってくれた方が居ますね。シュバルトが、テニスゲームを。


 もう私は疲れましたよ。一旦プレイを止めてお茶を入れなおして来ます。マギーと対戦していて下さい。


「ちょ、アマちゃん。これからの対戦には関係なく、枝豆は貰えるんだよな?」


 あげますが、手を抜くとシュバルトに怒られますよ。

 マギーもシュバルトのミスをカバーして頑張ってましたからね。


 しかしシュバルトがここまでゲームに熱くなるとは想定外でした。


「転生者の事で2人に相談しようと思ってたのに、そんな時間が全くないんだよ」


 4皿目のずんだ餅を頬張りながら、マキナが愚痴っています。


 すみません、こんな予定では無かったんですけど。

 どんな転生者ですか?


 ふむふむ、マキナの世界に多大な貢献をした人で、そろそろ寿命で無くなると。


 優秀な魂なら、私がいくらでも受け付けますよ。


 そうですかそうですか。なんでみんな、剣と魔法の世界に魅かれるんですかね。

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