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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第51話 俺はプフラオメの魔法と対峙する

 プフラオメが使う魔法は、とても興味深かった。


 まあ当の本人はお供を連れて遥か上空に居たから、本当にプフラオメが魔法を使っているのかどうかは俺には判別出来なかったが、後で聞いた話によると他人と入れ替わるような不正が無いように試合管理部員2名が王子を追いかけて遠目から監視していたらしい。


 で、その魔法。


 水魔法により錆び付いて動かなくなった金属製の白蛇に続き、ピョンピョン跳ねる白兎、優雅に羽ばたく白鳥、ちょこまか動く白鼠、と動物の姿を模したモノを生み出す金属魔法。


 白蛇は尻尾が刃物だったが、白兎は長い両耳が、白鳥は煌めく羽根が、白鼠は飛び出た前歯が、敵を攻撃する武器だった。


 3匹の大きさはバラバラ。白兎の体長は人頭大で耳の長さが体長と同じ程度に長く、白鳥は細身の体だが翼を広げると2メートル程と大きく、白鼠は両手に収まるくらい小さかった。


 白蛇が動かなくなった後、プフラオメはまず、新たな金属塊を撃ち込んで来た。


 それは最初の金属塊と同等の大きさ、速度で落下して来たが、俺は火魔法を使わず、横から水弾で弾いて落下起動を逸らすだけに留めた。


 金属塊は地面に激突した瞬間、ガラス素材の物が硬い床に落ちて砕けるように、バラバラに弾け飛んだ。


 弾け飛んだ金属片がグニャリと曲がって変形し、3匹のモノが同時に生まれた。どうやらこの魔法に火魔法の補助は必要無いらしい。


 俺は残り2つになった大玉のうち、左端の大玉を背後にしてその3匹が生まれる様を目の当たりにした。


 その砕けた金属塊の向こうでは、最初に撃ち込んで来た金属塊がまだ炎盾と熱戦を繰り広げ、ルッツやヴィムも争い続けている。


 生まれた兎は跳ね回り、鳥は空に浮かび、鼠は地面を走り回った。向かう先は、俺の背後に有る大玉だ。


 俺は足を止め、水魔法の魔導具を駆使して3匹を迎撃した。溶かしてもまた復活する気がしたから、火魔法は使わなかった。


 使った魔法は水弾、水槍、水盾、水柱、水流などなど。割と観客と近い位置だったから、広範囲に影響が出る水壁なんかは使えなかった。


 盾や柱を複数使って3匹の進路を狭め、弾を乱射して白鳥を追払い、槍を杭罠のようにして白兎の着地を妨害し、地を這う白鼠を水流で押し流そうとした。


 魔導具を使っては新しい魔導具をリュックから取り出し、すぐさまその魔導具を使用する。助手が欲しい。新しい魔導具を手渡してくれる助手が欲しかった。


 それでも何回目かの水流が白鼠に直撃し、ソイツの行動を停止させる事に成功した。


 近くの観客達が盛り上がる。どちらに対しての声援なのかも分からない程に入り混じった雑音が、俺の耳を痛め付ける。


 タイミング良く水槍が白兎を貫く。追い討ちで2本目。白兎が倒れ、また観客が盛り上がる。


 乱射した水弾が白鳥の片翼をもぎ取る。よろけたところにもう1発。観客の盛り上がりは最高潮に達し、白鳥は地面に向けて力無く落下し始める。


 守り切った。そう安堵して息を吐いた。


 視線を彷徨わせると、いつのまにか地面に降りていたプフラオメと目が合い、そいつは笑っていた。


 視界の端で、白鳥の体がブレる。


 真下に向かって落下していた白鳥の体が、大玉から遠ざかるように、その落下角度を変えていた。


 それは、白鳥の背に隠れていた何かが飛び出した反動だった。


 俺がソレを、2匹目の白鼠を視界に捉えたときには、ソレの鋭い前歯が大玉に食い込む寸前だった。




「試合終了!結果は……」


 風魔法を使って拡大した審判の声が観客達を煽り立て、その審判の声を上回る。


 俺が守っていた大玉は、白鼠の必殺の一撃に敗れている。


 ぐるっと自陣を見渡す。残っている大玉は1つ。


 ずっと向こうでは、ミリー達5人が地べたに座り込んだり寝転んだりして、その体を休めていた。


 争っていたヴィム達14人は2グループに分かれ、片方は立ち尽くし、もう片方は走ってこちらに向かって来ている。


 走って来てるのは、ルッツ達?


「繰り返す。結果は5対……」


 歓声に紛れて、審判の声が耳に届いた。


 5対……。5対!?


 笑顔のルッツ達から目を逸らし、敵陣に目を向けると……全ての大玉が無くなっていた。


 右後方を振り向く。こっちの大玉は、ある。


 ある。


 まさか、勝ったのか?


「やったぞゲオルグ!ミリー達がやってくれた!」


 汗だくで、息切れして、右頬を赤く腫らし、衣類の一部が破れた状態でも、ルッツは笑顔だった。


 走って来た他の6人もボロボロだ。ロジーネ他2人の女の子も、いつも綺麗に整えている御髪をグチャグチャにして、笑っていた。


 どうやら本当に勝ったらしい。


 しかし、ミリー達はどうやってマリー達の防御を打ち破ったんだろう?


「よし、ミリー達を讃えに行こう!」


 俺の疑問に答えられなかったルッツは、俺の手を取って再び走り出した。


 途中ですれ違ったヴィムは俯いていて、その顔を見る事は出来なかったが、両手をぎゅっと握ったままその手を小刻みに振るわせていた。

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