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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第49話 俺は王子の様子を気にする

「金の子よ、白く煌めく、猛き子よ」


 2勢力の間に立ちはだかる炎壁の勢力が衰え始めたのを見たミリーが、半円を描いて並んだ4人の仲間と共に詠い始める。


「その身槍とし、敵穿ち抜け」


 詠い終えたミリー達は1度その口を閉じた。天に向かって聳えていたその身をすーっと縮めている炎壁を見据え、魔法を放つ機会を待っている。


 勿論1組もこの機会を黙って見てはいなかった。


 1組側から一斉に飛んで来る15発の魔法群。タイミングを合わせた上下2段の一斉攻撃は相変わらず壮観だった。


 まあ火魔法と土魔法の構成も相変わらず変化が無かったし、炎壁を飛び越える段階で2つの魔法がぶつかり合うのも相変わらずだった。


 攻撃態勢を維持したまま動けないミリー達に変わって俺達がソレを迎撃していると、うっすらと、下がって来た炎壁の上端から標的の上端が露出した。


 ミリーが標的に向けて魔導具を装備した腕を伸ばす。ミリーが指し示す虚空に向かって、ミリーの両脇に弧を描いて並ぶ他の4人も腕を伸ばし、呼吸を合わせる。


「「「「「雷槍!」」」」」


 唸りをあげる1つの白い光が、5人の腕の前に現れる。


 眩しさを知覚した瞬間には長さ1メートル程の太い槍が形作られ、耳に届いた轟音を煩わしく思った時には既にその魔法は射出されていた。


 5人で作成した1本の雷槍が、それに触れた炎壁の上端を吹き飛ばしながら突き進む。その狙いは中央の大玉だ。


「「「「風壁」」」」


 攻撃の結果を待たず、俺はルッツ達3人と共に魔導具を使用する。


 魔導具から発生したか細い旋風が、勢力の衰えた炎壁を喰らい、肥大する。


 それは風に煽られて一時的に復活した炎を纏い、天に向かって吹き荒れる。


 近付くモノを空へと誘う特殊な壁が、普段には無い色と共に出現した。


 5つの魔導具で1つの雷槍を作る魔導具とは違い、風壁は1つの魔導具で1つの魔法だった。しかしそれでも魔石の容量不足で、炎壁や水壁よりも狭い領域でしか壁が出来ず、炎壁らなら1つの壁で賄える範囲を風壁は2つ必要だった。


 ただし、炎壁らよりもより高い位置までその支配領域を広げられている。少ない魔力でそれが可能なのはおそらく風魔法の特性によるものだろう。


「……綺麗……」


 一緒に風壁を作った仲のロジーネが火の粉舞い散る眼前の魔法に対する感想を漏らした頃、1組の大玉が破壊されたと実況者が興奮気味に声を荒らげていた。




「うん、風の壁って便利だな。向こうが丸見えで何をやってるのか良く見える」


 変わり映えのしない1組の魔法を迎撃しながら、ヴィムが話しかけて来る。何やら風壁に感心した様子だ。


 風壁が纏っていた炎は既に霧散していて、光が自由に通過するその空間には一見壁が無いようにも思えるが、炎壁の爆発音や雷槍の霹靂にも劣らない重厚な風切り音がその存在を主張していた。


「向こうが良く見えるって事は、こっちの動きも見られてるって事だから、まあ一長一短じゃないかな?」


 俺の返答に対して少し考えたヴィムは、実に爽やかな笑顔を向けて来た。


「俺は見えてる方が好きかな。その方が安心出来る。まあ、飛行魔法を使えるなら見えない方が良いんだろうが。だから、最初から風壁で良かったんじゃないか?」


「最初に炎壁を使ったのは目眩しが主な理由だからね」


「ああ、あの光はきつかった。さっきの雷も、近くのやつが可哀想になるくらい眩しかったが」


 10分近く前の出来事を思い出したのか、ヴィムはぎゅっと目を閉じている。


 随分と気安く話しかけて来るようになったもんだ。試合前に『能無し』という言葉まで持ち出して喧嘩腰だった人物とは思えない。二重人格か?それとも別人か?


「しかし、本当にアイツら大丈夫なのか?もうすぐ試合時間は5分を切るぞ?」


「俺に聞かれても困る。こっちは攻撃の手を緩めたんだから、頑張って逆転勝ちしてもらわないと」


 ヴィムの言うアイツらとは1組の連中だ。


 風壁越しに見える彼らの表情の1部にはやや焦りの色が見えるが、飽きもせず同じ魔法を同じように撃ち続けている。


「風壁の前に群がっている1人が、プフラオメ王子だよな?あんまり積極的に攻撃参加していないようだが」


「そうだねぇ。彼は何を考えているのやら」


 プフラオメは誰かに指示を出すわけでもなく、どちらかというと取り巻きの合図に従って魔法を使っているように見える。それも使うのは、周りに合わせた初歩的な土魔法だ。


 プフラオメなら俺が考え付かないような魔法も使えると思うんだが、どこか体調でも悪いんだろうか。


 風壁を作った後、俺は1度だけプフラオメと目が合った。その時は和かに笑って小さく手を振って来て、元気そうではあったけど。


「それと、こっちのアイツらも」


 ヴィムは視線を横に向けて、苦々しそうに眉を寄せる。


 その視線の先に居るのは、10組生徒20人の中で未だ敵陣に攻撃を放っているミリー達5人だ。


 水壁の前に陣取って定期的に攻撃しながら、俺から貸し与えられた氷結魔法の魔導具を使う機会を窺っているようだ。


「あの試合管理部員の口車に乗せられて序盤頑張ったが……」


 このままで勝ってしまいそうだという言葉をヴィムは飲み込んだが、まだどうなるか分からない。


 まだ時間は有るし、まだ、主力であるはずにマリーもローズさんも動いていない。なんだったらプフラオメも本気を出していないはずだ。


 1組がこのまま動かずに時間切れになるならそれでも良いが、どこかで一気に攻めて来る。だろ?


 このまま終わるはずがない。


 そう確信する俺の耳に「残り5分!」という言葉が飛び込んで来たその時、敵陣最前列に居たプフラオメが、取り巻き達を置き去りにして1人でゆっくりと空に浮かび始めた。

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