表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
821/907

第38話 俺はローズさんに叩かれる

「で、アンタは応援に行かないの?」


 一頻り笑って落ち着きを取り戻したローズさんが、思い出したかのように口を開いた。


 ミリー達の応援か。今から馬術施設に向かっても、もう間に合わないんじゃないかな。


 それに、マリーの様子も気になるし。


「走れば試合後半に間に合うと思うけど、まあ、ゲオルグがそれで良いなら、ちょっと話に付き合いなさい」


 ローズさんは近くにあった丸椅子を2つ運んで来て、俺に1つ差し出した。


「ゲオルグってさあ……マリーの事どう思ってるの?」


「どう、と申しますと?」


 丸椅子に腰掛けたローズさんが急に神妙な顔付きになった事に驚いて、思わず口調を変えて反応した。


 何か、あまり良くない話をされそうな予感がするんだけど。


「マリーの将来についてゲオルグはちゃんと考えてるのかって話よ」


「ええっと、将来についてはマリー自身が考えて決めればよろしいのでは?」


「はぁぁぁあああ」


 ローズさんは眉間に皺を寄せて盛大に溜め息を吐いた。


 どういう意図でその話題を始めたのか分からないけど、俺がマリーの進路を決めるのは違うだろ?


 職業選択は自由なんだから、自分の好きな仕事に就けば良いんだよ。


「仕事の話だけじゃないけど、じゃあマリーがフリーグ家を出て他の家に行っても構わないって言うのね」


「マリーがそうするって決めたのなら、それで良いじゃないか。俺が口を挟む問題じゃない。俺が出来る事は、マリーが自由に、マリーの好きに生きられるようにする事だ」


「本気で言ってる?」


 ローズさんは眉間に皺を作り続けている。


「俺はいつだって本気だよ」


「ゲオルグが本物の馬鹿だって事は良く分かったわ」


 ローズさんは相変わらず口が悪い。


「どの辺りが馬鹿なのか説明を要求する」


「全部よ全部。誰がどう聞いてもアンタを馬鹿と表現するわ」


 ローズさんは説明を面倒くさがる傾向が有る。


 理由を言ってくれないと、こちらとしても改善のしようが無いんだが。


「あら、目覚めたのねマリー」


 ローズさんに反論する文句を考えていると、ローズさんの視線がベッドに移った。


「あーー、ここは?」


「医務室。無茶し過ぎてゲオルグに運ばれたのよ」


 目覚めたばかりで戸惑うマリーに向けたローズさんの表情には、先程まで有った眉間の皺が無くなっていた。


 ずっとあの表情なら、ローズさんも可愛いんだけどな。


「じゃあエステルさんを呼んで来るから。ゲオルグと試合の話でもしてなさい」


 マリーに優しく微笑んで、ローズさんはベッドから離れて行った。あんな表情向けられた事有ったかなぁ。


「ゲオルグ様、ありがとうございます」


 ローズさんが居なくなったところで、マリーが口を開いた。


「運んだ御礼なんて要らないから、エステルさんが来るまで寝てな」


 頭を下げようとしたのか、ベッドの上で体を起こそうとしたマリーを止めさせる。


 意外と早く目が覚めたけど、魔力量は通常まで回復していないはず。無理に起きる必要は無い。


「それだけじゃないんですけど、まあ色々と、ありがとうございます」


 ベッドに横になったまま、マリーは少しだけ顎を引いてお辞儀の姿勢を示した。


「はいはい、どういたしまして。ところで、1つマリーに言いたい事が有るんだけど」


 マリーが目覚めたばかりで直ぐに言う話じゃないかもしれないけど、なるべく早く口にしてスッキリしたい話題が有る。


「私が秘技を使った件ですか?」


 頭を下げようとした時よりも申し訳なさそうに口にしたマリーの先読みは当たっていた。


「ちょっとだけね、狡いと思うんだよ。魔法じゃないかもしれないけど、魔力は消費したわけだし」


「はい、申し訳ありません。今すぐ試合管理部に説明して、私を失格にしてもらいます」


 再び体を起こそうとしたマリーの肩を無理矢理押さえ付ける。


「いや、何もそこまで」


「いえ、ゲオルグ様が納得していないのであれば」


「いや」


「いえ」


 あーだこーだとしばらく押し問答していると、


「こら!大人しくしてなきゃダメよ!」


 ローズさんの怒声と共に俺の頭頂部に衝撃が走った。


「叩くなよ!俺は起き上がろうとするマリーを抑えていただけだぞ!」


「ゲオルグが変な事言わなかったら、マリーは大人しく寝てたわよ」


「確かに秘技の件を振ったのは悪いかもしれないけど、マリーは最初から起きようとしていたぞ」


「取り敢えずゲオルグは外に出なさい。ゲオルグが居ると、エステルさんの診察の邪魔だから」


 俺の反論を無視したローズさんに腕を引っ張られ、無理矢理椅子から立たされる。


「ゲオルグ様、すみません。話はまた後で」


「アンタはゲオルグに謝り過ぎ」


「あたっ」


 マリーの額をピシャリと軽く叩いて、ローズさんは笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ