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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第28話 俺はローズさんに気を使われる

 くじ引きを終えた俺達出場者は、一旦訓練場の控室へと移動した。第1試合参加者の2人は判定用の魔導具を身に付ける必要が有るが。


 うきうきと楽しそうに弾むマリーと、足取り重く沈んでいるローズさん。


 既に試合の勝敗が決まってしまったかのような2人の態度に、俺は可笑しくなってつい声を出してしまった。


「なに笑ってんのよ。ほんとムカつくわね」


 魔導具を身に付けているローズさんに笑い声を聞かれて、鋭い目で睨まれてしまった。


「はぁ。ここでマリーに本気を出して、決勝までに魔力回復するかなぁ」


 先の事を考えて力を温存出来るほど、マリーは甘い相手じゃないと思うけど。


「そんな事は分かってるわよ。だいたいゲオルグはま……」


 何かを言いかけて、ローズさんは口籠もった。


『ま』って何だよ。マヌケか?


 今更ローズさんが俺への罵倒を言い淀むとは思えないけど。


「あーー。どうせゲオルグはマリーの応援をするんでしょって思っただけよ。じゃ、私先に行くから」


 早口で喋ったローズさんはそそくさと1人で控室を出て行った。


 それも言い淀むような内容か?


 俺はどちらかと言うとローズさんに勝って欲しいと思ってるけどな。俺の魔導具を全て知ってるマリーとの方が戦い辛いから。


「ローゼは多分、『ゲオルグは魔法を使えないから分からない』って言いかけたんだと思います。魔法が使えないから、魔力が減って回復するまでの不安な気持ちが分からないんだと」


 ふーーん。まあ確かに、その不安は俺には分からないね。


「途中で止めたのはローゼの優しさですよ」


 それは分かるよ。普段は口が悪いけど、本気で人が嫌がる事は言わない人だ。たぶん。


「ふふ。でも応援は私の方をお願いしますよ。決勝戦でゲオルグ様と戦いたいので」


 うーん。考えとく。


「考える暇は無いですよ。じゃあ私も行って来ます」


 はい、行ってらっしゃい。


 マリーも退室して、控室は静かになった。


 俺の対戦相手のリンダさんも居ない。


 試合が無いなら馬術の方へ行くと言って、くじ引きの後に訓練場を出て行った。


 騎馬戦の方も試合内容の決定はくじ引きの筈だから、8組が1試合目になってるかは分からないけど。


 俺はどうしようかな。


 マリー達の試合を観戦する?


 いや、決勝の相手よりも準決勝の相手の情報収集が大事じゃないか?


 よし、そうと決まれば俺も馬術施設の方へ行こう。


 騎馬戦は魔法禁止だけど、リンダさんの動き方とか判断力とか、何かしら俺が戦う時に役立つ情報が得られる、はず。


 俺は背中のリュックを背負い直して、駆け足で訓練場を出て行った。




「うわっ!」


 訓練場から広場を抜けて馬術施設へ向かう道の途中、ボコッと凹んだ地面に足を取られた。


 勢い良く前方に倒れながらも何とか両手を出せて、顔から地面に激突する事はなかったが、正直ヒヤッとした。


 傷はすぐに治るとはいえ、ズザザっと地面で擦って傷を作るのは痛いから嫌だ。


 しかし、綺麗に均された地面に、なんでこんな凹みが。


「ぐっ!」


 屈んだ姿勢で地面の凹みを観察していると、俺の後頭部に衝撃が走った。


 脳が揺さぶられ、今度は全く受け身を取れず、顔から地面に叩き付けられた。




「ゲオルグ様、大丈夫ですか!?」


 目を開くと、心配そうにこちらの顔を覗き込んでいるクロエさんと目が合った。


「今エステルさんを呼びに行ってもらっています。そのまま動かず、じっと寝ていてください」


 クロエさんは地面に伏せている俺の右肩を上から押さえ付け、俺が立ち上がる事を禁じた。


「私の顔、分かりますよね?」


 はい、分かりますよ、クロエさん。そんな悲しそうな顔をしてどうしたんですか?


「今の状況は、どれくらい理解されてますか?」


 今の?


 立ち上がらないように、クロエさんに邪魔されてる。


「その前は?」


 うーーん。地面の凹みに足を取られて転けた後、後頭部に衝撃が走って、倒れた。


「そうです。実はゲオルグ様が1度後頭部を殴られて倒れた後から、アリー様の指示でゲオルグ様を監視していました。ゲオルグ様はまた、後頭部を殴られたんです」


 またって。もしかして同じやつが?


「はい。しかし、ゲオルグ様が殴られたところで私達が飛び出すと、アイツは逃げ出しました。現在私の同期3名が逃げた犯人を追いかけています」


 そうなんだ、同じ奴が。いったい俺に何の恨みが有るってんだ。


「ゲオルグ様の試合時間まではまだ時間が有ります。今はゆっくりと体を休めてください」


 ありがとう。でも、起き上がりたいんですが?


「念の為、そのままで」


 はい、すみません。


 真剣な顔のクロエさんに両肩をしっかり押さえ付けられて、俺はエステルさんの到着を待った。

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