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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第22話 俺はチームプレイを尊重する

土の地相を利用して生み出した5本の金槍が、敵陣に向かって飛翔する。


笑って傍観していた2組のやつらが慌て出し、迎撃しようと急いで火球を放つ。


しかし、狙いが分散している。


いくら金槍と相性が悪い火とはいえ、訓練場全体の地相が土になった現状では、火魔法は十分な力を発揮出来ない。


2組の纏め役が不甲斐無いのか、もしくは居ないのか、2組はチームワークが良くない。迎撃するならどれか1つ、せめて2つに集中するべきだったな。


5つの衝突音が重なって、訓練場に響き渡る。


音が耳に残っている中、いくつかの大玉が崩壊する。金槍と共に地面に落下した大玉が、また別の音を奏でている。


「よしっ!想定以上の成果!」


ミリーが右拳を握り締める。


5つ中、3つの大玉が崩壊したのを確認し、他のクラスメイトも喜びの声を上げる。


壊れたのはおそらく木土金の3つのはずだ。


試合前の想定では木と土を壊す予定だった。地相を土に変える事で金属性の大玉も強化されて硬くなるかもと考えていたからだ。しかし、どうやら杞憂だったらしい。


「さあ、このまま押し切るよ!まずは残っている真ん中の大玉に向かって、土魔法連打!」


狙う大玉を指差したミリーの指示に従って、クラスメイトが土魔法を放つ。


ある者は自分の力で土塊を生成し、ある者は俺が貸し出した魔導具を使って土槍を投擲する。


クラスメイトには火魔法しか使えない生徒も多いが、俺と違って自分で魔導具に魔力を補充出来るから良いね。


ミリー達の攻撃を防ごうと相手も必死だ。しかし魔法の種類は火、土、風。個人が得意な魔法で、各々バラバラに迎撃している。


人数は向こうのほうが多い訳だから、まともにやり合ったらこちらが不利だ。しかしあっさりと逆転された向こうは動揺し、チームプレイが出来ていない。皆で協力して巨大な土壁でも作り出せば、こっちは困るんだがな。


さて、俺は別の仕事をしよう。


中立地帯上空で互いの魔法が激しく衝突する中、俺は魔導具を使って自陣の大玉前に、防御用の土壁を建てていった。




「試合終了!」


時計の針を確認した審判が試合を止める。


15分間、ほぼ休み無く魔法を使い続けた両組の生徒は、ヘロヘロになってその場に座り込んだ。


俺には分からないが、おそらく短距離ダッシュを何本も繰り返しているような疲労感だろう。


みんな、よく頑張ったよ。


「ははは、こんなに魔法を使ったのは、久し振りかも」


試合開始前からずっと興奮して元気だったミリーも、流石に疲労の色を見せている。


「でも、勝った。ゲオルグの作戦のおかげだね。あーー、つかれたーー」


ミリーは服や髪が汚れる事も厭わず、地面に寝転がって手足を投げ出した。


いや、みんなが頑張ったおかげだよ。みんなが力を出さないと、この人数差は覆らなかった。


俺はぐるっと訓練場内を見渡す。


動けなくなっている両軍。


疲労困憊の生徒に手を貸す保健管理部員。


魔導具を片付けようとしている試合管理部員。


そして、敵陣には2つの大玉、自陣には3つの大玉が未だ浮かんでいる。




正直に言うと、もっと強力な魔導具を使えば楽に勝てたと思う。


わざわざ地相を固定しなくても、特大の業火を放つ魔導具を量産したら楽だった。


「でも、それじゃあつまらないじゃない?」


大会数日前に、ミリーがそう言い出した。


負けるつもりはないけど、せっかくのクラス対抗戦なんだから20人のクラスメイトみんなで頑張りたい、と。


「だから、みんなが参加出来る凄い作戦を考えて」


そんな他力本願の無茶振りを言われて、俺は渋々作戦を考え、地相を使う事にした。


作戦は、まあまあ上手くいったんじゃないか?


最後の最後で2組が猛攻に出て土壁を破壊し、こちらの大玉が1つ壊されてしまったのは失敗だったが、まあ及第点だろう。


しかし、予選はまだ3戦ある。こんな全力疾走を後3戦。みんな大丈夫だろうか。ちゃんと魔力は回復するだろうか。連戦では無いが、割と危険な気がする。


ミリーの提案には渋々賛成したが、いざとなったら強力な魔導具を解禁しよう。俺だって負けたくないし、その為の魔導具はちゃんと作ってあるんだから。

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