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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第18話 俺は友人の好みを考える

まったく。アレは何だったんだ。


イルヴァさんの言う通り、本当に同姓同名?


まさか。


同名だけなら兎も角、姓も同じ人間が同じ国内に居るだなんて、もっと前から噂になっていてもいいだろ。


自分で言うのもなんだけど、ゲオルグ・フリーグの名はそれなりに知られてるはずだ。無能とかいう悪い方での知名度でな。


騒動を起こしたアイツは、俺の名前を騙って俺の悪評を広めようとした。そう考える方が妥当だろう。ついでに、プフラオメの悪評も。


もしかしたらプフラオメの評判を下げる方が本命で、俺はプフラオメのついでだったのかもしれないけど。


どちらにしろ、気分の悪い話だ。逃げたアイツをゲルトさん達が捕まえて来たら、俺も一言文句を言ってやる。




「壊された屋台の修理は道具管理部に連絡してください。費用に関しても向こうと相談で。食品類で何か害された物は有りませんね?」


俺が独りで憤慨している中、レオノーラさんは屋台店員と被害状況を確認していた。


壊れた屋台が修理出来るのは良かったが、屋台側にとってそれの修理費用を負担させられるのは不満だろう。犯人を捕まえて支払わせないとな。


「では私達はこれで失礼します」


ひと仕事終えたレオノーラさんが、屋台から離れたところで傍観していた俺達の所へやって来る。


「さて、屋台の見廻りを始めよっか」


えっ、ここでゲルトさん達を待たないんですか?


「いつ戻って来るか分からないし、私達にもやらなきゃ行けない仕事があるからね。気になるならゲオルグ君だけ残ってもいいよ」


あーー、いや。一緒に行きます。


「じゃ、行きますか。全部の屋台を見終わって試合まで時間が残ってたら、もう1度警備管理部の所へ行こうね」


張り切って先導するレオノーラさんに付いて、俺は屋台の見廻りを見学した。




最初の騒ぎ以外特に問題無く、するっと見廻りを終えて警備管理部の拠点へ向かうと、そこにはゲルトさん達警備管理部員の他に3人の生徒が居た。


プフラオメ王子と、その取り巻きの男子生徒2名だ。


拠点に近寄って来る俺に気付いたプフラオメは笑顔で手を振ってくれたが、取り巻きの1人が俺達の間に割り込んで視界を遮ってしまった。彼らに何かした記憶は無いが、随分と嫌われているようだ。


しかし、あの騒ぎを起こした犯人の姿は無い。


犯人には逃げられてしまったから関係者っぽいプフラオメを呼んで話を聞いていた、ってところか。


警備管理部も大した事無いな。


そう思ってもちょっと怖いゲルトさんには面と向かって言えないから、俺はこの言葉を心の奥に仕舞って平静を装う事にした。


「えーー、逃げられたんですか!ダメダメですね。しっかりしてくださいよゲルトさん」


レオノーラさん……。


ゲルトさんと知り合いだからとはいえ、割と無神経にズバズバ言っちゃう人なんだな。


「そういう時も有る。ところで、お前が本物のゲオルグ・フリーグで間違いないんだよな?」


レオノーラさんの言葉を軽く遇らったゲルトさんは、矛先を俺に変更した。


俺が本物かって?


馬鹿馬鹿しい。そんな疑問を持つ奴は、俺が本物だと言ったところで信じない奴だよ。


「間違いなく彼はゲ「王子」」


俺が呆れて答えないでいるのを感じたプフラオメが『俺は本物だ』と証言してくれようとしたのに、取り巻きの1人がその言葉を遮った。


なんで止めるんだよ。プフラオメもなんで止まるんだよ。


「王子、少し席を外しましょう」


発言を遮った取り巻きが王子を連れてタープテントを出て行き、俺とプフラオメの間に立ち塞がっていた取り巻きだけがテントに残った。


プフラオメ、素直過ぎないか?


プフラオメは普段から取り巻き達の言いなりなのかな。


ヴォルデマー先生が1度大鉈を振るって取り巻きを入れ替えたとはいえ、またプフラオメの周りに変な奴らが付いたようだ。相変わらず1組は魔境だな。


「こっちが『本物のゲオルグ』だと私が証言するだけじゃ不満?クロエさんかアリーさんを呼んで来ようか?」


レオノーラさんがゲルトさんの問いに強い口調で答えた。さすがレオノーラさん、もっとズバズバと言ってやって!


「この世界には同じ顔の人が3人居ると言いますよね」


あーー、そういう話じゃないんで、イルヴァさんはちょっとだけお静かにお願いします。


「本物で有ろうと無かろうと、王子はゲオルグという名の人物との付き合いは有りません。王子の名を勝手に使われてこちらは迷惑しています。二度とこういう事が無いよう、厳罰に処して頂きたい」


取り巻きが変な事を言い出した。さっき王子が笑顔で手を振っていたのを見てただろうが。知り合いじゃないとは言わせないぞ。


「では貴方。プフラオメ王子の好きな食べ物を1つ挙げてみてください」


え?


なんだよ急に。


「分からないのなら、王子の誕生日を」


そういえば知らない、かも。


「得意科目は?」


えーっと、文学?


「歴史です。この程度も真面に答えられなくて王子の知人を騙るとは。嘘を言い続けたら本当になるとでも思っているのですか?」


ぐぐぐ。腹の立つ言い方しやがって。友達でも知らない事は有るだろ。無駄に弁の立つ嫌味な奴だな。


「はいはい、こんなところで喧嘩しない。取り敢えず、『犯人には逃げられた』、『犯人はプフラオメ王子の関係者では無い』、『このゲオルグ君は本物』という事でいいね」


レオノーラさんが俺と取り巻きの間に入り、イルヴァさんに俺の身柄を引き渡す。


「乱暴はダメですよ」


イルヴァさんは俺の腕を掴んで、俺の動きを抑制した。


腹は立っていますが、いきなり殴り掛かったりなんてしませんよ。


「王子の名を使って屋台の行列を無視するような人物は、王子の周りには居ません。ゲオルグとかいう名の人物なら、それをするかもしれませんが」


最後の一言は余計だろ。嘲笑うような目つきしやがって。もう完全に頭に来た。前言撤回、ぶん殴ってやる!


「これはダメだね。喧嘩に発展する前に退散しようか」


「そうですね。美味しい物を食べて、気分を落ち着かせましょう」


レオノーラさんの意見を賛同したイルヴァさんに腕を引っ張られたと思ったら、ふわっと体が浮き上がって、俺はいつの間にかイルヴァさんに抱きかかえられていた。


ちょ、ちょっと。恥ずかしいから下ろして。


「喧嘩しそうだからダメです」


意外と力が強いイルヴァさんに抱き上げられた俺は、イルヴァさんが言う美味しい物の所まで、そのまま抵抗出来ずに運ばれて行った。

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