第2話 俺は姉さんを考える
この世界に産まれてから、もう何日経過したかな?
30日くらいまで数えてたけど、途中で分からなくなって止めてしまった。
なんとなく室温が上がってきた気がする。この世界に四季があるなら夏くらいだろうか。
気温の上昇と共に、この身体が成長しているのを実感する。
最初は開き辛かった眼も、今ではお目々ぱっちり。色や形の区別が出来るようになって、人の顔を判別出来るようになった。じーっと見ないと直ぐには分からないんだけど、母親の顔はバッチリ分かる。
まだ喋れないけど、段々と音を聞き分けることが出来るようになった。
俺のことはゲオルグって呼んでいると思う。俺の名前だろうか、もしかしたら赤ちゃんって意味かもしれない。
身体能力の方はそこまで大きな変化はない。起き上がるどころか、寝返りもまだ打てない。自分で動かせるのは手足と首だけだけど、産まれた時よりは格段に動く。前世の嫌な記憶があるから、少しでも動かせるのが嬉しい。
色々見えて、色々聞き分けられるようになって気付いたんだが、この家はきっと裕福だ。両親以外に色んな人がいる。服装が統一されているから、使用人かな。
それと、母親以外の人から授乳されている。これがよく聞く乳母って存在だな。初めて母親以外の人から授乳されていると気づいた時は、なんか恥ずかしかった。お腹空いてたから飲んだけど。
大人の他に子供もいる。
乳母さんがたまに連れて来て、俺の横に寝かせる子。乳母さんの子供っぽい。
男の子かな?女の子かな?見た目だけじゃ分からないね。
そんなに泣かないで。乳兄弟でしょ、仲良くしようよ。
まあお互い何言ってるか分からないと思うけどさ。
それともう1人、俺が母親に抱かれていると必ず寄ってくる女の子。こっちは間違いなく姉だと思う。
ごめんね、気持ちは分かるからそんな顔しないでよ。君からお母さんを奪うつもりは無いんだ、成長するまでちょっと待ってね。
前世の家族は両親と妹だけ。親戚ではたまに祖父母が来るくらい。両親共働きで不在がち。その環境に特別不満は無かったけど、家族が多くて、いつも誰かが居るっていいね。
あれ?姉さん、どうしたの?
1人で来るなんて珍しいね、いつもは母さんと一緒なのに。
俺を囲ってる柵を乗り出して来てるけど、あんまり体重かけると柵壊れるぞ。
んー、何か言ってるけど分かんない。
顔付きから想像して怒ってる感じ。母親を取られる嫉妬で怒ってるのかな。喋れるようになったら謝るから、もうちょっと我慢してよ。
どうしたら気持ちが伝わる?僕は姉さんの敵じゃ無いよ。
あっつい。
顔が凄く熱かったけど、なに?姉さんの手から炎が出たように見えたよ。
ちょっと、もう一回やって。
あっついいい。
さっきより近いからさらに熱い。でも確実に炎が出た。小さいのにもう魔法が使えるんだね、すごい。
出来るだけ大袈裟に喜ぼう。満面の笑みで。声を出すのは苦手だけど、笑い声も付けるよ。
あ、火傷は気にしないで。今はちょっとヒリヒリするけど、直ぐに治るから。
だからそんな顔しないで、もっと魔法を見せてよ。
あらら、行っちゃった。
姉さん大丈夫かな。誰か姉さんを助けてあげてよ。あれじゃあいつか潰れちゃう。
もう、早く喋れるようにならないかな。ごめんね、姉さん。このことは墓場まで持って行くから。大丈夫、誰にだって黒歴史の1つや2つあるから。
あ、姉さん、今日も来たの?昨日はあれから会わなかったけど大丈夫だった?
今日は柵を乗り越えて来ないんだね。
両手いっぱいに土を持ってるのが見えるけど、それをどうするのかな?
おおおお。
手の中で土が動き出した。それも魔法?
丸くなったり、四角くなったり、色々形を変えながら動いている。
土を操作する魔法なのかな。更に上達するとどんなことが出来るんだろう。楽しみだね。
もう終わり?また見せてね。
なんとなく満足げだった。昨日とは顔付きが違った。
俺に魔法を見せることで気が紛れるなら、いつでもどうぞ。
なんか俺、みんなのおもちゃにされてない?
あれから姉さんは毎日欠かさず魔法を見せに来ている。
それに気付いた誰かが、俺に魔法を見せに来た。いつもの姉さんの時と同じような反応をしたら、その日から取っ替え引っ替え人が来るようになった。
俺の反応を見て楽しんでる感じだ。一度無視してみると相当ガッカリして帰って行った。なんとなく心が痛んだから、ちゃんと反応するようにしている。
まあでも、姉さんの魔法を見るのが一番楽しい。
毎日違う魔法を見せてくれる。日に日に技術が進歩していくのを感じる。
俺の身体の成長と共に、姉さんの魔法も一緒に成長している。
姉さんは、もう最初に魔法を見せてくれた時のような顔はしていない。
いい顔で笑うようになった。これなら安心。
出会いはギクシャクしたけど、俺は今の姉さんが大好きだ。
俺はこの世界でもシスコンになりそうだ。
ロリコンじゃないから、まあいいか。