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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第12章
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第15話 俺はマリー達の結果を聞く

 俺が面倒臭い男の子から逃げ出して訓練場脇の広場に辿り着いた丁度その時、訓練場から生徒達がゾロゾロと出て来ているところだった。


 団扇や扇子を持った生徒が散見される。選手じゃなくて観客だろう。


 仮設試合場や馬術施設での試合に続いて、訓練場で行われていた奇数組のクラス対抗戦も終了したようだ。


 予定では、これで午前中に行われる試合は全て終了。選手も観客達も、昼休憩に入る。


 1時間程度の休みの後、俺達偶数組は訓練場でクラス対抗戦、マリー達の奇数組は個人戦と騎馬戦だ。


 訓練場から広場に出て来た生徒は、思い思いの屋台に並び始める。


 定員達も声を出して、客引きに熱中する。強引な客引きは無いと思うが、それは警備対象だから気をつけて頂きたい。


 そんな風に近場の屋台で列を作る生徒が多い中、割と少なくない生徒達が俺とすれ違って、俺が走って来た道を進む事に驚いた。


 もしかして、うちの屋台に向かってくれているんだろうか。それならとても嬉しいけどな。


「何を見てニヤけているんですか?可愛い子でも居ました?」


 すれ違った人々の背中を見送っている俺の背後から声がかかる。


 この声に言い草、マリーだろ。


 嫌な事を言うマリーに対して思いっきり睨み付けてやろうと思い、渾身の顔を作って振り向くと、


「ざんねん、ローゼでした」


 そこには仏頂面のローズさんが居た。


「いきなり睨んで来るなんて、相変わらず良い根性してるわね」


 ローズさんも凄い顔で睨んでますよ。なんて火に油を注ぐような言葉を飲み込んで、俺は謝罪の言葉を絞り出した。


「ふっふー。引っかかったー」


 ローズさんの方へ振り向いた俺の背後から、マリーが軽い調子でポンポンと左肩を叩いた。


 いつのまにぐるっと回ったんだ?


 俺のそんな疑問に答える事無く、マリーはニコニコと笑っている。


「私達1組は全勝で予選を通過しましたよ。ゲオルグ様はどうですか?」


 こちらの話を無視して話題を変えるマリーに若干の怒りを覚えたが、再び言葉を飲み込んで自分の結果をマリー達に伝えた。


「準決勝進出おめでとうございます。私達も頑張りますね」


「おめでとう。まあ優勝するのは私だけど」


 マリーが笑顔で、ローズさんが不満げな顔で賛辞を述べる。


 しかし、ローズさんはどうしてずっと不機嫌なんだろう。


「クラスメイトと喧嘩しちゃってね。しかも試合中に」


「ちょっとマリー」


「はーい、黙りまーす」


 ローズさんに睨みつけられて、マリーは両手で口を押された。


 えええ、チームプレイが大事なクラス対抗戦で、喧嘩する?


 しかも、試合中に?


「うるさいわね。こっちにも色々と有るのよ、色々と。勝ったんだから別にいいでしょうが」


 そりゃあ俺にとってはどうでも良いけどさ。クラスメイトとは仲良くした方が良いよ?


「大きなお世話」


「もばが、ぶびば」


 マリーが口を塞いだままで何かを訴えかけて来る。何を言っているのか分からないから、それやめてくれ。


「外して良いわよ」


「お腹!空いた!」


 口に当てていた両手を下げて腹部に当て、マリーは空腹を訴える。


「ゲオルグ様の小麦粉料理、凄く美味しいんですよ。早く食べに行きましょう!」


「ああ、試合の合間にずっと言ってたやつ」


「早く行かないと、休憩時間が終わっちゃいますよ。ゲオルグ様も行きます?」


 マリーの問い掛けに、俺は行かないと答えた。


 まだ面倒なやつが向こうに居るはずだからな。また会って絡まれるのは嫌だ。


「ゲオルグ、王子の周囲には気を付けなさいよ」


「じゃあゲオルグ様、また後で!」


 ローズさんの手を取ったマリーは、ローズさんを引っ張りながら駆けて行った。


 しかしローズさんが最後に残して行った言葉が気になる。


 ローズさんが言う王子は、おそらくローズさんと同じクラスのプフラオメ王子の事だと思うが、周囲と言うのは王子にいつもくっ付いている子達の事かな。


 ヴォルデマー先生の鶴の一声で王子の取り巻きになった貴族子弟の2人。何度かすれ違った事はあるが、話した事は無い。


 まあ、会うかどうかも分からないのに今から気にしたってしょうがないな。出逢っちゃった後に気をつけるとしよう。


 おっと、食品管理部の先輩が居るな。2年生の2人、レオノーラさんとイルヴァさんだ。これから屋台の見回りだろうか。


 もしそうなら、俺も一緒に行かせてもらおう。腹は空いてないし、1人でどこかに座ってじっと休んでいるのもなんとなく勿体無い。


 暇潰し?


 いやいや、明日以降は俺も見回りをするんだ。それの勉強です。


「すみませーーん」


 俺はなるべく爽やかな笑顔になるように心がけて、先輩達の下へ走り寄った。

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