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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第43話 俺は、剣を、振る

 朝食後自室に戻り、壁掛けに戻された剣を眺める。

 革製のベルトで鞘を2か所、柄を1か所固定された剣は、剣先を下に向けて堂々と壁にもたれ掛かっている。


 剣は今までとは違い、2つの鉱石が輝きを失っている。新しい魔法を込めてもらう前にお風呂へ放り込まれたからな。湯船に浸かっている間に、誰かが壁へ戻してくれたんだろう。


「ゲオルグ、入っていい?」


 遠慮がちに扉を開けて、顔を覗かせる姉さん。そんな態度は珍しいね。

 でもそんな姿は好きじゃないな。


「入っていいから、またこの剣に魔法を込めてよ」


 壁掛けから剣を外して姉さんの所へ持って行く。

 ほら、俺はもう気にしてないから、と笑顔を振りまく。


「ありがとう。次からやり過ぎないように気を付けるね。じゃあどんな魔法にする?」


 姉さんに笑顔が戻った。うんうん、やっぱり姉さんはそうじゃないとね。


「魔法はさっきと同じでいいよ。もうどんな魔法か分かったから」


 一度見たから威力も発射タイミングも分かった。もう戸惑うことはないよ。

 新しく注文をつける方が失敗しそうだしね。


「それよりも、やっぱり剣を持つ手が熱いね。それと、強力な魔法が発動するまでの間ずっと、こっちに熱波が襲ってくるんだ。その辺を何とか出来ないかな」


「そうかぁ、熱いのかぁ。自分で火魔法を使っている時には感じないから気にした事が無かった」


 喋りながらパパッと魔法を込める。込められた証に鉱石が輝きを取り戻した。


 火魔法を使う術者は熱を感じないものなのか。確かに自分が被害を受ける魔法なんて使えないよね。恐らく無意識に制御してるんだろう。


「柄部分はどうにか出来ると思うけど、魔法から伝わってくる熱はどうしたらいいか分からない。これから師匠の所に行くから、相談してみるね」


「ソゾンさんの所でジークさん用に魔導具を作るの?」


 姉さんの魔法で終わってしまったが、結局ジークさんは剣を抜かなかったから俺の負けだよね。


「ジークは要らないって。母様に怒られた後にしょんぼりしながら言ってきた。ジークは悪くないのにね」


 そうだね。

 まあジークさんも俺達を止めずに戦うことを楽しんでいたから、そういう所で母さんが怒っているんじゃないかな。


「今日は温室用の魔導具を見に行くんだよ。昨日話したじゃない」


 そうだった。ソゾンさんが魔導具を持って来たことから始まったんだ。すっかり忘れてた。

 そういえば父さんにはちゃんと連絡が行ったんだろうか。返信があったとは聞いてないけど。


「じゃあ行ってくる。怪我はしてないみたいだけど、今日はゆっくり休んでね」


 ありがとう。いってらっしゃい。

 声を出す前に姉さんは居なくなってた。元気を取り戻したようでよかった。


 俺も元気だ。割と本気で体を動かしたけど、特に疲れは感じていない。これが若さかな。治癒魔法で疲労感を感じる前に治っているのかもしれない。掌の火傷は後も残らず治っている。マギー様ありがとう。


 剣をまともに振ったのも久しぶりだ。あんなに嫌がっていたのに、体を動かしている間はそのことを忘れていた。

 昨日からこの剣を魔導具としか認識して無かったな。前世のトラウマなんてそんなものなのかもしれない。


 魔導具の剣を壁に掛ける。

 その隣には姉さんからもらったよく切れるナイフ。切れすぎるからとマルテに取り上げられそうになったのを必死で守ったんだよな。

 今回の件で、魔導具を取り上げられなくて良かった。


 そしてこの部屋にはもう一本、今年の誕生日にジークさんから貰った剣がある。これは飾ってないんだ。

 クローゼットを開けて奥に隠している剣を取り出す。

 誕生日以来、久しぶりに手に触れた。

 俺の為に用意された剣だが、鞘から出すこともなく遠ざけてしまった。


 ゆっくりと抜剣する。

 軽い。剣も鞘も軽い。

 鞘を置いて、両手で握ってみる。左手が柄頭付近、右手が鍔の近くになるよう握る。柄が長く作られていて両手で握っても少し余るくらい。

 でもそれが握りやすい。力のない子供は両手を使えと、ジークさんに言われているみたいだ。


 上段に振り上げて、下ろす。振り抜かず、中段でギュッと止める。

 軽くて振りやすい。

 振りながら左手の重要性を思い出す。片手剣を経験したから特に左手の動きが気になるのかもしれない。


 素振りに慣れてきたら足も一緒に動かす。振り上げた時に半歩下がって、振り下ろす時に半歩出る。

 最初はゆっくり。少しずつ振りを速くし、段々と跳ねるようにリズムよく。


 トントントントン。


 いつの間にか視界が曇ったまま素振りをしていた。

 汗じゃない何かが頬を伝って床に落ちる。鼻が詰まって呼吸が荒れる。


 全盛期はこんなもんじゃ無かった、もっと振れるだろ。

 どんどん前世の事を思い出す。握り方、足の運び、力の抜き方、息遣い。


 あんなに嫌ってた剣を振るのが、どうしてこんなに楽しいんだ。


 疲れを知らない今世の素振りは、涙が枯れるまで継続した。

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