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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第115話 俺は新しき西風のアジトを知る

「あーー、疲れたぁああ。もう家に帰って休んでも良くない?子供の笑顔を見て癒されても良くない?」


 東方伯邸の敷地内から一歩外へ踏み出した途端、旦那様が泣き言を言い出した。


 旦那様の土下座によって怒りを収めた東方伯とその後暫く会話に興じた我々は、朝食までご馳走になって漸く東方伯から解放された。


 当初に比べて東方伯の態度は柔らかくなったが、東方伯は旦那様に向けて、絶対に犯人一味を逃すなよと圧力をかけ続けていた。


 旦那様はかなり精神力と体力を削られた事だろう。頂いた朝食も滑らかに喉を通らず、何度も水をお代わりして流し込んでいた。側で見ている私は美味しく頂けたが。


「少し休憩する分には構わないと思いますが、恐らく帰宅したらリリー様に捕まって質問攻めにされるかと」


「確かに、素直に休ませてくれるとは限らないが………。よし、またダミアンのところの休憩室を貸してもらおう」


 1度警備隊詰所に戻る事は悪くない。


 私達がいない間に、捕らえた容疑者からダミアン達が新しい情報を聞き出しているかもしれない。


 私は旦那様の提案に賛同して、警備隊詰所へと戻った。




 警備隊詰所に入ると、旦那様は一直線に休憩室へと向かい、備え付けのベッドにゴロリと横になった。


 我が家か。


 一瞬で寝息を立て始めた旦那様を放置してダミアンを探したが、詰所内に彼の姿は無かった。一緒に宿屋へ向かった隊員の姿も。


 皆、夜勤を終えて帰宅してしまったのだろうか。


「副隊長は地区庁舎に呼び出されました。治安維持課の役人はかなり怒っているみたいです」


 詰所にいた別の隊員が教えてくれた。彼も夜勤をしていた隊員だが、宿屋へは行かずに留守番していた隊員だ。


「副隊長以外の隊員はアルバンを護送して近衛に向かいました。近衛が確保している警備隊の面々と面通しをさせよう、と副隊長の指示で」


 悪くない判断だ。アルバンが証言をすれば、捕らえた警備隊のうち誰が新しき西風の一員かを把握する事が出来る。


 私も近衛に向かって情報を得たいところだが、旦那様を置いて行って良いものかどうか。


「寝かせておいても構いませんよ。もうすぐ日勤の隊員との交代時間で、誰も休憩室を使いませんから」


 私は隊員の言葉に甘え、旦那様を放置して王城へと向かった。




 城門を守衛している近衛兵に許可をとって中に入ると、既にアルバンの面通しは終わっていた。


「宿屋の息子の話では、捕まえた警備隊員の中に4名、新しき西風の会合で見た顔が居るそうだ」


 ぶかぶかの服のままで近衛の事務所内にいたジークが話す。


「今はその4名を重点的に取り調べ中。俺も参加したかったが、流石に無理だった」


 特に悔しがる様子も無く話すジークに、その中にドワーフ族のイヴァンは含まれているのか?と尋ねた。


「いや、4人とも人族だ。まああいつらの上司なんだから、完全に無関係とは言えないだろうな」


 西方伯領内は未だに人族至上主義の気風が強い土地だ。それを考えると、多種族は上手く利用する程度で、仲間に引き入れる事は無いのかもしれない。


 イヴァンが一味では無いとの話を聞くと、ダミアンも少しは気が安らぐだろう。


 まあジークの言う通り、上司としての管理責任を問われて警備隊にいられなくなるかもしれないが。


「そういえば西方伯派閥の連中が何人か探りを入れに来てたぞ。近衛の連中が追い払っていたけどな」


 騒ぎが西方伯家の耳にも入り、動き出したか。身内ではなく派閥を動かした当たりが西方伯らしい。東方伯の様に自ら乗り込むのもどうかとは思うけど。


「ダミアンのところの警備隊員が持って来た男爵の推理は近衛にも伝わっている。近衛側も西方伯家が1番怪しいとの共通認識だ。今取り調べている奴らから西方伯の名前が出て来るといいな」


 そうなると楽だが、どうなる事やら。


 私は4名の取り調べが終わるまで、ジークと共に近衛の事務所で待たせてもらう事にした。




 私が近衛事務所に来て1時間程経過した頃、近衛兵達がバタバタと動き始めた。


「ちょっと状況を聞いて来る」


 近衛の中に知古の友が居ると言うジークが、ズカズカと近衛の中に割って入って行った。


「どうやら奴らのアジトが近くに有るらしく、これから出動するそうだ。俺達も参加すると話を付けておいたぞ」


 帰って来たジークが鼻息荒く説明して来た。


「それなら旦那様を呼びに行かないと」


「そうだな、急いでくれ。15分後には王都を出るぞ」


「王都内じゃないのか?」


「ああ、王都を出てすぐ北に作った、あの新しい村だ」


 そこは第3王子が主導し、男爵家も多く出資して整備された村。


 馬車による王都への接続が便利だ、と王都からの移住者が増えている新興の村だ。


 一軒家を得やすく、王都にも行きやすい。村から王都への通勤者が増えた事で、最近は村の住人の出入都管理が緩くなっている。


 王都で悪さを企む組織に良い隠れ家を提供してしまったか。


 男爵家も関わっている村の調査に少々バツの悪さを感じながら、私は旦那様を呼びに行った。

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