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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第102話 俺は姉さんの推理を聞く

「男爵、容疑者を挑発するような行為は謹んでいただきたい」


「あ、いや、その。申し訳ない」


 暴れ出したフランツが警備隊員に取り押さえられて面会室を出て行った後、ダミアンが旦那様を叱り付けた。


 何も知らなかった旦那様は慌てて頭を下げて取り繕う。


 内心ではアリー様に怒っているだろうが、娘には甘い旦那様はそんな雰囲気をおくびにも出さない。


「じゃあダミアンさん。もう1人の容疑者をお願いします」


 そんな旦那様の気持ちを知ってか知らずか、アリー様はダミアンに新しい要求をする。


「その前にアリーちゃん、そっちの女性の名前をもう1度言ってもらえるかな?」


「バルバラだよ。私やダミアンさんの娘のデリアと同い年の」


「よろしく」


 改めて紹介されたバルバラは頭も下げず、ぶっきらぼうな態度で挨拶をした。


「よろしくって君。こんなところに居て良いのかね?今すぐ近衛に保護してもらった方が」


「近衛も好きじゃない」


 バルバラの答えに、ダミアンは唸って言葉を詰まらせた。


「えーっと、バルバラさん?どうしてあのフランツという少年から怨まれているんだい?」


「それはね、バルバラが彼らの悪事を無理矢理暴いたからだよ」


 旦那様の疑問に答えたのは、なぜか自慢げに話すアリー様だった。




 アリー様達が通っている学校の武闘大会運営委員会が管理している魔導具の魔石に劣化が見つかった。


 1つではなく複数。


 それは明らかに不自然で、人の手が加えられている可能性が高かった。


 厳重に管理していた魔導具に細工するには部外者では難しい。


 犯人は去年魔道具の管理を担当していた者。そう判断したバルバラは去年の担当者で4年生の生徒を問い詰めた。


 去年の担当者は罪を認めなかったが、それ以来体調を崩したと理由を付けて学校を休んでいる。


 その去年の担当者は西方出身者だった。そして今年の担当者にも西方出身者が2人紛れ込んでいる。


 運営委員会の上層部が検討を重ねた結果、西方出身者を魔導具の担当から排除した。




「その排除された今年の担当の1人が、さっきのフランツ」


「ちょっと待てアリー。なぜ西方出身者と言う理由で排除するんだ?」


「調査した結果、3人は割と近しい親戚同士だったから」


「質問の答えになっていない」


「うーん。私がラウレンツに嫌われてる、から?」


 アリー様にしては歯切れが悪く、言い辛そうに答えた。


「ラウレンツというと、西方伯子息の?」


「そう、その。理由はイマイチ分からないけど入学当初から嫌われてて、色々とちょっかい出されてた。まあバンブスから受けた被害に比べたら大したことないんだけど」


「アリー、頼むから王家とは問題を起こすなよ」


 不意にバンブス第二王子の名が出た事で旦那様は動揺している。


 そんな旦那様に、起こさないよ、と澄ました顔で即答するアリー様。


 バンブス王子に関しては全く迷いが無さそうだ。


「ラウレンツにも話を聞いたんだけど、関与を否定している。でもラウレンツがその3人と仲良く話していたという目撃情報も有って、念の為に3人を排除した。その後暫くして、バルバラが何者かに襲われた」


 集団に襲われたが返り討ちにして2人を捕らえた。警備隊に預けたが火事で逃してしまった。


 その事を思い出したのか、バルバラがジトッとした目付きで警備隊の面々を見ている。火事で逃したのはここの詰所では無いんだが。


「多分ラウレンツが手配したんだと思うんだよね。何も確証は無いけど」


「西方伯家か。王家ほどじゃないけど、また面倒な相手と……」


 頭を抱えた旦那様に、アリー様は反論する。


「言っとくけど、私からラウレンツに喧嘩を売った事は1度も無いんだからね。バンブスには、まあ偶に売るけど」


「売るなよ……」


 力無く反応した旦那様は、暫く黙って心を落ち着かせていた。




 大きく息を吐いて気を取り直した旦那様がようやく口を開く。


「しかし、担当を排除されたくらいで人を殺したくなる程怨むか?」


 黙って考えた結果、旦那様はアリー様の話に納得がいかなかったらしい。


 アリー様の推理は確証が無く、割と大雑把だ。娘命の旦那様でも、流石にその話は受け入れられなかったか。


「それにフランツらはゲオルグを尾行していたんだぞ。あの2人がゲオルグを狙う理由はなんだ?」


「魔石の劣化を見つけて、一連の流れのキッカケを作ったのがゲオルグだから」


 アリー様の言葉に力が籠る。アリー様はここに1番腹を立てているようだ。


「ゲオルグは真面目に点検しただけなのに、それを逆恨みするなんて許せない。何もしなければ私も我慢したけど、何度も何度もゲオルグを狙って。もう絶対に許さないんだから!」


 怒気を孕んだ言葉の強さに、アリー様の事をよく知らない警備隊員達は圧倒されていた。

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