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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第95話 俺はルトガーさんから説教される

 ジークさんの近況、村の発展、入院した時のマリーの様子などの話をして1時間ほど経過すると、鷹揚亭にルトガーさんがやって来た。


 俺達が座るテーブル席に腰を下ろしたルトガーさんは、白ワインとおつまみを注文して、


「坊っちゃま。護衛を振り切る行為は誉められたものではありませんよ」


 早速小言を口にした。


 俺が聞きたい話はそんな小言じゃないんだ。不審者を捕らえたって話はどうなったの?


「その前に、しっかりと注意すべきところは注意させて頂きます。これは坊っちゃまが立派な領主になる為に必要な事ですので」


 そう前置きしたルトガーさんは、ゆっくりと丁寧に俺の行為が如何に危険な行為だったかを説明して来た。


 そりゃ護衛を振り切るのは危ないって事ぐらい分かってるよ。反省してるから早く次の話題に移って!


 なんて割り込んだらきっと話が長引く。だから俺はハイハイと相槌を打ちながら、ルトガーさんの気が済むまで聞き手を演じ続けた。


 俺が説教されている間、ジークさんは1人で楽しそうに酒を飲んでいた。




「さて、坊っちゃまも改心したようですし、そろそろ本題に移りましょう」


 今後護衛からは逃げないと約束までさせられて、ようやくルトガーさんは納得してくれた。


 俺が逃げたから不審者を捕まえる事が出来たんでしょ。それで良いじゃないか。ダメですか?


「坊っちゃま。私達が尾行されていたのは、気付いていましたか?」


 1度白ワインで唇を湿らせたルトガーさんが切り出した話題に、俺は首を振って答えた。


「学校を出てすぐに、フードを被った人族の男が2人付いていたぞ。俺はその2人の後ろから更に尾行してたんだけどな」


 代わりにジークさんが答えた。


 尾行なんて全く気が付かなかった。ルトガーさんはどうやって気付いたんだろう。


「まあ雑な尾行でしたからね。坊っちゃまも訓練すると、人の気配が有るのに足音が聞こえないと違和感を覚えるようになりますよ」


 そう言うものなの?


 人の気配なんてそう簡単に感じられるようになるものかね?


「私達が武器屋に入った時は外で待っていたようですが、武器屋を出るとまた付いて来ました」


 ふむふむ。じゃあジークさんは1度尾行の2人を追い抜いて入店したわけか。


「一緒に止まってると、俺が怪しまれるからな」


 なるほど。


「それで、不用意な坊っちゃまが駆け出した後、その2人は私ではなく坊っちゃまの方へ向かいました」


 はい、不用意ですみません。話を続けてください。


「まあ、あえて私は坊っちゃまの前を歩いたのですがね。坊っちゃまがイライラしていたのが態度で分かったので。案の定坊っちゃまは動き出して尾行を引き付けてくれました」


 俺はルトガーさんの手のひらの上で踊ってたって?


 更にムカつくんですけど。


「坊っちゃまが空を見上げながらぼーっと歩いている時、坊っちゃまの尾行を続けていた2人をジークと共に捕らえました。大した抵抗も無く、簡単に意識を奪って捕縛出来たのは幸いでした」


 大通りを逸れた道で夕焼けを見てた頃かな。それなりに人通りはあったと思うけど、騒ぎにも成らずによく捕まえられたな。


「坊っちゃまの護衛をジークに任せて、私は捕まえた2人をダミアンさんの詰所に運びました。以上です」


 以上です?


 捕まえた2人の情報は無いの?俺を尾行した理由は?黒幕は誰?


「私が詰所を出るまで2人の意識が戻らなかったので、不明ですね」


 不明ですね、って柔かに言われても困る。尾行の目的くらい分からないと、俺は安心して外に出られないよ。


「坊っちゃまが私達を振り切ろうとしなければ、安心安全ですよ」


 くっ。ぐうの音も出ない。


 確かに今回は俺が悪かった。


 尾行して来た相手を簡単に無力化した実績が有る2人なら安心安全だと思います、はい。


「坊っちゃまに護衛の必要性を理解して頂けて、私は満足です」


 終始険しい顔付きで話していたルトガーさんは漸く表情を笑みに変えて、鷹揚亭の食事を楽しみ始めた。




 夕焼けを見上げていた頃からルトガーさんが鷹揚亭に来るまで、買い食いをして帽子を選んで、なんだかんだ2時間以上は有ったと思う。


 大人2人とはいえ浮遊魔法や飛行魔法が使えるルトガーさんなら詰所に運ぶのはそんなに時間がかからないはず。


 ルトガーさんは詰所に2人を運んだ後、2時間近くずっと2人の寝顔を見てたのか?


 そんな疑問が浮かんだのは、鷹揚亭を出て我が家に着いた頃だった。

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