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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第86話 俺はシードル君と今後について相談する

「喧嘩だ!事件だ!警備隊を呼んでこい!」


「その前に医者だ!あ、あんた、火は消えたぞ、大丈夫か?」


「いいぞ姉ちゃん、もっとやれー!」


 柵の向こうの通りで、野次馬達が騒いでいる。少年達が連携して放つ水弾を炎を纏った両拳で迎え撃つバルバラさんの豪快な動きが、野次馬達を盛り上げる。


「あはははは。もっとだ!もっと撃ち込んで来い!さもないとあたしは止められないぞ!」


 まさに狂喜乱舞。俺達に背を向けているバルバラさんの表情は見えないが、きっと俺が見たこともない笑顔で戦っているんだろう。


 同じ場所から動かず軽やかに舞う後ろ姿を見て、武闘大会の試合とはいえ俺はこんな戦闘狂と闘うつもりだったのかと、今更ながら過去の自分に呆れている。


「ゲオルグ君。すみません、そろそろ降りていただけると」


 バルバラさんの勇姿を遠目から見守っていると、体の下からシードル君の声が。


 そういえばシードル君に乗っかったままだった。ごめんごめん。


 俺が起き上がると、シードル君はほっとした様子でゆっくりと立ち上がった。


 恐怖心から動けなくなっていたシードル君はもういないみたいだ。良かった良かった。


「そんな暢気な事を言ってる場合じゃないですよ。バルバラさんを止めないと!」


 いやいやいや、無理無理無理。なんて事を言い出すんだ君は。


「でもあのままだとバルバラさんが犯罪者になっちゃいますよ。誰かの命を奪う前に止めさせないと」


 興奮しているのか、シードル君が早口になって訴えて来た。


 今日はシードル君の意外な一面が見れる日だな。


 突然の攻撃に驚いて腰が抜けるほど気弱なのに、変なところで正義感を見せて行動を選択する。そういう熱いところがあるタイプだとは知らなかった。


 でも今はその正義感は必要無い。必要なのは危険から逃げる危機回避能力だ。あの戦いに割って入るのは無謀でしかない。現に野次馬も遠巻きに観戦するだけで、誰ひとり止めに入ろうとはしていない。俺達よりも体の大きな大人がいっぱいいるのに。


「ぼ、ぼくが土魔法でバルバラさんの周囲に壁を作るので、ゲオルグ君はバルバラさんを説得してください」


 説得とか絶対無理。馬の耳に向かって念仏を唱えた方がマシだよ。諦めてくれ。


 それよりも俺達は小路を逆走してここを離れよう。俺達がここに居るとバルバラさんの邪魔になる。現にバルバラさんは小路を護るように背を向けて、その場から一歩も動かずに戦っている。まあ動く必要が無いと判断しているだけかもしれないけど。


 だからシードル君はバルバラさんに土魔法を使うんじゃなくて、小路を塞ぐ土壁を取り除いて欲しい。壁の向こうにまだあるはずの睡蓮の葉っぱは俺の魔導具でなんとかするから。


 もしくは、シードル君の土魔法で地中を掘り進んでもいいんだけど。


「分かりました。退路の確保は大事だと僕も思います。なので、パパッとその土壁を均しちゃいますね。逃げるかどうかはその後に考えましょう」


 わかってくれてありがとう。でも、逃げるけどね。


 シードル君が片手で土壁に触る。通路を塞いでいたそれがゆっくりと沈み出す。


 土壁の体高が低なって行き、俺の身長でも向こうの様子が目視出来るようになった時、口元を何かの布で隠した男性とバッチリ目が合った。


 未だ生い茂る睡蓮の葉達の隙間から顔と右手を無理矢理突き出していたその男性は、


「水弾」


 詠う事無く言霊を使用した。


 彼の右手の先に生まれた水弾はみるみる大きくなり、俺の頭部に向かって射出される。


 大丈夫、まだ距離は有る。防御可能だと判断した俺は魔導具を使おうとしたが、


「あぶない!」


 異変に気付いたシードル君に体当たりされて、俺の体は石畳の硬い地面に押し倒された。


「うぐっ!」「がはっ!」


 受け身を取れずに背中と後頭部を石畳に打ちつけた俺の呻き声に遅れて、女性の声が耳に届いた。


「あっ」


 俺と共に倒れたが顔を上げて水弾の行方を見ていたシードル君が、驚愕の声を上げる。


「バルバラさんの背中に当たってしまいました……」


 落胆が籠ったシードル君の声が耳に入った後、続け様に衝撃音と女性の叫び声が聞こえて来た。

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