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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第84話 俺は護身用に魔導具を身に付ける

 放課後、食品管理部の会議に参加すると、マルセスさんとゲラルトさん以外の面々からも噂の件で心配されてしまった。


 たった半日で学年問わず多くの生徒が耳にするほど拡散したらしい。


 いったい誰が何の為に広めているのか分からなくて気味が悪いが、俺の事を知っている人は皆噂を信じずに大丈夫かと心配してくれているから、気分はそれほど悪くない。


 毎回説明するのは面倒だなという気持ちも多少有るが、心配してくれる面々に感謝しながら、事実無根だと改めて説明した。




 会議を終え、約束していた通りにシードル君と合流して学校を出た。


 帰宅前にちょっと寄り道。マリーの合格祝いに帽子を買って帰ろう。マリーは可愛い帽子よりもシックで大人びた感じの方が似合う気がするが、どうだろう?


「可愛い帽子も似合うと思いますよ。僕もマリーさんに何か手土産を買って行かなきゃ。僕はお祝いじゃなくてお見舞いだから、消え物がいいですかね?」


 消え物。つまり食べ物か石鹸なんかの消耗品って事だな。よくそんな難しい言葉知ってるな。


「ゲオルグ君だって知ってるじゃないですか。石鹸は高いから、美味しそうなお菓子を探しに行きましょう」


 シードル君が財布を取り出して手持ちを確認する。俺は今朝母さんにお金を借りたから大丈夫だ。借金が増えたけど、大丈夫だ、


「ゲオルグ君。買い物に行く前に、マリーさんが襲われた現場を見て行きませんか?」


 校門から続く通りを歩き始めると、シードル君が脇道を指差して提案した。


 そこは昨日俺が大通りへの近道として利用した小路。


「この細い路地を抜けた先で、マリーさんは襲われたんだとか。叔父が地図を取り出して話してくれたので間違いないです」


 イヴァンさん、甥っ子に詳しく話し過ぎじゃない?


 それとも実は、シードル君は事件をいくつも解決している名探偵だったりする?


「僕がせがむから、渋々教えてくれただけですよ」


 せがまれたくらいで事件の情報を教え過ぎだと思うが。


 昨日不審者に声をかけられた件もあるし、俺としてはこの小路を使いたくない。しかしシードル君は興味津々な様子で、陽の当たらない路地の向こうを覗いている。


 分かった、行ってみよう。


 その前に、ちょっと魔導具を取り出しておくね。


 何か有ってもすぐに対応出来るようにとリュックから魔導具や植物の種をいくつか取り出す。


 シードル君の興味は初めて見る魔導具に移った。魔導具を軽く説明しながらシードル君にも少し渡して身に付け、俺達は小路に足を踏み入れた。




 昨日と変わらず薄暗く人気の無い小路を進むと、路地から別の道へと続く丁字路の入口に昨日は無かった柵が設けられていた。


「『立ち入り禁止』ですか」


 俺の胸くらいの高さの柵に設置された札の文字を読んで、シードル君ががっくりと肩を落とす。


 事件現場保護の為に警備隊が用意したんだろう。当然の処置だ。


「柵から顔だけ出して向こうを覗いてみましょうか」


 どうしてもこの先が気になるらしい。


 俺は一歩後ろに下がって柵の前をシードル君に譲る。シードル君が柵から身を乗り出す。すると、


「おい、無能。今日はそのチビなドワーフを置いて逃げるのか?」


 不意に背後から強烈な悪意をぶつけられた。


 声に導かれるようにして振り返ると、数人の大人を背後に従えた少年が冷たく白けた目でこちらを見ていた。


 少年の後ろで小路いっぱいに広がり道を塞ぐ大人同様、口元はマフラーか何かで隠してその人相は把握出来ない。


 しかし、この目付き。なんとなく覚えがあるコイツは誰だ?




 道具管理部をクビになった2年生に目が似てるかも。




 一瞬の間を置いてそれが浮かんだ頃には、シードル君が柵の向こうを覗くのをやめて俺の横に立っていた。


「ゲオルグ君、気にせず行きましょう」


 シードル君が冷静な態度で、俺の手を取り先導しようとした。


「おいドワーフ、お前は帰っていいぞ。俺はその『無能』に用があるんだ」


 少年の言葉に従ったのか、後ろの大人達が人ひとり通れるほどに通路を開けた。


「貴方がどこの誰だか知りませんが、失礼ですね。ゲオルグ君は誰にも負けない立派な才能を持ってますよ。貴方が無知なだけで!」


 怒り口調で反論して少年を睨み付けたシードル君の手は、小刻みに震えていた。


「はぁ、面倒臭い。犠牲者は1人でも2人でも一緒だな。意識を失った馬鹿な女同様、歯向かった事を後悔しながら死んでいけ!」


 シードル君の抵抗にイラついた少年が目の色を変えて詠い始める。それに、背後の大人達も呼応する。


 いきなり攻撃!?しかも言霊!?


 俺は驚きながらも右手でポケットに入れていた植物の種を地面にばら撒き、右手首に付けた魔導具のひとつに左手を添える。


 こっちは詠っている暇は無い。魔力量は十分じゃないかもしれないが、耐えてくれよ!


「水弾」「葉壁」


「「「「水弾」」」」


 少年の放った水弾がこちらに襲いかかる。それを吸水しようと動き出す睡蓮の根達。


 数秒遅れて、4つの水弾がランダムに放たれる。あえてバラけさせたのかもしれないが、5つ全て同時の方が良かったな!


 少年の水弾をごくりと飲み干して瞬時に成長した睡蓮の葉っぱが、巨大な盾となって4発の水弾とぶつかった。

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