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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第75話 俺は友人の夢を応援する

「おい、ゲオルグ。お前なにチクってんだ。あたしに関する事を勝手にペラペラと喋ってんじゃねぇよ!」


 イヴァンさんに情報提供した翌朝登校すると、学校の門の前で待ち伏せしていたバルバラさんに捕まった。


 左腕を首から包帯で吊り下げた痛々しい姿のバルバラさんだったが、大声で叫ぶ元気は有るようでホッと一安心。


 というか、沢山の生徒が見ている前で年下の子に喧嘩を売るバルバラさんは違う意味でイタイタしいな。


「なんだその反抗的な目は。今日のあたしは特に虫の居所が悪い。誰であろうと、あたしをイラつかせる奴は排除してやるぞ!」


 興奮したバルバラさんは人目を憚らず魔法を使い、右腕の肘から握り拳までが一瞬にして青い炎に包まれた。


 青い炎を目視した瞬間、


「水弾」


 俺の右後方から水魔法が射出され、攻撃態勢に入ったバルバラさんを狙って飛び立った。


「ふんっ!」


 鼻息荒く右拳を振り抜き、バルバラさんは水弾を迎撃。


 炎を纏った拳と水の塊がぶつかった瞬間、轟音を残して水弾が一瞬で蒸発した。


「水弾水弾水弾」


「おらおらおらぁ!」


 ちょちょちょっと!


 マリーが俺の背中に隠れて右から左からと水弾を連発し、それをバルバラさんが右手1本で全て捌き切る。


 俺を挟んで魔法合戦しないで!


 周囲の生徒達が蜘蛛の子を散らすように逃げていく中、俺は後ろから放たれる水弾の邪魔をしないようにじっとしている事しか出来なかった。




「バルバラ君もマルグリット君も、昼休みに私の所へ来るように」


 2人の魔法合戦は騒ぎを聞いて駆け付けたヴォルデマー先生の一喝によって漸く終了した。


 何発の水弾が放たれたのか俺は数えるのを辞めてしまったが、遠巻きに観ていたアランくんによると156発だったとか。


 短時間に100発以上も連発するマリーは化け物だが、それを笑いながら全て撃ち落としたバルバラさんはもっと化け物だ。


 水と炎。相性はマリーの方が良かったのに、バルバラさんの右腕の炎は全く衰えなかった。


 傍若無人な態度を取るだけの実力は有ると言うわけか。


 まあうちのマリーも水弾しか使ってなかったわけだし、負けたわけじゃないからな。


「もうホームルームの時間だ。早く教室へ向かいなさい」


 マリーを少し労ってやろうかと思ったが、ピリピリしたヴォルデマー先生に追い立てられて、俺達は教室へ駆け出した。




「ゲオルグ君、聞きましたよ!」


 昼休み。最早日課となっている魔導具の点検をしに向かうと、今日も鼻息が荒いシードル君に出迎えられた。


「面白い話が聞けたと叔父さんも喜んでいました。流石です」


 ははは。まあそのせいで今朝は凄い事になっちゃったけどな。


「マリーさんがバルバラさんを攻め立てたんですってね。僕もマリーさんの魔法を間近で見てみたかったです」


 皮肉を込めて『凄い事』と言ったのに、シードル君は文字通りの意味で受け取ったらしい。確かにマリーもバルバラさんも凄かったけどな。


「昨日の夜、ゲオルグが叔父さんに話した2人を事情聴取したそうです。流石のその内容までは教えてもらえなかったんですが、これできっと事態が進展しますね。ゲオルグ君のお手柄です」


 2人というのは、去年道具管理部に所属していた4年の先輩と、今年道具管理部に所属しているもう1人の1年生の事だ。


 去年魔導具の点検係だった4年生。去年の点検についてバルバラさんが話を聞きに行ったはず。その時に何かやらかして恨みを買ったのかも知れない。殺しに来るほどの恨みって凄いけどな。


 1年生は火事の件で俺を煽って来た昨日の彼だ。しかし、イヴァンさんの話では消火に水魔法は使わなかったし、ゴウゴウと唸る火柱も無かった。その日に起きた王都内の火事は警備隊詰所の1件だけだったとダミアンさんも証言した事から、彼は明らかに偽情報を流している。まあ単純に俺を揶揄いたかっただけかもしれないけど。


 そんな話を昨日イヴァンさんにしたわけだけど、昨晩早速動いたようだ。


 でも俺が情報提供したとバルバラさんにまで話す必要は無かったと思うけどな。


「マリーさんって水魔法以外にも色々な属性を使えるんですよね?草木を操ったり、空を飛んだり。いいなぁ。僕も自分の力で空を飛んでみたい。ゲオルグ君もそう思いませんか?」


 無垢な瞳を煌めかせて聞いて来たシードル君に、そうだね、と俺は努めて平静を装って答えた。


 興奮して自分の夢を語るシードル君は、俺が全く魔法を使えないと忘れてしまっている。覚えていて聞いて来たのなら、もう友達は辞めよう。確認はしないけど。


 俺だっていつか、魔導具じゃなくて、自分で魔法を使いたい。シードル君に言われなくたって、魔法を使いたいと心から思ってる。


 でも、どうしたらそれを実現出来るのか皆目見当もつかない。神様に聞いたって教えてくれないだろう。


 だから俺は悪足掻きをせず、今出来る事をやって行く。こんな魔法が使えたらいいなと思いを寄せながら、せっせと魔導具を作って行く。


 っていうか、やらなきゃいけない事がいっぱい有り過ぎて、魔法が使えるようになる方法を探す暇がないんだよ!


「フリーグ家がやっている魔法教室に通えば、僕も飛行魔法が使えるようになるんでしょうか。教室に入るのは狭き門だと聞いてますが、挑戦してみる価値は有るんでしょうか?」


 シードル君は俺の心境を察する事無く、新たな挑戦への一歩踏み出そうとしている。


 そんな友人に、


「時間はかかるけどドワーフ族も飛行魔法まで到達出来る。でもいきなり飛行魔法じゃなくて、ドワーフ族なら先ずは金属魔法の習熟。そして次は水魔法、と覚える順番が大切なんだ」


 魔法教室でクリストフさん達が教えている内容を少しだけ話してあげた。

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