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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第72話 俺はバルバラさんを心配する

 バルバラさんのいう『面白い物』が少しだけ気になりながらも、アレからバルバラさんと出会う事無く数日が過ぎた。


 昼休みにはシードル君の手伝い。放課後は食品管理部の会議や面接。帰宅後は武闘大会個人戦で使う魔導具制作。これらを繰り返す日々。


 一度、借りている倉庫まで足を運んで小麦粉の多さに唖然とした後は、小麦粉の事は一旦忘れて、休日も魔導具を作って過ごした。


 おかげで魔導具の数は順調に増えていっている。マリーへの借金も、順調に膨れ上がっているけど。




 数日後の昼休み。いつも通りにシードル君の手伝いをする為に魔導光芒の部屋へ行く。


 部屋ではいつも通りにシードル君達が作業の準備を始め、てはおらず2年の先輩と2人で何やら話し合っていた。


 今日はゆっくりしている。点検する魔導具の量が少ないのかな。


 そんな風に呑気に考えて2人に声をかけると、


「ゲオルグ君。昨日の放課後バルバラさんが襲われて、今日休んでいるらしいですよ」


 シードル君が興奮の表情と共に、話題の内容を教えてくれた。


 なるほど、襲われたのか。

 

 襲われたっ!?


「さっき部長が話してくれたんですけど、なんでも人気の無い裏通りを通った時に知らない大人達に取り囲まれて襲われたとか」


 なんてベタな襲い方。


 休んでるって言い方なら、生きてはいるんだよな?


 入院するような酷い怪我を負わされたのか?


 バルバラさんの傍若無人な振る舞いに辟易とさせられていたけど、襲われたと聞かされたら流石に心配になる。


「風魔法の奇襲を受けて左手を怪我したらしいですが、襲って来た相手を右手一本で薙ぎ倒したそうです。それどころか複数居た相手のうち2人を半殺しにして、王都警備隊に突き出したらしいですよ!」


 左腕を失っても関係無い。あたしには右腕一本有ればいい。


 なんとなく、バルバラさんの声が聞こえた気がした。


 なんだよ。心配して損した。もう絶対バルバラさんの心配なんてしないぞ。


 はぁ。


 それで、警備隊に突き出したって事は襲って来た理由も分かってるのかな?


「いえ、半殺しにした2人は息は有るものの会話が出来る状態では無かったようで、話を聞くのは2人の回復待ちだそうです」


 セルゲイさんはなんでそんなに詳しく知ってるんだろ。


「今朝バルバラさんがセルゲイさんの家を訪ねて来たらしいですよ。左腕を包帯で首から吊っていたけど、顔色は良いし歩けるし、元気そうだったと」


 自分で歩いて喋れるのなら休み必要無いだろ


 ただのズル休みか?


 やっぱり心配するんじゃなかった。


「それで、まだ襲われた理由は分からないんですけど、もしかしたら道具管理部のせいで襲われたのかもしれないから注意するように、と部長に言われたんです。そんな事無いでしょと僕は思ったんですが、道具管理部が原因で襲われる事って有ると思います?」


 2年の先輩も、心当たりは無いよね、と賛同している。


 俺だって心当たりは無い。


 道具管理部だから襲われるという理由なんて分からない。


 分からないけど、バルバラさんが言った『面白い物』という言葉が気にかかる。


 その『面白い物』に関する何か、かな?


「バルバラさんの事があって、通学は出来るだけ2人以上で人気の有る大通りを通るようにと部長は言っていました。ゲオルグ君も一応注意しておいてください、と部長が」


 えっ、俺も対象?


「はい、そう言ってました。何が有るか分からないので、気をつけてくださいね」


 俺は関係無いと思うけど、まあ気をつけるようにするよ。


 何かの事件に巻き込まれるかもしれないという恐怖より興奮が勝っているシードル君は、その後も暫く魔導具の点検を始めずに、セルゲイさんから聞いた話を振り返っていた。




 その日の放課後、マリーの特別授業が終わるのを待って一緒に帰る事にした。


 一緒に帰ろうと待っていた俺をマリーは怪しんだが、バルバラさんが襲われた件を話すと納得したようだった。


 何も知らせずに出待ちしていたから驚かれるのは仕方ないけど、怪しまれた俺はちょっと凹んだ。


「突然『一緒に帰ろう』なんて作り笑顔で言われたら怪しみますよ。また何か良からぬ事を考えてるんだろって。ゲオルグ様が作り笑顔で下手に出る時はだいたいそういう時です。魔石代を借りに来る時も同じです」


 マリーは全く悪びれる事なく、自分の方が正しいと自信を持って言い切った。


 確かに精一杯意識した笑顔で下手に出たけど、作り笑顔ってさぁ。


 もうちょっと言い方無いの?


「無いですね。そんな事よりもさっさと帰りますよ。私は帰って勉強しなきゃいけないんです。人の帰りを待っているゲオルグ様ほど暇じゃ無いんですよ」


 俺だって暇じゃねえよ。これでも忙しいんだよ。リオネラさんの腕時計作りを完全に放置するくらいには忙しいんだよ!




 俺が久し振りにマリーと並んで下校している頃、警備隊詰所の1つで火事が起こっていた。

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