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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第37話 俺は痴話喧嘩を仲裁する

「枝豆、もっと作っておけばよかった」


 誕生祭が終わって数日後、父さんがぽろっと漏らした。

 この夏に栽培した枝豆の多くを誕生祭で放出したから、自分で食べる分が無くなってしまったらしい。

 俺ももうちょっと食べておけばよかった。


「また育てればいいじゃない」


 なんでそんなことで悩んでるの、という感じで姉さんが首を傾げる。


「あのね、枝豆は寒いと育たないんだよ。今回の枝豆はマチューさんに無理言って成長を速めてもらったから、当分頼み事は出来ないし。来年まで食べられないんだよ」


 聞き分けのない子供を諭すように父さんが返答した。

 姉さんの首の角度は変わってないけど。


「父様、知らないんだね。世の中には温室という物があってね」


 自慢げに説明しているところ悪いけど、それってグリューンで俺がクロエさんに説明したまんまだよね。

 一回しか話してないのに、よくそこまで覚えていたと感心するよ。


「いや、温室は知ってるよ。お城にも立派なのがあるんだよ。王妃様が花を育ててるんだ」


「なんだ。つまんないの」


 うーん、父さんは間違えたね。姉さんを褒めるどころか更に上の情報を伝えちゃったよ。

 父さんを肘で突いて、それじゃあ駄目だと伝える。ほら褒めてよ。


「ご、ごめん。アリーはよく温室を知ってたね。でも温室ってガラスをいっぱい使って建設費が高いみたいだから、簡単には導入できないかな」


「せっかく魔法でガラスを作ってあげようと思ったのに、もう知らない」


 そう言うと姉さんは走り去ってしまった。

 父さん、追いかけなくていいの?


「なあ、ガラスってどう作るのか知ってる?」


「え。植物を燃やした灰とガラスの成分を含む砂を高温で熱して溶かすんじゃなかったかな。よく分からないけど、火魔法と土魔法を使うんじゃない?」


「ゲオルグもよく知ってるな。アリーにガラスが作れると思うか?」


「さあ。でも姉さんが出来るって言うなら出来るんだろうね」


「そうだな。なあ、アリーの機嫌を取るにはどうしたらいい?」


 息子にそんなこと聞きます?


「甘い物か美味しい物がいいんじゃない?」


「よし、またニコルさんに料理を作ってもらうか。ちょっと行ってくる」


 止める間も無く、父さんも飛び出してしまった。

 親子喧嘩で他人に迷惑をかけるのは止めて欲しい。




 父さんが出て行った後、自室に引き篭もっていた姉さんに話を聞いた。

 どうやら鍛冶屋のソゾンさんが、ガラスを作っているらしい。


 ガラスまで作ってるのかあの人。仕事の幅が広すぎる。


「そのガラス作りに興味を持って、作らせてもらったの?」


「そう、最初は見てるだけだったけど、余った材料で作らせてもらったんだ。綺麗なガラスのコップが出来たよ」


 父さんの為にガラス作りを習ったわけじゃないのか。


「やっぱり火魔法と土魔法を使うの?」


「うん。火の管理が大事なんだよ。師匠は火の魔法が使えないのに凄く美味いの。ドワーフ族ってなんで火魔法を使えないんだろう。土魔法は凄く上手なのに」


 ドワーフ族全体が使えないってことは無いでしょ。


「ソゾンさんが苦手なんじゃなくて?」


「さあ、私の知り合いはソゾンさんとヤーナさんしかいないけど、2人とも火魔法は使えないね。でも不便に感じたことは無いって言ってた」


 へえ。

 確かマチューさんは水魔法が使えないって言ってたよね。

 草木魔法はエルフ専用として知られてるくらいだから、種族差ってあるんだろうな。


 各種族の得意魔法を五行に対応させたら、木がエルフ、土がドワーフ、水は魚人だな。

 残るは火と金だけど、人族が火かな。最初に覚えるのは火魔法だってマルテも言ってたし。

 となると、金行は獣人ってことになるけど。獣人って魔法が使えないんじゃなかったっけ?

 それとも俺の知らない種族が他に居るのかな。

 そもそも五行に対応させようとするのが間違っているのかもだけど。




「だからもうお父様には協力しないの。せっかく助けてあげようと思ったのに」


 考え事をしていたら姉さんの話を聞き逃してしまった。父さんへの愚痴かな。


「まあまあ、父さんも悪気があったわけじゃないから」


「じゃあなんで追いかけてこないの?」


 ぐっ、痛いところを。なんだか恋人同士の痴話喧嘩を仲裁している気分だ。


「急に姉さんが走り出したから驚いたんだよ。今頃姉さんを喜ばせる何かを用意してるんじゃないかな」


「私は物に釣られる人間じゃないよ」


 痴話喧嘩の仲裁なんてやったことなかったわ。

 火に油を注いだ感じになったけど、父さんごめんね。




 父さんはしばらく帰って来なかったけど、姉さんの怒りは徐々に収まってきた。

 時間が解決してくれたのかな。


「アリー、美味しいおやつを買ってきたぞ」


 父さんが気を利かせて買ってきたおやつが、極上の油になってしまったのは申し訳ない。

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