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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第62話 俺は徹夜で作った魔石を納品する

 朝、眠たい目を擦りながら家族みんなとラジオ体操をして、ふらふらな足を踏ん張っていつも通りマラソンをした。


 帰って来てシャワーで汗を流すと、眠気もスッキリ。


 昼前の授業は確実に寝るだろうな。結局完徹しちゃったからな、ははは。


 でも、12個の魔石が完成した。


 本当は魔導具の起動実験も済ませてから魔石を納品したいところだけど、魔導具本体は持ち帰っていない。


 今から魔導具を作る時間は無いから仕方ないけど、後でバルバラさんに文句言われそうで少し心配だ。


「あ、ゲオルグ。ちょっといい?」


 風呂場を出たところで、自分の着替えを持って待っていた姉さんに声をかけられた。


 姉さんは相変わらず俺よりも長く走っていて、俺が風呂を出たあたりで帰って来るのが日常になっている。


 姉さんの後ろにはクロエさんとマリーも居る。3人で一緒にシャワーを浴びるつもりだろうか。


「これ、昨日の夜に作った冷凍の魔導具。道具管理部にあるやつと全く同じだから、これで魔石がちゃんと動くか調べてからセルゲイに渡したらいいよ」


 着替えの服の間から取り出して差し出して来た小さな箱は、確かに俺がシードル君達と点検した冷凍の魔導具と瓜二つだった。


 でも魔法が使えないとこれを一晩で作るのは無理でしょ。道具管理部から勝手に持ち帰ったんじゃないよね?


「もうっ、そんな事しないよ。私が使えなくたってこの屋敷内には魔法を使える人が沢山居るんだから、作り方を教えたら誰だって出来るよ」


 頬を膨らませて怒る姉さんに、俺は即座に頭を下げて謝った。


「どうせ魔石に刻字しただけで満足して、そのまま渡すつもりだったんでしょ。これあげるから、ちゃんと動くか調べてから渡しなさい。セルゲイが起動実験して動かなかったら、またバルバラに文句言われるよ」


 ぐうの音も出ない。姉さんに正論で突っ込まれるとちょっと凹む。


 でも、ありがとう。助かったよ。


「うむ、素直でよろしい」


 姉さんから魔導具を受け取る。その重みも、側面の穴も、2つのボタンも裏側の蓋も、昨日見たままの魔導具だ。


 昨日夜食を食べてたのはこれを作る為に起きてたから?


「夜食美味しかったね。久し振りにエルツの辛い料理を思い出せて私は大満足。普段から作って欲しいって料理長に頼もうかな」


 肉味噌焼きおにぎりは旨辛だったけど、あのスープは俺には辛過ぎた。残さず全部食べたけど、暫く口がヒリヒリして、眠気なんて感じる余裕が無かった程だ。


 いくら姉さんが気に入ったとはいえ、カエデとサクラが一緒に食事するテーブルにアレが出て来る事は無いだろう。念の為に絶対ダメだと俺から言っとこ。


「夜食は食べたけど、これ1個作るのに何時間もかからないよ。他の事をちょっとね。でも何をやってたのかは、まだ内緒。じゃ、私達はシャワー浴びるね」


 また姉さんの秘密主義だ。内緒だと1度宣言したら、どんなに追求しても絶対に教えてくれない。


 俺に関係無い話を秘密にしているのなら構わないんだけど、そうじゃない事の方が多いから厄介なんだよなぁ。


 ワイワイと賑やかに風呂場へ向かう3人を見送り、俺は魔導具を持って自室へ向かった。




「本当に一晩で全部作ったのか?君一人で?」


 12個の魔石を見せられたセルゲイさんが不信感を露わにする。


 信じられない気持ちも分かるけど、そう露骨な表情を見せなくても。


「ゲオルグ様がおひとりで全て作成しました。フリーグ家の者は誰も手伝っていません」


 セルゲイさんにどう答えようかと迷っていると、一緒に5年生の教室までついて来てくれたマリーが証言してくれた。


「僕はそれを信じてもいいけど、バルバラがなぁ。『身内の証言なんて信用に値しない』って多分言う」


 あー、言いそう。昨日のあの感じなら、多分じゃなくて絶対言うわ。


 うーん。バルバラさんの目の前で作るようにするべきだったな。


「取り敢えずこれは受け取っておく。これをどうするかは後でバルバラと相談しておくから、昼休みにでもまた来てもらえると」


 あ、すみません。今日は昼休みも放課後も食品管理部の用事が有るんです。


「分かった。もしかしたらバルバラがそっちに行くかもしれないけど」


 あー、来そう。こっちの都合とか関係無く突撃して文句を言って来そう。


「僕にはバルバラを止める手立てが無いから、悪いね」


 部長なのに頼りない、なんて昨日のバルバラさんを見てたら言えないな。


 あの自分勝手に暴れる猛獣を操れるのは姉さんくらいじゃないか?


 まあ姉さんも自分に敵意を向けるくらいしか出来なかった訳だが。


「ゲオルグ様、そろそろ行かないと」


 もうすぐ朝のホームルームが始まる時間だとマリーが囁く。


 セルゲイさんと別れた俺は、バルバラさんがこれ以上暴走しませんようにと神様に祈りながら自分の教室へ向かった。


 神様はそんなお願い聞きませんよ、とマリーはぼやいていた。

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