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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第36話 俺は誕生祭を見て回る

 誕生祭が始まった。


 姉さんは今年も屋台でかき氷作り。

 かき氷に合うシロップをジャム屋さんと共に考案して、味のバリエーションも増えた。

 姉さんの実演によりかき氷は子供達に大人気。


 去年に引き続き第一王子も見に来ていた。

 去年よりパフォーマンスが派手になっているからね。ぜひ楽しんでいってほしい。


「あれは、植物を操っているように見えるが、風魔法で揺らしているだけじゃないよな。まさか草木魔法?」


 ふふふ、さすが王子様。気付きましたか。

 今日の姉さんのパートナーは南瓜のカボチ君です。鉢植えから蔓を伸ばしてかき氷の容器を上手に扱っているでしょ。

 種も仕掛けもございません。すべて魔法でございます。


 はい、触ってもいいですけど、本当にただの南瓜ですからね。


 王子様は丹念に南瓜と鉢植えを調べて行ったけど何か得られたのかな。




 去年大人気だった姉さんに触発されたんだと思うが、今年は姉さん以外にも大げさに調理を実演をする屋台が出て来た。

 でも、無駄に大きな火で炙るとか、放り投げた果物を風魔法でカットするとかその程度だ。

 みんな色々頑張っているみたいだが、今や6種類の魔法を駆使する姉さんに勝てる人はいない。


 しかも姉さんは疲れ知らず。

 朝から晩まで魔法を使い続けてもニコニコ笑っている。

 それがどれくらい凄い事なのか魔法を使えない俺は分からないけど、一緒に働いている店員さんが驚愕しているから凄い事なんだと認識出来た。


 パフォーマンスもそうだが、今年は去年と違った料理を出す屋台が増えた気がする。

 それもこれもヴルツェルの冷蔵輸送隊によって運ばれた作物が王都民に広まったから。お肉も卵も牛乳も。

 それを使って新たな料理が創られる。

 来年は父さんの枝豆を使って何か新しい料理が出来るかもしれない。楽しみだね。




 その枝豆は、誕生祭の最終日にエマさんの家の屋台で提供された。


 思った通り食べに来る子供は居なかったけど、酒飲みの大人達でいっぱい。屋台は大変な人気になった。


 枝豆の提供方法は、初回のお酒注文に一皿の枝豆がついてくるシステム。

 みんなに枝豆を食べて欲しいから、枝豆単品で販売することは見合わせた。母さんみたいにずっと食べる人が出て来そうだからね。

 もし子供が来たら枝豆とジュースを出す予定だったんだけど、それは俺達のお腹の中へ。


 最初は見慣れない枝豆を訝しんで、みんな遠巻きに見ているだけだった。

 でもこの前父さんと一緒に飲み明かしたお客さんが口火を切ってくれた。

 美味い美味いと食べるお客さんを見て、好奇心の強い人から来店する。


 枝豆の分は赤字になるけど、無料の一皿を楽しむためにみんなお酒をおかわりしていく。


 2杯目を頼んでくれたら収支はとんとん。3杯目でようやく黒字。

 儲けは少ないけどエマさんのお父さんも納得してくれた。


「今日は塩茹でだけど、莢のまま焼いても美味しいよ」


 俺は覚えている限りの枝豆料理をエマさんに教えた。

 米があったら枝豆ご飯を作ってもらうのに。ああ、ずんだ餅も良いよね。

 作ったことないけど枝豆パンも美味しいらしいと伝えておく。


「時間が無くて子供が喜ぶような料理を作れなくて残念だね」


 エマさんはそう言うけど、今日の主目的は宣伝だから。

 豆をあまり食べない国民に枝豆を食べてもらうことが大事。


 枝豆と父さんの領地が世間に知られるきっかけに。

 お店は名が知られるきっかけに。

 多少の赤字でも、きっと明日への糧になるはず。


「枝豆パンが出来たら食べに行くよ」


 エマさんはもうお店に出す料理を手伝っているらしい。同い年の姉さんは食べてばかりなのに。

 パン作りが得意みたいだから、きっと美味しい枝豆パンを焼いてくれるだろう。




 今年の誕生祭も、俺は2つの教会を訪れた。

 お供え物はもちろん枝豆とビール。2食分くらいの量を二柱分、父さんに無理を言って分けてもらった。


 今年もマギー様の教会は人が溢れている。先にシュバルト様の方へご挨拶。

 こっちは相変わらず空いているけど、最初に来た時よりは多いよね。


 教会で働く人とも、もう顔見知り。世間話をしながら礼拝堂へ。輪廻転生、魂を管理する死の神としての印象が徐々に広まり、毎年参拝に来る人が微増しているらしい。


 できるだけ多くの人を助けてもらうよう俺からも祈っておこう。

 半分はマギー様用なので、全部は持って行かないでくださいね。

 ありがとうと言われた気がする。どういたしまして。これからもよろしくお願いします。


 マギー様の教会でも同じようにお祈りする。礼拝堂まで行列が出来ていた。最終日って人が多いのかな。来年は別の日にしてみようか。

 こっちでは魔法についてお願いする。俺のこともそうだけど、姉さんとマリーの分も。二人が更なる発展を遂げますように。


 枝豆が消えると共に、今度ははっきりとありがとうと聞こえた。


「忙しいから一方通行で申し訳ないけど、地球の家族は元気にしているとアマちゃんから聞いているぞ」


 久しぶりにマギー様の声を聴いた。地球の家族の近況も知れて良かった。こっちの家族の事もよろしくお願いします。

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