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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第60話 俺は新しい魔石を購入する

「はぁ。魔石を購入するお金を貸して欲しい、ですか」


 家に帰った俺は、先に帰宅していたマリーに頭を下げた。


 頼むよマリー。あんな啖呵を切って喧嘩して来たのに、結局お金が無くて魔石を用意出来ませんでした、ではかっこ悪過ぎる。


「誰と喧嘩して帰って来たのか知りませんが、もっと慎重に行動して下さいよ」


 いや安い魔石なら自分の貯金で問題無く買い揃えられたんだよ。


 水属性の魔石なんて魚人族が小遣い稼ぎに取って来るから数が溢れちゃってる魔石だし。


 でも冒険者ギルドで魔石を見せてもらってたら、やっぱり安過ぎる魔石はダメだなって思い直して。


 ある程度の質を求めたら予算を超えちゃって。


 まいっちゃうよね。


「喧嘩を止めて謝ってしまえば良い話だと思いますが」


 これは後には引けない喧嘩なの。謝れないの。


 だから、助けてください。


「別にお金を貸すのはいいんですけど。私は勉強ばかりでお金を使ってる暇無いですし」


 ごめん。でも遊びに使うわけじゃないんだよ?


「謝らなくていいんで、ちゃんと返してくださいよ。2倍の額で」


 2倍は法外過ぎないか?


 もうちょっとまけてください、お願いします。




 土下座せんばかりに交渉した結果、利子は借りた金の1.2倍に落ち着いた。




 さて、大急ぎで冒険者ギルドから12個の魔石を買って来た。


 全て黒い魔石。水属性の魔石。これに氷結魔法のドワーフ言語を刻んでいく。


 けどその前に、夕食を済ませよう。それから料理長に夜食をお願いしよう。


 今日は徹夜するつもりだから、眠気が覚めるようなスパイスたっぷりの辛い料理をお願いしてみるかな。


 まあ明日の昼休みもあるし、ちょっとくらい寝ても余裕で間に合うけどな。




 昨日はローズさんと一緒に村へ行った姉さんだったが、今日は一緒に夕飯の食卓に着いている。


 俺が道具管理部の会議を出て行った後の事は何も言って来ない。夕食の時間ギリギリに帰って来たクロエさんと談笑しながら食事を勧めている。


 アレからどうなったのか気になるけど、俺も聞かない事にした。


 今は取り敢えず魔石に集中。


 何かとんでもない事が起こっていたら、流石に言って来るだろう。




 結局姉さんとは大した会話もせずに夕食を終えた。


 うん、気にしない気にしない。俺は魔石にドワーフ言語を刻むだけ。


 よし、やるぞ。


 点検の為に何度も何度も見たから言語構成は覚えている。


 若干構成に手を加えて、もう少し効率良く動くようにしようかとも思うが。


 来年以降の事を考えたら、他の魔石と統一させておいた方が点検しやすいかな。


 今まで通りの言語構成で行こうと決めたところで、部屋の扉がコンコンと軽い調子で叩かれた。


 誰だろう。マリーかな。


 そう思って扉を開けた先に居たのは、クロエさんだった。


「食品管理部の件で報告が有ります。忙しいとは思いますが、ちょっとだけ時間貰えますか?」


 なんだ、そんな話か。クロエさんが珍しく部屋を訪ねて来るから、ちょっとだけドキドキしちゃった。


 話なら食事中でも良かったのになと思いながら、俺は報告って何ですかと応えた。


「報告は2点です。まず1つ、東方伯領の小麦粉を主に取り扱っている商会と話し合って来ました。結果はまだ保留です」


 あら、上手く行かなかったんだ。


「自分の商品を不必要に安く売りたいと思う商人はいないので」


 ハンデル商会と取引した時みたいに、何か見返りが必要って事か。


「見返りは要求されました。リリー様が贔屓にしている商会だと宣伝させてくれ、と」


 なんでそこで母さんが出て来る?


「リリー様は東方伯の娘ですから、東方伯領内での知名度や人気は抜群に有るんでしょう。そんな人がよく利用している商会。東方伯領に多くの店を持つ商会にとっては凄い宣伝効果だと思いますよ」


 ああ、なるほど。理由はよく分かった。


 でも、東方伯領を拠点にしているのに今さら東方伯家の威光を借りようとするなんて、大した商会じゃないな。古くからある商会ならとっくに東方伯家と知己だろうし、新興勢力かな。


 それにしても、俺も姉さんも居ないのに向こうの商会はよく食品管理部が母さんと繋がってるって分かったね。クロエさんが居たから?


「ゲラルトさんがアリー様の名前を出したからです。「アリーさんが付いて来てくれてたらもっと交渉楽だったな」って。流石に東方伯の孫娘の名は知ってたようで、アリーという呼び名に食い付いて、ゲラルトさんから根掘り葉掘り」


 何やってんだあの人は。あの人が会長になった商会は、本気でダメかもしれない。


「で、その件について明日の昼休みにアリー様を交えて相談する事になりましたので、ゲオルグ様も参加してください」


 あー。うん、わかった。


 本当は明日の昼休みも魔石に刻字する時間にしようかなと思ってたけど仕方ない。


 さっさと会議が終わる事を願おう。


「それから2つ目の報告ですが、明日の放課後、出店申請を出して来た4人の責任者と面接をします。そちらにも参加してください」


 え?4人?


 提出書類は5枚有ったよね?


「まだ小麦粉購入の件が確定していないので、ドーナツ店の面接は後日に回す事になってます」


 了解。


 しかし、放課後も埋まっちゃったか。道具管理部に魔石を持って行くのはいつにしようかな。


「では私はこれで。魔石への刻字、頑張ってください」


 あ、はい。ありがとうございます。


 なんで俺が魔石にドワーフ言語を刻もうとしてるって知ってるんだろ。マリーに聞いたのかな?


 スタスタと立ち去って行くクロエさんの背中を見送り、扉を閉めて再び魔石に向き合う。


 明日の昼も放課後も予定が出来てしまった。今日は本気で徹夜しないと間に合わない。


 よし、やるぞ!


 再び気合を入れたその時、先程の軽やかな音よりも力強く、部屋の扉が音を奏でた。

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