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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第58話 俺は道具管理部の会議に顔を出す

「東方伯領の安い小麦粉?それを使うのは構わないけど、どこの商会と取引するかの目処は付いてる?」


 え!?


 頭を冷やして帰って来たマルセスさんと小麦粉の件を話し合った後、偶然教室にやって来た姉さんにマルセスさんがそれを提案したが、俺はその返答に驚愕した。


 まさか東方伯領産を受け入れるとは思わなかった。


「まずはアリーさんの許可を得てから、と思っていたので商会の方はまだ。しかし、本当に宜しいので?」


 許可を得たマルセスさんも半信半疑だ。姉さんと近しい人ならみんなその反応になるだろうな。


「いいよいいよ、本当に安くなるならね」


 こちらの心配をよそに、姉さんは軽い調子で答えている。


「じゃあ商会選びと交渉はマルセスに一任する。来年以降も取引を続ける前提で選んでね。もし良い商会が見つからなかったら教えて」


「畏まりました。早速これから探してみます」


「ヴルツェルとの取引は継続するから、もしヴルツェルの小麦粉を使いたいっていう出店申請が来ても許可してあげてね。無理矢理安い方に誘導するのはダメだよ」


 承知しました、と答えたマルセスさんは会議を再開しようとしたが、


「あっ、ごめんごめん。こっちも用事があってここに来たんだった」


 まだ話がある、と姉さんがマルセスさんを引き留めた。


「ちょっとゲオルグ借りていい?道具管理部の会議に連れて行きたいんだけど」




 マルセスさんに快く送り出された俺は、姉さんと一緒に別の教室へ移動した。


 魔導光芒と同じ東棟、同じ1階に有る部屋で、鍛冶の先生が工房として使っている場所だ。


 部屋に入ると、6人の生徒が大きな煉瓦製の炉の前で車座になって話し合っていた。


「やっほー、セルゲイ。連れて来たよ」


 6人のうち、ドワーフ族の男子生徒に向かって姉さんが声を掛ける。


「あの人が道具管理部の部長、セルゲイだよ。ソゾンさんの息子さんの奥さんの従姉妹の旦那の叔母の息子、だっけ?」


「旦那の伯父の孫」


 セルゲイさんが間違いを指摘したが、正直どうでもいい。ソゾンさんとは関係が薄いという事はよく分かった。


「セルゲイの実家はエルツで宝石商をやってるの。昔エルツに宝石を探しに行った時にソゾンさんに紹介されて以来の知り合いでね。あー、思い出したらエルツの辛い料理食べたくなっちゃったなー」


「辛いの苦手な癖に」


「セルゲイの家族みんなが辛さに強過ぎるだけだよ」


「そんな事ないだろ」


 そんな姉さんの味覚の話より、俺はシードル君達がここに居ない方が気になる。


 彼らはまだ魔導光芒で魔導具の点検をしてるのかな。


「セルゲイもアリーも無駄話はそこら辺にしな」


 背が高く、長い黒髪を後ろで縛ってポニーテールにした女子生徒が、姉さん達の会話を止めた。


 姉さんを敬称無しで呼ぶって事は5年生か。


 ゲラルトさん程では無いが、この女性も服の上からでも分かる程の立派な筋肉を持っている。


「あたしはバルバラだ、よろしく。君を呼んだのは、君に点検してもらった魔導具について意見を聞きたかったからだ」


「バルバラもエルツ出身でね。私よりもずっと辛い物が苦手なんだよ」


「君と一緒に点検した2年生からの報告だが、冷凍に使う魔導具の魔石破損率40%は流石に多過ぎないか?」


 姉さんの小話を無視して、バルバラさんは話を進めた。


 確かに俺は30個中12個の魔導具を魔石交換が必要と判断した。その数は俺も多過ぎると思ったけど。


 残念ながら事実です。


「どうしてそう言い切れる?」


 割と威圧的に聞いて来るけど、どうしてと言われても困る。


 証明は出来ません。なので御不満なら御自身でお調べになられては如何ですか?


 下級生に任せず、御自分で。


「ゲオルグ君。俺もさっきその魔導具の魔石を見たが、どこがダメなのかよく分からなかった。試しに動かしてみたら問題無く動くし。出来れば問題点を解説して欲しい」


 こちらを睨んで来るバルバラさんを制して、部長のセルゲイさんが提案した。


 信用されていない俺が説明しなくても、姉さんなら見たら分かるんじゃない?


 さっきまで茶々を入れて来ていた姉さんは人が変わったように口を噤んでいる。


「弟贔屓のアリーが君を擁護したところで、だ、れ、も、君を信用しないだろ」


 バルバラさんが口を挟む。


 うーん。なんでこの人は喧嘩腰なんだろ。俺何かこの人に嫌われるような事したかな?


「あたしは不正が嫌いでね」


 不正?


 俺が不正をしたとでも?


 魔石の点検で不正を働く利点がどこに有るんだ。その理由が有るのならそれこそ説明して欲しい。


「あたしは元々警備の方に行きたかったんだ。魔導具には興味が無い。ドワーフ言語とやらも一切分からない」


 だったら黙ってて欲しいんですけど。


「40%なんて数字、明らかにおかしいだろ?魔導具に興味が無くても、気になるおかしさだ」


 だから、俺はちゃんと調べましたって。


 勝手な言い分にイラついて少し投げやりに返答すると、


「だからそれを証明しろって。セルゲイがそれを認めたらあたしもそれを信じてやる。そして、40%も魔石がダメになった原因を調べる。魔導具に比べてそっちは面白そうだからな。だから、さっさと証明しろ」


 バルバラさんはニヤリと口角を上げて、冷凍の魔導具に使われていた魔石を差し出して来た。

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