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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第47話 俺は運営委員の会議に参加する

「今年も武闘大会を盛り上げるぞ!えいえい、おー!」


「えいえい、おー!」「えいえい、おー!」「おー!」


 教壇に立ち、右手を天井に向けて突き上げながら発した姉さんの掛け声に、40人を超える運営委員の先輩達が追従する。


 大会成功に向けて結束を高めた先輩達の声が重なり合って、委員会が開かれている教室内は興奮の坩堝だ。


 しかし。


 1年生はこの流れに乗れずに取り残されていた。


 ただでさえクラスから1人でやって来て心細く、知らない先輩達に囲まれてオドオドしていた同級生達の多くは完全にこの雰囲気に呑まれてしまって、静かに着席したままでいる。


 いくら姉さんが輪の中心だとはいえ、あの輪の中にクロエさんが居るとはいえ、殆どが知らない人ばかりの輪に飛び込む気にはなれず、事の成り行きを見守っている。


 ふふ。ミリーが居たらすぐにあの雰囲気に溶け込んで一緒に拳を突き上げてそうだな。あの子の社交能力だけは凄いからな。


「ゲオルグ君、なんだか楽しそうですね」


 左隣に居た1年11組の運営委員、シードル君が笑いかけて来る。担任に指名された俺と違ってシードル君は委員に立候補したらしい。シードル君にそういう積極性が有るとは知らなかった。


「どうせくだらない事を考えてニヤニヤしていただけでしょ」


 右隣に座る1組の運営委員、ローズさんが揶揄って来た。ローズさんもシードル君と同じで立候補組。首席を狙う一貫で、学内の活動には積極的に参加して教師からの評価を上げていくんだとか。1組は帝王学の授業をやっている最中だと思うんだが、そっちは抜けて大丈夫なのかな。


「後で補習を受けるから大丈夫。こっちには補習なんてないしね」


 それもそうか。こっちは年に一度の大会だもんな。参加出来る時にしておかなきゃ、次は来年だ。


 もし来年また運営委員に選ばれる事があったら、次こそはあの輪に入っていけるだろうか。


 でも来年は、姉さんは卒業して居なくなる。誰が輪の中心に居るんだろうな。


 近くて遠い1年後の未来を想像しながら、更なる盛り上がりを見せる先輩達の姿を遠目に眺めていた。




「それじゃあ、皆の意気込みを確認したところで、会議を始めよっか。クリスタ、会議の司会進行役をお願いね」


「はい、アリーさん」


 一頻り場を盛り上げた姉さんが教壇から離れ、女の子が教壇に近寄って来た。


 姉さんよりも背が小さく、明るい茶髪の女の子。長い髪を後ろで1つに縛っている。


「ただいま運営委員会会長から司会役の指名を頂きました、クリスタ、と申します。よろしくお願いします」


 教壇からこちらに向かって頭を下げたクリスタさんに向けて拍手が送られた。


 姉さんは会長だったのか。


「まずは運営委員会の各部署毎に大まかな仕事内容を説明します。この説明後、委員の皆さんはどの部署に所属したいかを選んでもらう事になります。なので1年生は特にしっかりと話を聞くように」


 クリスタさんが話した内容を纏めると、俺達運営委員は別々仕事を担当する6つの部署に分かれる事になるらしい。


 試合管理部。大会の試合日程を組む部署。試合中の審判及び実況解説も仕事の範囲内。

 道具管理部。武具魔導具を管理する部署。個人が大会に武器等を持ち込む際の手続きも仕事。

 食品管理部。食料品の品質管理担当部署。屋台出店を希望する生徒への衛生指導が重要任務。

 保健管理部。大会参加者の傷を治す部署。今年は姉さん作の回復魔導具が導入されるらしい。

 警備管理部。観客の警備を担当する部署。喧嘩の仲裁だけでなく観客の整列や誘導も行う。


 そして大会本部。5つの部署以外の仕事をしつつ5つの部署を統括し、調整役となる。


 さて、立候補で来たわけじゃないからあまり積極的に働く気も無いが、折角やるなら楽しめる仕事がしたい。どれを選ぼうか。


「僕は道具管理部にしようと思います。色々な武器や魔導具を見て勉強したいので」


 シードル君は早速決めたようだ。その選択も悪くない。


 最近は練習がてらに無難な武具を作り始めたシードル君だけど、未だに自分の作りたい作品を模索している。自分の知らない魔導具から知識を得て糧にするには良い機会だな。


「私はどれにも惹かれないから大会本部にするわ」


 ローズさんは消去法で選んだ。まあそういう選択も有りだろう。ローズさんは楽しもうとか思ってなさそうだろうしな。


 うーん。迷う。どうしよう。


「1年生は11人ですから、大会本部に1人、ほかの5部署に2人ずつの配属となります。希望が被った場合は話し合いで解決してください」


 クリスタさんが追加で説明を加えた。


 そうか、人数制限。1つの部署に人数が偏るのは良くないもんな。


 道具か食品か。姉さんのまどうぐを使うという保険にもちょっと惹かれてる。警備は詰まらなそうだから出来れば敬遠したい。




「えー、皆さんこんにちは。アリーさんの指名により食品管理部の部長を任されました、マルセス、と申します。これから1ヶ月、宜しくお願いします」


 生徒達が各々やりたい部署に配属された後、その部門のトップとなる部長が皆に紹介された。どうやら5年生の間では誰が部長をやるか既に決まっていたらしい。


 俺が配属されたのはこの食品管理部。色々迷っていたらローズさんに勝手に決められてしまった。


 まあ良いんだけどさ。フリーグ家の嫡男として食品流通や衛生管理を学べるのは悪くない。それに。


「ゲオルグ様、宜しくお願いします」


 食品管理部でクロエさんと一緒になった。


 クロエさんは今日も相変わらず可愛らしくて素敵だな。


 担任に指名されて嫌々やって来た委員会だったが、クロエさんと一緒に仕事をするなら悪くない。

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