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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第11章
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第43話 俺は友人に呆れられる

「はぁ!?ヴォルデマー先生にバカって言って喧嘩を売った!?」


 ヴォルデマー先生が立ち去った後、現状をローズさんに説明してこの反応である。


 ちょっとイラッとして口走ってしまった事は後悔している。だからそう怒らないで。


 俺達の隣ではミリーがカチヤ先生を褒めまくっている。あんなに怖いヴォルデマー先生と面と向かって対峙出来るなんて凄い、とかなんとか。カチヤ先生も満更じゃなさそうで、ニコニコとミリーの賛辞に耳を傾けている。


 出来れば俺もあっちの輪に加わりたい。徐々につり上がっていくローズさんの目が怖いから。


「はぁ。昔からゲオルグはバカだバカだと思ってたけど、あんたって本当にバカだったのね」


 もっと痛烈に罵られるかと思ったが、ローズさんは怒りを通り越して呆れてしまったようだ。


 つい言っちゃったんだよ、つい。今では話をややこしくしちゃったと反省してる。ごめんなさい。


「折角マリーの為の追加授業を願い出たのに、これじゃ私1人が空回りして道化みたいじゃない」


 もう一度深く溜息を吐いたローズさんが、小声でぶちぶちと文句を言っている。


 よく聞こえなかったんだけど、なんだって?


「なんでもない」


 キッと鋭い目付きで睨まれた。それ以上詮索するならその口を縫い付けてやる、とでも思っていそうな攻撃的な目だ。それ怖いからやめてくれ。


「マリー。先生が帰って来たらもう1度ちゃんと謝って、真面目に授業を受けるのよ」


 猛禽類のような目が俺からマリーへと標的を移す。


「そりゃあ揶揄って来たあのバカが悪いけど、先に手を出したのはマリーなんだから罰せられるのは当然。男女関係無く、先に手を出した方が負けなのよ。まあ、私はスカッとしたけどね」


「ごめん」


 マリーはペコリと頭を下げて、ローズさんの指摘に応じた。しかし。


 いったい何の話?


 一応聞くけど、あのバカって俺の事じゃないよね?


「何って、マリーが廊下に出される原因になった話だけど。マリーから何も聞いてないの?」


 うん、聞いてない。


 俺はマリーが帝王学の予習復習をサボった罰で立たされているのかとてっきり。


「それもあるけど、1番の原因は授業中に隣に座っていた男子を拳骨で殴って喧嘩になった事よ」


 はあ?なんだそれ。


「私はマリーを挟んで反対側に座っていたから喧嘩の原因も全部聞こえてたけど、あのバカの発言は酷かったわね。私も聞いてて殴りたくなったわ」


 なんでそんな大事な事を言わずに黙ってたんだよ。


「これ以上フリーグ家に迷惑がかかるのなら、もういっそ退学でも良いかなと思いまして」


 マリーがぼそりと声を落として答える。


 良いわけないだろ!どこのバカだ!俺も一発殴ってやる!


「そういう反応になると思ったから黙っていたんです。相手の家系は男爵より上位の貴族でしたから、ゲオルグ様が手を出してはいけないと」


「女に殴られた、とは言いふらさない奴だと思うけど、ゲオルグに殴られたら激怒するわね。ヴォルデマー先生にすら噛み付いたゲオルグなら、すぐに相手に飛び掛かりそうだし。黙っていたのは正解かも」


 ん?んー。そう、かな?


「喧嘩して、申し訳ありません。私が帝王学の授業についていけないのは親の教育が悪いからだとかフリーグ家のせいだとかなんだと言われて、つい」


 あー、ついね、つい。興奮してつい手や口が出ちゃう事って、よくあるよね?


「無いわよ」


 マリーの気持ちを和らげようとしたのに、ローズさんにピシャリと否定された。


 年がら年中不機嫌なローズさんにはついって感覚が分からないんだな。


「なるほど。つい口走った風を装って、喧嘩を売ってるわけね?」


 青筋を立てたローズさんが、学校内にも関わらず炎を出現させた。ちょっとまっ。


「はい!おしゃべりはここまでにして、今後どうするかを考えましょう。私としてはマルグリットさんもローゼマリーさんも10組に編入してくれると嬉しいんだけど」


 完全に話が脱線したところをカチヤ先生が元に戻した。先生達もついさっきまでお喋りに夢中だったけどな。


 それで、今後どうするか、ね。大事な話だが決めるのはマリー達だ。


「私は……」「私は1組のままで」


 言い淀んだマリーとは違って、ローズさんは即答した。


「理由を聞いても良いかしら?」


 提案を拒否されたカチヤ先生だが、柔和な微笑みを崩さない。


 対するローズさんも完全に外向けの顔を作って答えた。


「1組に拘る理由は2つ有ります。1つは、私は首席でこの学校を卒業すると決めているから」


 ん?それと1組と何の関係が?


「ここ何年もの間、全学年を通して1組だった生徒以外で首席になった者は居ません。なので、私は前例に則り、1組で首席を目指します」


「でもどんなに頑張っても、この学年の首席はプフラオメ王子になる、と思うわ。色々な人の思惑で」


 間髪入れずに、カチヤ先生が意味深な言い方でローズさんの目標を否定した。


 思惑ってなんだよ。授業の試験結果が他人の意思で操作されるとでも?


 それとも、首席を選ぶ基準に成績以外の何かも加わっているのか。


「そう言った“歴史”が過去に有り、これからも繰り返される事は承知しています。ですが、勝算は有ります」


 ローズさんは自信有り気に胸を張って、カチヤ先生の言葉を否定し返した。

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