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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第34話 俺は父と祖父に放置される

 姉さんの草木魔法を見届けて、俺達はグリューンを出立した。

 マチューさんや商人さんも一緒だが、商人さんはこんなに長くグリューンに留まって良かったんだろうか。


 グリューンからの帰り道、俺はキュステに寄って爺さんに挨拶をした。

 姉さんが居ないのは残念がっていたが、俺がキュステに来た事をとても喜んでくれた。


 行きと違って、父さんは何故か生き生きとしていた。

 出迎えた爺さんも元気な父さんを訝しんでいたぞ。


「これから大人の話があるから、ゲオルグは早く寝なさい」


 そう言うと父さんは爺さんとマチューさんを伴い、東方伯邸の一室に籠ってしまった。まだ夕飯も食べてないんだけど。


 一見真面目そうな雰囲気を出している父さんだが、何かを企んでいると顔に書いてある。

 俺と姉さんのポーカーフェイスが苦手なところは、絶対に父さんの血だと思う。


 しかしあんなに嫌がっていた爺さんと、いつの間に仲良くなったんだろうね。


「あらあら、あんなに楽しそうに。3人とも飲みすぎないといいけど」


 母さんは特に不審がっている様子は無い。何を企んでいるのか気にならないの?


「初めてキュステに来たゲオルグの相手をせず密談するような人達は、放っておけばいいのよ」


 これは怒ってますね?

 不信感どころか怒ってます。いや、俺の事なんか放置でいいから、2人が仲良くしてくれた方が良いよね?


「そうだ、お父様をあのまま部屋に閉じ込めておけばアリーを連れて来ても大丈夫よね。ちょっと行ってくるわ。ジーク、ゲオルグをお願いね」


 俺達の意見を聞かず母さんは飛んで行ってしまった。

 父さんも勝手だけど、母さんも大概だと思う。




「ほんとうにだいじょうぶ?」


 1時間もせずに母さんが帰ってきた。手を引かれている姉さんは不安そうだ。

 マルテがマリーを、アンナさんがクロエさんを連れて飛んで来たようだ。


「母さんが出て行ってから何回か様子を見に行ったけど、ずっと閉じ籠ったままだね。たまにメイドさんがお酒を持って行くけど、3人で楽しそうに飲んでいるって言ってた」


「ね、大丈夫でしょ。あの人がお父様を引きつけている間に、私の故郷を楽しんでね」


 そういって不安がる姉さんを優しく抱きしめた。




 キュステの一夜は楽しかった。

 もう暗くなっていたから屋敷の外には出られなかったけど、母さんの思い出が詰まった屋敷で過ごすのはいい機会だった。


 母さんの兄弟にも会った。その人達の子供、つまり俺の従兄とも挨拶した。

 みんないい人だったけど、姉さんは借りてきた猫のようになっていた。人見知りという訳ではなく、人が来る度に爺さんじゃないかと警戒している様子だった。


 伯父さん伯母さん達が母さんの話を色々してくれたけど、時々母さんが咳払いをして何かの合図を送っている。

 その度に違う話になるから、きっと口止めしているんだろう。もの凄く気になるけど、聞かない方がいいですよとアンナさんが言うので止めておいた。


 翌朝、酔い潰れている父さんを放置して俺達は王都へと向かった。

 マチューさんは途中で抜け出したようだが、爺さんと日の出まで飲み明かしたようだ。


 姉さんはずっと大人しいままだったが、キュステを出たら堰を切ったように話し出した。声を出すと爺さんが出てくるような気がして黙っていたらしい。

 姉さんなりのおまじないみたいなものかな。


 父さんは直ぐに追いかけてくるかと思ったけど現れず、俺達が王都に着いた2日後に、護衛依頼を熟しながら帰ってきた。母さんが出発前に依頼を受けていたからね。


「アリーがキュステに来たって聞いた東方伯に、滅茶苦茶怒られたんだが」


 げんなりした様子で父さんが愚痴っている。

 俺達がキュステを出発した後に、誰かが爺さんへ報告したようだ。

 まあ口止めをしていたわけじゃないからね。

 とばっちりが父さんに行くだろうなとは思ったけど。


 これは罰だからいいのよ、と母さんが言ったから口止めしなかったんだ。何か意見があるならそちらの窓口へどうぞ。


 ところで爺さんと何の話をしていたの?


「置いて行かれたから内緒だ。上手くいったらゲオルグも喜ぶぞ」


 俺が喜ぶこと?なんだろう。

 聞いても教えてくれないだろうから、楽しみにしておこうか。


 姉さんは嫌がっていたけど、キュステに行けて俺は満足。出来れば1日かけて散策し、市場や港を見て回りたかったけどね。

 クロエさんを連れて飛び立つ姉さんとアンナさんを見送り、今度はヴルツェルにも行ってみたいと思った。




 その日から父さんは精力的に動き回り、領地と王都を往復していた。

 時間を惜しんでか護衛依頼を受けず、飛行魔法で飛び回る。

 母さんも何も聞いてないらしい。お城での仕事が疎かになってないならいいじゃない、と放置している。


 8月になると父さんは王都に帰って来なくなった。

 この時期は誕生祭の準備の為に毎年王都には居ないけどね。

 姉さんは今年も屋台でかき氷削りの実演をするらしい。

 今年は新しい屋台が出店されるといいな。




「おおい、帰ったぞ。これを見てくれ」


 誕生祭の3日前、父さんが大きな籠を持って帰宅した。


「何とか間に合ったぞ」


 そう言って父さんは籠いっぱいの枝豆を俺に見せてきた。

 こんなに沢山、どこで盗ってきたの?


「盗ってない、領地で育てて収穫したんだ。誕生祭までにまだまだ採れる。これを誕生祭で売ってフリーグ豆の宣伝をするぞ」


 内緒でこそこそやっていたのは枝豆だったのか。うん、確かに俺は喜んでいる。

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