表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第1章 俺は異世界で発育する
7/907

第1話 俺は出産を経験する

 暗くて、狭くて、でも暖かい場所だな。

 マギー様が居た場所から吸い込まれて、到着した場所の感想。


 ここはどうだろう。

 俺は本当に、人間に生まれ変わったのかな。

 目が開かないから周囲の状況は分からないが、瞼越しにも光の有る無しは分かる。今、光は無い。

 何も聞こえない、何も臭わない。暖かいお風呂に浸かっているような触感だけが存在する世界。


 体も思うように動かせない。

 だけど、死ぬ間際の状態よりはマシだな。あの頃は手足が全く反応しなかったけど、今はほんのちょっとだけ動く。指先が動いているのが分かる。


 多分今は胎児なんだ。母親のお腹の中に居る。

 もうちょっと出産について勉強しておけばよかった。

 まさか卵の中ってことは無いよね?卵生だったりする?まさかね。


 うん、暇だ。やることがない。

 やることがないと、変なことばかり考えてしまう。

 考えるのも止めて、状況が変わるまで一眠りするとしよう。




 があっ、頭が痛い。潰される。

 周囲から圧迫られて押し出されるような感覚。

 まさか、これが出産か?痛すぎるだろ、頭が割れそうだ。母さん、もうちょっと力を抜いてくれ、通れないよ。


 出産は命がけ、なんて聞いたことあるけど、赤子の方も大変だぞ。産まれた直後の身体に移動させてくれればよかったのに。

 いたいいたい。まだか、ちょっとずつ前進している感覚はあるけど。母さん頑張って、俺も頑張るから。


 もうちょっと。


 あと少し。


 抜けたああ。頭抜けたああ。


 頭が抜けたら、体はするっと通過した。これでもう大丈夫だな。


 まだ目が開かないけど、瞼越しに光を感じられる。ようやく異世界に降り立ったんだ。


 誰かに持ち上げられたのが分かる。背中をさすってくれてありがとう。気持ちいいです。


 え、なんか息苦しくない?母さんのお腹の中に居た時は感じなかった苦しさを感じる。


 呼吸をしようとしても上手く出来ない。胸で何かつっかえてるのか?


 わっ、痛い。びっくりした、背中を叩かないでよ。


 バシバシ来る。痛いって。これは、胸の何かを出せって合図か?でもどうやって。


 はっ、出ない。何かを吐き出す感じで、ああっ、ダメだ。


 もっとお腹に力を入れて、それっ。


「ああああああ」


 あ、なんか出た。なんか出て、スッキリ。呼吸も楽になった。すぅはぁ、すぅはぁ。うん、空気が美味い。


 背中を叩くのも止まってる。正解だったみたい。あれ?窒息する時って魔法発動するのかな?今度聞こう。


「Welcome to this world 」


 え?


 何か言われた?


 聞き取れなかった。もう一度言って。


 ダメだ。聞き取れない。多分、今俺を抱いている人が、何かを喋っているような音が聞こえるけど、分からない。この世界の言語を知らないからか、それともまだ耳が発達してないのか?


 目も開かないし周囲の状況が全くわからない。なんて言われたんだろう。地球の言葉っぽかったんだけどなぁ。気のせいかな。


 あ、暖かい。なんだろう、お風呂かな。気持ちいい。


 お風呂から上がって、水分を拭き取ってもらってる、と思う。ちょっと硬い布が当たってる感覚。もっとふわふわの、柔らかいタオル生地はないのか。


 拭き終わったら別の布に包まれて、誰かに手渡された。あなたは、母さんですね。なんとなく分かるよ。


 出産お疲れ様でした。俺も頑張ったけど、無事に産んでくれてありがとうございます。


 母さんに抱かれてホッとしてる。それにしても疲れた。赤子の身体って疲れるんだな。出産と呼吸の確保で、もうヘトヘトだ。


 なんだか眠くなってきたよ。


 寝て大丈夫だよね?そのまま死なないよね?大丈夫だよねパトラッシュ?


 あれ?そういえば、出産時に頭が痛かったけど、魔法発動してたのかな。まあ病気じゃないしな。痛みって、緩和されないのか?


 産まれて早々、神さまに聞かなきゃいけないことが出てきたぞ。

 痛覚と窒息。忘れないようにしないと。


 よし寝るぞ。大丈夫だと信じよう。母さん、おやすみなさい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ