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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第33話 俺は姉に似合う花が向日葵だと思う

 畑に咲くひまわりを見つけた興奮が収まってから、何度か姉さんは魔法を使った。

 姉さんの魔法のためにみんなで言霊を考えるのは楽しかった。

 マリーのアドバイスも良かった。土の中の水分を操作し、根に送るというアイデア。

 どうやるのか俺にはさっぱりだったが、姉さんは直ぐに理解して魔法に取り入れていた。この場合は水魔法を使っているんだろうか。


 様々な草木魔法を試した結果、いくつか分かったことがある。


 姉さんは種からは育てることが出来ない。

 マチューさんが持参していた種を使わせてもらったが駄目だった。

 全部姉さんの知らない植物だったのが影響しているんじゃないかとは思う。


 蔓を伸ばすことは出来る。

 人を縛れるほどではないが、数十センチは伸びた。

 茎を伸ばしたり、葉っぱを大きくすることも出来たから、既に種から成長している植物には干渉出来る様だ。

 しかし、花を咲かせたり実を付けるまでは出来なかった。

 これも姉さんの知識不足だろう。


 木の枝を伸ばすことも出来る。

 蔓ほどではないが成長した。

 草と木では少し勝手が違うのかも知れない。


 木の葉を落とすことが出来る。

 先に見せてもらったマチューさんの魔法では勢いよく木の葉が飛ばされ地面に突き刺さったが、姉さんの場合は飛ぶと言うより落下した。季節外れの落葉だ。

 これは何度も練習したら直ぐに出来そうだなとマチューさんが言っていた。

 不必要な時期に落葉させる事が一番大変らしい。葉は光合成をする大事な場所だから、木も落葉に抵抗するのかな。


「蔓、枝、葉。おそらく今見えている物を動かす事は出来るんだろう。膨大な魔力で無理矢理やっている印象はあるが」


 マチューさんがそう分析する。


「発芽、開花、結実。今ある状態から次の段階へと成長させる事が出来ない。それはどういう風に成長するか知らないから。知識を付ければあっという間に上手くいくようになるんだろうな」


 少し興奮しているように見えるのは俺の気のせいではないと思う。

 マチューさんも人族が草木魔法を使えることに驚いているんだ。


「アリー様が育てている野菜の種を持ってきたら良かったですね」


「んー、でもそれをここで育てちゃったら、みんなを驚かせられないじゃん」


 正論を言うクロエさんに姉さんが反論するけど、草木魔法で成長させた方がみんな驚くと思うんだ。


 マチューさんがクロエさんから何の野菜なのか聞きだしているけど、残念ながらその種は用意していなかったみたい。マチューさんも悔しがっている。


「種から芽が出るのって土の中で見えないからよく分からないんだよね」


「なら掌の上で育てて見せようか」


 マチューさんが種を一つ取り出し、掌に乗せて姉さんに見せる。


 掌上の種が僅かに振動しながら、種から小さな突起が伸びてきた。

 種をゆっくりと成長させながら説明を挟んでくれる。


「この種皮を破って伸びてきたところが茎と根になる部分だ。ここで水分を吸い取りながら成長する。発芽のための栄養は種に詰まっているから必要ない」


「このままどんどん伸びていって種の部分を地上に押し上げる。地上に出たら種皮を脱ぎ捨て種が2つに割れる。割れた種は大きな子葉になり、子葉の根元にある本葉を育てるための栄養を送る」


「こうして発芽した本葉が成長するんだ。これ以上はかわいそうだから畑に植えるぞ」


 ある程度成長したところで魔法を止め、マチューさんは発芽した植物を畑に植えた。

 ありがとうと言って姉さんが魔法で水を撒いている。


「豆や昨日育てたひまわりはこういった発芽をするが、麦は異なる。また機会があれば見せよう」


 豆が双子葉類で、麦や稲が単子葉類だっけ。前世の学校で習ったな。


「さっきも言ったように発芽には外部の栄養が必要ない。必要なのは水だ。僕は水魔法が使えないから気にした事は無かったが、水魔法で補助をするというのはいい考えだと思う」


 大気中や土に含まれる水分を上手く使えばいいんだね。

 あと発芽に必要な物は、酸素と温度だったか。光はまだ要らないんだっけ?

 まあ酸素と光は簡単に操作出来ないから気にしなくてもいいか。温度の事を聞いてみよう。


「発芽にはある程度の温度も必要だと思うんですが、何か魔法で操作してますか?」


「確かに温度は大切だが割と幅広く対応してくれるから、極端な高温低温じゃなければ育ってくれるだろう。自然ではどの季節で育つのか、という知識があれば大丈夫じゃないか」


 なるほどね。やっぱり知識が物を言うんだ。


「うん、わかった。今日は勉強だね。その前にお腹が空いたから帰ろう」


 そうだ、まだ朝ご飯前だった。

 俺達は姉さんの号令で、屋敷に向かって駆け出した。




 それから数日、姉さんは真面目に勉強をした。

 午前中はマチューさんの講義を聞いたり、図鑑を読んだり。マチューさんが持参していた植物図鑑は俺が借りて来た物より情報が沢山載っていて面白かった。

 午後は町の人に何を育てているのかと質問したり、野草を図鑑と照らし合わせたりとフィールドワーク。山奥に突撃する姉さんを追いかけた時は迷子になって大変だった。


 グリューンを出立する日の早朝、みんなでいつもの畑に集まった。

 姉さんが咲かせたひまわりは未だ元気そうだ。


 マチューさんから種を10粒受け取った姉さんが、種を握りしめる。


「いくよ」


 姉さんが種を畑にばらまく。と同時に土魔法と水魔法を発動させ種を畑に取り込む。

 魔力を込めながら朗々と歌い、草木魔法を発動する。


「狂乱」


 発動と共に地面は揺れたが、以前の様な荒々しさを感じない。

 自分が蒔いた種の位置を把握し、そこへ的確に魔力を送る。種を操作すると同時に土と水にも手を加える。足りない知識を補う為に。


 エルフ族とは少し異なる方法で、姉さんは草木魔法を作り上げた。




 畑の上には綺麗な花が咲いている。

 ぴしっと高く背を伸ばし、大きく花開いたひまわりの数は11本。

 堂々と天に伸びるひまわりは、いつも自信たっぷりの姉さんによく似合っている。

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