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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第32話 俺は大豆と米の情報を聞く

 豆が好きなマチューさんは枝豆を知っていた俺を気に入ってくれたのか、豆の種類や栽培法について色々教えてくれた。

 これはチャンスだ、醤油と味噌についても聞いておこう。


「別の大陸に大豆を使った調味料があると聞いたことがあるんですが、ご存知ですか?」


「なんでそんな事まで知っているんだ。僕は本物を見たことは無いが有るらしいな。知り合いのエルフから聞いた話では別の大陸の奥地で作られている珍味らしい。現地に行ってもなかなか購入できないみたいだぞ」


 えええ、そんなに貴重なの?


「じゃあキュステに運ばれてくることは無いんですね」


「そうだな。キュステは大きな港だが、近隣の国と商売する程度だ。他の大陸に行く船は無いし、向こうに行っても購入出来ないだろうな」


「マチューさんがその調味料の作り方を知ってたりは」


「しないな」


「じゃ、じゃあお米って食べたことあります?」


「さっき話した知り合いのエルフが持ち帰った物を少し食べさせてもらったぞ。米を搗いて乾燥させた保存食だって言ってたな」


 なんだろう。餅かな、それとも煎餅か?


「その米を、ここで育てることは出来ますか?」


「残念ながら食用のイネ科植物がこの国には無いから、それも取り寄せる必要があるな」


「そうですか、残念です」


 いつかその大陸に渡って自分で何とかしよう。


「その調味料と米って美味いのか?」


 父さんも気になったのかマチューさんに問いかける。


「調味料は美味いと言っていたな。米の方は、こんなもんか、って感じだった」


 どういう状態のお米を食べたのか分からないけど、炊き立ての新米を食べてから感想を言ってくれ。


「そろそろ出ないと、女性陣が怒ってるぞ」


 ジークさんが服を着たまま脱衣所から顔を出した。

 いつの間に風呂から出て着替えたんだろう。

 そんなに時間が経っていたなんて気付かなかった。お風呂で女性より長湯するなんてびっくりだ。


 1人でぶつぶつと考え事をしている父さんは置いて行こうかな。




 翌朝、父さんの大声で目が覚めた。

 なんだなんだと声のする方へ向かうと、廊下で姉さんを持ち上げてクルクル回っている父さんを見つけた。フィギュアスケートのペアがやるリフトみたいだ。

 昨日の長湯で頭が変になったのかな。俺じゃなくて、父さんがね。


「ははは、さすが俺の娘だ。わはは」


 わはは。なんなのこれ?

 持ち上げられてる姉さんも笑ってるけど、分かってるのかな。


 離れた所で見守っているジークさんに聞いてみる。


「朝早く目覚めたから散歩してくると言って出ていったんだ。しばらくすると、あの状態になって帰って来た。外で何か良いことがあったんだと思うが、聞いても何も答えないんだ」


 朝からなんなんだ。近所迷惑だぞ。


「もう、うるさい」


 あ、母さんが父さんを殴った。平手じゃなくてグーだったぞ。

 突然のグーに痛がりながらも姉さんを落とさず、安全に着地させたところだけは褒められるね。


 楽しかったーっと笑ってる姉さんの足元がおぼつかない。姉さんでも目が回るほど回転するって本当に何があったんだろう。




 殴られて冷静になった父さんに先導され屋敷を出る。


 屋敷に帰って来る間も叫んでいたんだろうね。近所に住む人達が屋敷の前に屯していた。

 なんでもないんです、すみませんと母さんが謝っている。

 父さんも頭を下げてと太腿を叩く。結構な人が集まっていたからね、驚くのはわかるけど直ぐに謝って。


 集まっていた住人を帰して、俺達はようやく外に出た。

 姉さんが聞いても、母さんが聞いても、マチューさんが聞いても父さんは何があったのか教えてくれない。


 まあ進む道でどこへ行くのかはわかるけど。昨日の畑でしょ?

 さあ、どこかなぁっと白々しい父さんがむかつく。


 畑が近づいてくると、昨日は無かった物が目に付いた。俺だけじゃなくみんなも気付いただろう。


「あー、花が咲いてる」


 姉さんが駆け出した。

 父さんも走り、つられて俺も動き出す。


 ひまわりだ。


 あれは昨日マチューさんが魔法で育てて、途中で成長が止まった植物だよね。

 昨日よりも背が伸びて、空に向かって大きく黄色の花を広げている。力強い立派な花だ。


 姉さんの魔力にたんぽぽは反応しなかったけど、ひまわりは花を咲かせたってこと?

 どうしてだろう?


 ひまわりの周囲を踊りながら回っている姉さんと父さんを見て、マチューさんが困惑する。


「どうして花が咲いているんだ。俺には無理だったのに。あの子との違いはなんだ?」


 マチューさんが小声でぶつぶつと考察している。

 そこにマリーが近寄って声をかける。


「一晩お母さんと考えたんですが、昨日のアリー様の魔法は草木というより土魔法に近かったんじゃないでしょうか。その大きな魔力を使って土を奥深くまでかき回し、花が育つのに足りなかった栄養分が補充されたのではないかと思います」


「地表には影響させずに地中部分を耕起したって?まさかそんなことが。いや、そう考えると納得出来る部分も」


 マリーの考えは無きにしも非ずなの?

 マリーは土魔法が得意だからね。自分の得意分野で考えたのかな。4歳とは思えないぞ。


 姉さんと父さんはきっと草木魔法が成功したと思っているんだろう。

 クロエさんが近寄ってもう一回やってみましょうと言っている。

 無駄に近づくと危ないよ。

 ほら、姉さん達に取り込まれた。歓喜の舞はしばらく続くんだろうな。


 あ、母さんは屋敷に戻るの?


 俺はもうちょっと見学していくよ。マリーもマチューさんと話し込んじゃってるしね。


 うん、気を付けてね。こっちはお腹が空いたら帰ると思うから、朝食の準備をお願い。

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