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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
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第30話 俺は失敗した姉に期待する

 地震を思い出させるほどの揺れが収まり周囲を見渡すが、畑の上に変化は無かった。


 魔法を使えない俺やクロエさんでも分かるほど、姉さんは大量の魔力を注いだようだけど駄目だったか。


 姉さんには期待してしまうけど、魔法を使った本人以上にがっかりするのは違うよな。

 そこの父さん、明らかにがっかりしない。

 落ち込んでいる暇があったら次どうするか考えよう。

 姉さんも今の失敗を反芻して考えている。やはり土が悪いか、とか言ってるけど分かってないよね?

 これから子供達4人で反省会をしよう。


「なんだあの魔力量は。地中の植物を無理矢理動かそうとしていたぞ。反応する植物は無かったようだが、これは思ったより何とかなるかも知れない。お前達の娘は凄いな」


 姉さんの本気を感じて、マチューさんが興奮している。

 それを聞いて、さっきまで肩を落としていた父さんが復活した。

 父さんほどではないけど、母さんも自慢げだ。

 俺も誇らしい。絶対に魔法を成功させて、もっと誇れるようにしてあげよう。


「種が土の中に無かったんでしょうか」


 クロエさんが姉さんに疑問を投げかける。


「いや、種はあるよ。クロエが言っている花の種じゃないかもしれないけど」


「そうですね、私も土魔法を使ってみましたが、土の中には種や根がいっぱいあるんですね。マチューさんに言われるまで魔力で探知なんて考えませんでした」


 いつのまにか使っていた魔法の感触を思い出しながら話すマリー。

 マリーは土魔法が得意だからね。直ぐに探知出来るようになるとは思わなかったけど。


「魔力を流した時の違いで分かりました。土と比べると植物は柔らかいので魔力が良く通るんですよ。あとは土を揺すって当てると何となく全体の形がわかりますね」


 アリー様よりは魔力を飛ばせる範囲が狭いですが、とマリーが謙遜する。探知出来るだけでも凄いだろ。俺も土の中を覗いてみたい。


「うーん。どれがクロエから聞いた種なのか分からなかったから、見つけた植物全部に魔力を注いだのが良くなかったのかな」


 だからあんなに揺れたのか。確かに分散させない方がいいとは思う。


「失敗して残念でしたね。行けそうな雰囲気は有りましたが」


 反省会をしている俺達にアンナさんが話しかけてきた。

 やっぱり姉さんには期待しちゃうよね。


「畑に来る途中にあった草をクロエが知ってて、綺麗な花を咲かせるって言うから見てみたかったんだけど、駄目だったね。種が飛んできて無かったのか、私がその植物を知らないから失敗したのか相談してたんだけど、どう思う?」


 姉さんがアンナさんにも意見を求める。

 大人目線だと違う意見が出るかもしれないもんね。


「知識不足が原因でしょう。これからしばらくは勉強の時間ですね。後は、いきなり種から花へ成長させるより、蕾を作っている植物に干渉して練習した方が良いのではないでしょうか。段階を踏んでいくのも大事ですよ」


 アンナさんの言う通りだね。また勉強かと姉さんは気落ちしているが、少しずつやってみよう。

 マチューさんにも意見を求めたいが、母さんや父さんと盛り上がっている。自慢大会みたいになっていて割り込める雰囲気じゃないな。


 王都から持って来た植物図鑑が屋敷にあるから、後でチェックしよう。たしかタンポポもヒマワリも載っていたと思う。


「明日はこの辺りを散歩して草木を見て回りましょう」


「町の人にどんな植物が生えているのか聞きに行きましょう」


 クロエさんとマリーが姉さんをフィールドワークに誘っている。

 なんか図鑑で勉強しようと提案した俺が出不精みたいじゃないか。今日の午前中は俺1人温泉に浸かってたけど、明日は一緒に行くからね。


「見つけた植物を観察するには絵を描くのが良いと思います。それと、図鑑に載っている植物名と現地の人が呼んでいる名前が違うことがありますので、気を付けてください」


 はーい、と4人で返事をする。

 先生と児童になった気分だ。俺とマリーは年齢的に園児だけど。

 クロエさんは姉さんの一つ下だっけ。誰が見ても姉さんの方が年下に見えるよね。




 その後も魔法について色々と話していたら、いつの間にか日が沈みそうになっている。


 反省会をしていた子供達も、子供の将来について盛り上がっていた大人達も、アンナさんに急かされて畑から離れた。

 まだ数日グリューンに滞在する予定だ。

 きっと姉さんはこの間に魔法を完成させようとするだろう。

 期待し過ぎるのもよく無いけど、期待せずにはいられないよね。

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