表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第2章 俺は魔法について考察する
62/907

第26話 俺は父の領地に到着する

 クロエさんに花を渡したマチューさんに代わって、もう1台の馬車から人族が降りて来て俺達に挨拶をした。

 ややほっそりとした白髪の目立つ老人で、キュステに店を持ち東方伯と仲が良い商人らしい。


「護衛料金が安くなって助かります。みなさんの邪魔はしないので、よろしくお願いします」


 東方伯を通して格安の護衛を受けて来たらしい。

 キュステから北に延びる街道の各街に店を持っているそうで、そこへ荷物を運びたいようだ。ヴルツェルの爺さん並の大商人だね。


 父さんの領地は街道の北端で、そこにはまだ店が無い。ぜひ領地を発展させてほしいとも言っていた。

 発展したら店を立てるのかな。今回の帯同は下調べの意味もあるのかもしれない。


 もう出発するぞ、とマチューさんが急かすから、俺たちも慌て馬車に乗った。


 先頭がマチューさんの馬車、真ん中に俺達、最後尾は商人さん。商人さんの所に父さんと母さんが乗っている。

 これから街道を北に進む。北の山から流れてくるブラウ川に沿って、上流へと遡るんだ。

 王都からキュステに行く街道よりも、さらに悪路が続くらしい。マリーにはもう少し頑張ってもらおう。




 今回の旅程、マリー以外は平穏な旅路だった。

 魔物も出なけりゃ盗賊も出ない。天気にも恵まれてずっと晴れ。何も問題無く父さんの領地に入り、予定通りの日に領都であるグリューンへと到着した。

 護衛って必要?ってジークさんに聞いたら、今回は運が良かっただけさと笑われた。

 平和な日本の感覚が抜けてないんだろうね、街の外がどれくらい危険なのかよくわかってない。姉さんも特に危険もなく飛び回ってるしね。


「アリー様を撃ち落とせる者なら盗賊なんてしなくても生活出来るし、そんな魔物が居たら大騒ぎになってるな」


 と、更に大笑いして教えてくれた。姉さんの凄さだけは充分伝わった。




 グリューンは思ったよりも田舎だった。

 キュステから北に行くに従って街の規模は少しずつ小さくなったけど、1つ前の宿場街と比べてもかなり小さい。

 それはグリューンが昔は領都じゃなかったから。


 元々この辺りはある伯爵の領地だった。グリューンの少し北よりキュステに向かって流れるブラウ川の上流から中流域が領地で、2日前に泊まった街がその伯爵の領都として栄えていた。ブラウ川の下流を支配する東方伯と肩を並べる程の力を持っていたらしい。

 グリューンは伯爵領内でも北の端っこ。ブラウ川の上流にある渓谷に作られた小さな村だった。


 だが隣国との戦争中に伯爵が寝返り敵対。戦争に勝利した王家は、伯爵家を取り潰して領地を没収。功績があった者達を陞爵し、土地を分配した。

 父さんはその時にグリューン周辺を拝領し、男爵となったそうだ。

 男爵領内にはグリューン以外に3箇所村があるらしい。それなりの広さはあるんだね。


「確かに他の人達が貰った領地よりは寂れているが、この辺りの水資源であるブラウ川の源流を確保してるし、近くに温泉もある。何よりこの辺りは戦禍を被っていない。だからそこまで悪い場所じゃないんだぞ」


 強がってそう言ってるんじゃないよね?

 なんとなく自分に言い聞かせているように感じたんだけど。


「これでも発展させようと頑張ってるんだぞ。拝領した2年間は税金を取らなかったし、数年かけて温泉や街道の整備もやった。今日通って来た街道も父さんが綺麗にしたんだ」


 そんなに綺麗な道でもなかったと思うんだけど、以前はもっと酷かったのか。

 王都みたいに石畳にしろとは言わないけど、せめて馬車が立ち止まらなくてもすれ違えるくらいの道幅は欲しいね。


「ま、まあ今回の依頼で特産物が出来たら、もう少し道を大きくしようかな」


 うん、道が狭いとヴルツェルの冷蔵輸送隊が来るのも大変だからね。




「では私達は温泉近くの宿に泊まります。キュステに戻る時はまたお願いします」


 グリューンに入ると商人達は別行動になった。

 滞在中は商売のことを忘れて温泉でゆっくりするらしい。俺も後で入りに行こう。


 俺達はグリューンの男爵邸に泊まる。マチューさんや護衛の人達も一緒だ。

 周囲の家と比べて男爵邸は新しいね。きっと領都になってから建てられたんだな。


 家を管理してくれている人達に挨拶をして荷物を降ろす。

 夕飯まで時間があるのなら温泉に行こうよ。


 俺の意見が通り、みんな揃って温泉に行く。流石に男爵邸まで温泉を引き込んではいなかった。


 川沿いに作られた岩風呂に男女別れて入浴する。魔導具を使って水を循環させているところもあるみたいだけど、ここは源泉掛け流しだって。

 少し暗くなって来たけど良い景色だ。朝風呂なんて最高じゃないかな。滞在中は何度でも入りに来てしまいそうだ。

 上手に宣伝したら湯治客がいっぱい来そうなのにな。

 グリューンに来るのが不便だからダメか。

 馬車を定期的に走らせるのはどうかな、路線バスじゃなくて路線馬車。護衛も雇わないといけないから運賃は結構高くなりそうだな。


 あぶないあぶない。ぼーっと考えていたら逆上せるな。一旦湯船から出て体を冷やそう。

 治癒魔法があるからずっと入っていても逆上せないかな。家の風呂では試したことないね。


 明日はいよいよマチューさんから魔法を教えてもらうんだ。

 無理して倒れて参加出来ない、なんてことになると嫌だから実験はしないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ