間話 アマちゃんの食欲
砂糖、塩、お酢、醤油に味噌。
他の調味料や調理器具もをいっぱい持って、マギーのところへレッツゴー。
ふふふ。今日は桃馬さんがお米を持ってマギーの神界にやって来る予定の日。
いやー、この前話を聞いてから随分と待たされました。今日の日の為に普段の食事量をちょっとだけ減らしたので、もうお腹ペコペコです。
毎年日本から新米がお供えされますが、別世界の新米は珍しいですからね。
桃馬さんはどんな調理をしてくれるでしょうか。
炊き立ての白米もいいですが、私は炒飯も好きなんですよね。お鮨もいいですが、流石に桃馬さんには握れないでしょうから贅沢は言えません。
そうだ。日本の野菜やお肉、お魚も可能な限り持って行きましょう。レトルトのカレーも必要でしょうか。
いや、レトルトのカレーはいつでも食べられますから、スパイスを沢山持っていきましょう。念の為市販のルーも2種類荷物に入れて。
そうなって来るとハヤシライス、ビーフシチューにクリームシチューのルーも持って行きますか。
ああ、今から色々想像して涎が出て来ました。
どんな風にして食べさせてもらえるのか、楽しみですね。
「なあアマちゃん、これは何だ?」
マギーの世界に到着して持って来た荷物を整理していると、マギーがとある機械をぽんぽんと叩きながら質問して来ました。
ああそれはですね。私が管轄している日本にある会社が作った最新式の炊飯器です。お米をふっくらと炊き上げる凄い機械です。一応昔ながらの御釜や土鍋も用意しましたが、桃馬さんが日本で生活していた頃はもうとっくに炊飯器が各家庭に普及していましたからね。なので炊飯器の方がいいかと思いまして、最新の物を用意しました。
あまり叩くと壊れるかもしれないので、触らないでくださいね。
「ふーん。つまり、自分の世界の方が発展していると暗に自慢したいわけね」
そんなに卑屈にならなくても。
マギーのところより機械文明が発展しているのは間違いありませんが、私はお米を美味しく食べたいだけですよ。
そうそう、小麦粉から全自動でパンを作る機械も有るんですよ。今度持って来ますね。
「そりゃ便利でいいな。でもな、うちにだって鍋やフライパンくらい有るんだぞ」
ちっちっち。このフライパンは『ふっそじゅし』で加工された物で焦げつかないんですよ。更に『せらみっく』も使われているという優れ物です。
「『ふっそじゅし』と『せらみっく』って何だ?」
さあ?
一応添付されていた説明書も見ましたが、何を言っているのか私にはさっぱりでした。
でもまあ、詳しい事は分からなくても良いんです。これが凄い物だと分かっていれば、ね。
「そうだな、アマちゃんに難しい事を聞いた私が馬鹿だった。また今度、それの製造に詳しい技術者が亡くなったら紹介してくれ」
まあ転生先として多少強めに勧める事はしますが、技術職の人達にはあまり人気が無いんですよねぇ。みんな私のところより機械文明が更に発展した世界を望むんですよ、マキナのところとか。
「不人気で悪かったな。ところで、そのマキナはまだ来てないんだが、今日は来ないのか?」
マキナはちょっと用事があるとかで、予定時刻ギリギリになるって言ってましたね。マキナも楽しみにしていましたから、絶対に来ると思いますよ。
ええっと。あれ?
ちょっと近場には見当たらないんですが、コンセントはどこですか?
「コンセントってあれか?アマちゃんの部屋の壁にあるやつ。テレビやゲーム機から伸びた線が繋がってて」
そう、それです。それから電気をもらわないと、いくら最新式の炊飯器でも動かないんですけど。
「そんなもん有るわけないだろ。機械文明が進んでないのを知ってて、態と言ってるだろ」
あー。
すみません。そういえばお茶を飲む時に湯を沸かすのも電気ポットじゃなくて直火でしたね。ちょっと舞い上がってしまって、本気で忘れていました。
今から自分の世界に帰って別の機械を取ってきます。確か物置の片隅に電気を充填し終えたバッテリーを置いてあったはず。
「電気なら私が作れるけど」
マギーが右手の指をパチンと鳴らすと、その指先に眩しい稲妻がバチンと大きな音を立てて発生しました。
バカですね。そんな高圧の電気を流したら1発で炊飯器が故障しますよ。
まったく。そうやってなんでもかんでも力技で解決しようとする性格の神だから、この世界の人達も頭を使わないんじゃないですか。だから私みたいに繊細な機械文明が発展しな、
わわわっ!
ちょっと、いきなり雷を落とす事はないでしょ。
ダメダメダメ、無謀な挑戦はしなくていいです。折角お供えしてもらった炊飯器が壊れるから、やめてください!
美味しいご飯を食べる為に、私にはこの炊飯器が必要なんです!




