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俺は魔法を使いたい  作者: 山宗士心
第9章
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第22話 俺は姉さんの力の秘密を知る

「ごめんねー。アリーが魔法を使えない事、ゲオルグの誘導尋問に引っかかってポロッと漏らしちゃったわ」


1対2の変則マッチを危なげなく勝利した姉さんに、母さんは悪びれる事なく飄々とした態度で打ち明けた。


母さんが自分で勝手に話したのに、俺が聞き出したみたいな言い方をして、追求の手を逃げる手筈を抜け目なく用意している。


「えー、母様話しちゃったの?」「な、なんでそんな大事な事を俺にまで黙ってたんだ!」


姉さん以上に父さんが不満を零す。俺も父さんに同意見だ。黙っていた理由があるのなら聞いてみたい。


母さんに詰め寄って更に文句を言おうとした父さんだったが、母さんの風魔法によって接近を拒まれる。


強烈な向かい風によって、飛ばされないよう必死に踏み止まる父さんの顔が変形する。その顔を見てカエデとサクラが笑い声を上げた。


「もう、ゲオルグにはもうちょっと黙っておくつもりだったのに」


姉さんは母さんに近付こうとはしていないが、頬を膨らませて不満を露わにしている。


姉さんの背後に付き従うように立つクロエさんは表情を崩さない。クロエさんは知っていたんだろうな。それに対して、マリーは何か言いたそうな表情で俺の側にやって来る。


「はぁ。もうちょっと巧く立ち回れると思っていたんですが、クロエさんと全く連携出来ませんでした。流石にあんな風に簡単に負けると悔しいですね」


なんだそっちか。姉さんの事情を知らされてなかった事を、マリーも父さんみたいに憤っているのかと思った。


「何を今更。初夏に王子が来た日より前から、なんとなくそうじゃないかとは思っていましたよ。ゲオルグ様だってそうでしょ?」


まあ、そうね。聞いても教えてくれないから触れないようにしていたけど


「でも、魔法が使えないとは思えない程にアリー様は生き生きと闘っていました。どうやってあんなに多彩な擬似魔法を使えているのか、そっちの方が私は気になります」


擬似魔法か。面白い言い方をするね。


「そうですか?まあ呼び方なんてどうでも良いんですけど。あっ、男爵がリリー様の魔法で吹き飛ばされましたね。魔法も使わず、割と粘りましたね」


そうだね。父さんはカエデ達が近くに居るから反撃しなかったのかな。


まあそっちはどうでもいいか。それよりも姉さんから話を聞こうじゃないか。どうして今までだまっていたのか、俺は気になって仕方ないんだ。




「ゲオルグ達に話さなかったのは、あまり多くの人に話して心配されるのも面倒だなって思ったから。マリーに責任を感じられるのも嫌だったし」


姉さんは俺の問い掛けに、割と素直に答えてくれた。


「ニコル先生の診察室で目覚めた時には既に使えなくなってた。母様とクロエにはすぐに事情を話した。でもその時は、魔法が使えなくなった事より、髪の毛が抜け落ちていく方が辛かったけどね」


姉さんは自分の頭に手をやる。頭髪は未だに生えて来ず、お気に入りの麻の帽子がその手に触れる。そろそろ寒くなって来たから、ニット帽の出番が増えるだろうな。


「後はアンナとエステルと、ニコル先生に打ち明けた。今は医者としての治療法は無いって言われちゃった」


突き放すような、割と厳しい言い方をするんだな。見損なったぞニコルさん。


「ふふふ。それでもニコル先生は色々と調べてくれているのよ。そのニコル先生の協力もあって、私はこれに辿り着いたの」


姉さんが両腕のブレスレットを俺に見せて来る。左腕には赤いブレスレットが、右腕には白いブレスレットが着けられていた。


「これはね、師匠特製の魔導具。こうやって引っ張ると伸びて、簡単に取り外し出来るの。離せば小さな輪っかになるんだけどね、締め付けないけどすぽっと抜けない程度に巧く縮んでくれるのよ。なんとかって魔物の皮が素材だって言ってた」


そう言って姉さんは左腕の魔導具を右手で引っ張る。


魔導具は対した抵抗も見せずに引っ張られた方向へ伸び、姉さんが手を離すとゆっくりと元に戻って行った。


なるほど、そうやって簡単に取り外しが出来るんだな。


「頭も両脚も同じ物。魔導具の核となる魔石がそれぞれ違っていて、魔石の属性に合わせて魔導具も塗装してるの」


姉さんの師匠というと、ソゾンさんがそれらを作ったわけか。


でもその魔導具とニコル先生の関係は何?


「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました。ニコル先生はこう言ったの」


『アリーは魔力が枯渇しているわけじゃない。枯渇していたら意識も回復しないはず。それにリリーがアリーの体から魔力が漏れ出ているのを感じると言っていた。倒れる以前よりも強く感じる、とも。という事は、魔力を魔法に巧く変換出来ないようになっている。それが病気なのか何なのかは分からない。治るのかもね。でも、アリーには魔力が有るのよ。その魔力を利用する事は出来るはず』


割と似ているニコルさんの声真似で、姉さんが過去の言葉を振り返った。


「まだ魔力を自分で操作する事は出来ないんだけどね。自分の意思で魔石に魔力を込める事も出来ない。でもこの魔導具達は私の魔力を勝手に吸収してくれるの」


えっ!?


という事は、それには闇魔法の言霊が使われている?


まさかソゾンさんが、毛嫌いしていた闇魔法を持ち出すなんて。


驚愕している俺の顔を、姉さんはしてやったりと嬉しそうに見つめて来た。

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